表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/30

07 アルティメット美少女とUFOキャッチャー

人が。人がめちゃくちゃ振り返ってくる。

金髪碧眼の俺だけでもただでさえ目立つのに。天使千春は俺以上にめちゃくちゃに目立ちまくっていた。彼女が歩くだけでめちゃくちゃ見られている。


そりゃそうだよな……わかりやすく美少女だもんな。

山田は一旦待機しておいてもらって、俺たちは二人で再びデパートの中に遊びに出た。クソダサファッションで目立ちまくっていた時とは明らかに人の見る目が違う。


ふわふわの桜色の髪。真っ白いワンピースと春色のカーディガンに包まれたほっそりとした……それでいて少女らしい体つき。

天使千春の真っ白な肌も、潤んだような大きな瞳も、長い睫毛も。長すぎる前髪で隠れていたあれこれが露わになったせいで、まるで淡く発光してるみたいな美少女っぷり。


そんな彼女が俺にぴったりくっついて歩くのでそれはもう目立ちまくる。

俺も純日本人なのに金髪碧眼だし。


そのせいで人が見物に集まってくるし人混みは割れる。モーセかな?


「えっ、何あの子美少女すぎじゃん……」

「モデルさんかな……?アイドル?」

「スタイル良すぎて目に薬」

「深層のご令嬢じゃん……花食べて生きてそう……」

「隣の金髪イケメンタイプだわ推せる」

「あの美少女透明感ありすぎてあれは透過png」


高解像度だなとは俺も思うけど。

いやそれにしてもめちゃくちゃ人が……人が振り返ってくる……!


「あ、ああああの」

「うん?」

「伊集院くん……わ、私、ちゃんと服全部装備してる……!?こんな装備で大丈夫……!?」


大丈夫だ、問題ない。

じゃなくて。


「突然どうした???」

「すごく見られてて……あの……もしかして、昔みたいに靴下片方履き忘れてたり、タイツが思い切り破れてたり、実はパジャマ着てたりしないかなって……」


相当ぼんやりした子供だった説。千春ルートでなければ出ないような情報が……ぼろぼろ出てくる……!

俺が感動している間に、天使は思い切りおろおろして、俺の後ろに隠れるようにした。内気もここまで来ると個性、いや、ここまで来なくても普通に個性だけども。小動物みたいだ。


まあ、あの。彼女が後ろにくっつくとマシュマロみたいな柔らかさが当たってめちゃくちゃどきどきするんだけども。


「……い、伊集院くん……っ」


役得。

俺にくっついてる天使を見て周りは更にざわついている。


「えっ、なにあれ……美少年と美少女のカップル……?」

「二人とも芸能人の可能性ある」

「芸能人がカメレオンサングラスかけてないわけないだろ!」


なんだよその偏見は。

その時だった。人混みの中から一人のチャラそうな男が出てきて、天使に声をかけようとした。なんだ!?俺の推しにナンパか!?


「あの〜……」


次の瞬間ビビり倒した天使は俺の服を引っ掴み、ダッシュで逃げ出した。

足が!!早い!!

引っ張られて服が伸びる俺!唖然とするチャラ男!


「えっ、ハンカチ落としました?って聞こうとしただけだったのに……!」


ただのいい奴!

ごめんなただのいい奴!


チャラ男を置いて天使がひた走るので、俺はそのまま彼女にデパートの隅の方まで成り行きで引きずられていった。



ーーーー



天使が飛び込んだ先はゲームセンターだった。

この巨大なデパートの中なので当然ゲームセンターもでかい。流行りのソシャゲ、HGOのアーケードから高性能UFOキャッチャー、格ゲー、パーカッションの達人までありとあらゆるゲームを取り揃えている。


「はぁっ……はあ……ご、ごめんね伊集院くん……突然走っちゃって……」

「いや、別にいいけど……」

「その、あの人の、見た目だけでびっくりしちゃって……あと、すごく注目されてたし、恥ずかしくなっちゃって……」


ごめんなただのいい奴……。


「……で、どうしてゲームセンターに」

「あ、あの、このデパートのここは……私の第二の故郷だから……」


とんでもねえこと言い出した。

彼女は切らせていた息を整えると、物馴れた様子でゲームセンターの中のわかりにくい位置にある椅子を見つけ出して座る。


「……ゲームが好きなんだ」

「知ってるよ」

「えへへ、うん。私、変な例えばっかりするから、普通にわかるよね」


変な例えな自覚あったのか……。


「……小さい頃ね、ここのゲームセンターで……きょうだい……えっと。お兄ちゃんにいっぱいゲームを教えてもらったの。UFOキャッチャーも、パーカッションの達人も」

「お兄ちゃん……兄がいるんだ、天使さん」

「うん。……今は、離れて暮らしてて……ちょっと最近どう接していいか分からないんだけど、小さい頃は本当に仲が良くて」


天使の複雑そうな表情から、俺は彼女の家庭環境を推測した。

離れて暮らしてるってことは、社会人の兄なんだろうか。この年頃の妹と社会人の兄さんじゃ、それは確かに話すのは難しいんだろうなあ。


「……最近は、どうやって話したらいいかも分からなくて……ね、伊集院くんは、どんな話題を振られたら話しやすいとか、あるかな……?」

「え、わ、話題?」

「そう」


高校生と社会人じゃ、選ぶ話題には相当差があるとは思うけどなあ。


「……んー……それこそ、最近あった楽しかったこと、とか」

「たのしかった、こと……」


天使は少しだけ考え込んで、もじもじした。ふわふわの桜色の髪が横顔を隠す。


「……今日、かなあ」

「……今日」

「伊集院くんと一緒にお出かけできて、普段だったら絶対体験できないようなことも体験できちゃったりして、SSRイベントばっかりで……すっごく、楽しくて」


嬉しそうに天使が笑う。可愛い。あまりに可愛い。

まるで、俺のことが好きみたいに、笑う。俺のことを大きな瞳で見つめてくる。


いや落ち着け。これはあくまでも!俺のことが友人的に!友情で好きって笑顔だから!

最初から距離感がおかしい無自覚天然姫気質の天使のことだ、勘違いに決まってる。


だって、天使が好きなのは俺じゃない。『主人公』なんだし。金持ちのギャグキャラじゃない。正統派の主人公が、教室にいるじゃないか。


「……伊集院くんと遊びに来られて、よかったなあって」


なのに、なんでお前はそういうこと言うんだよ……。

推しにそんなこと言われて嬉しくないやつがいるか、いやいない(反語)。このままでいると何かしらの感情が口から飛び出しそうで、俺は勢いよく立ち上がった。


「天使さん。何か欲しいものある?」


目の前には、UFOキャッチャー。話題逸らしにゲームは定番だろう。


「え?ほ、欲しいもの……」

「そう。なんでも俺が取ろう」

「——、ううん」


天使の目がきらりと光った。

UFOキャッチャーに今にも小銭を投入しようとしていた俺を押しのけて、前に立つ。

思いもよらぬ強い力だった。なに???


天使の視線の先を追う。


中には可愛らしいぬいぐるみの群れ。そして、一番奥に仁天道の今最高に流行ってる携帯ゲーム機。まさか……天使、あれを取るつもりか……!?絶対に取れないものもある、と噂の魔のUFOキャッチャーで!?


「伊集院くん、座ってて。私がやる。一番奥のやつ、とりあえず取ってみせるよ。ゲーム、得意なの」


存じております。


もういい戻れ!俺がやる!に近い気迫を感じた。

透明感ありありの清楚系美少女がUFOキャッチャーの前で鬼気迫る顔をしている構図に、ちらほらと何人か客が足を止める。


彼女は振り返って微笑んだ。ゲーム玄人の笑み。


「今日のお礼、したいの。他には何がほしい?」


イッケメェン。今の一瞬スチルに見えた。

透明感マシマシの美少女の笑顔なのに俺の十倍ぐらいイケメンに見えたのなんでなんだろうな。

UFOキャッチャーって上手い人本当に上手いよなあと思います、あの謎技術はどこからくるんだ……。

次回、ヒロインによるゲーム無双。ヒーローもブラックカードで無双したし、この小説無双ものだったのかもしれません。


よろしければ応援よろしくお願いいたします、後二回ぐらいでデート編完結!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] まさか4話での「凡仁くんは・・・」の続きって! [一言] 続き楽しみにしてますがんばってください!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ