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六話担当:マーニャ

放課後、私は平美さんと合流した。

「これは、お約束というやつですわね……」

そう。一足先に犯人が分かった人間はなぜか舞台から消えるというあのお約束だ。

「これから、どうする?」

平美さんの言葉に私も思考を止める。どうするべきかはわからない。

「……平美さんはどうなさりたいの?」

「どうもしたくないけど……お墓参り行きたい」

そういって平美さんはスライム小屋だったところに向かう。仕方がないので追いかけると、

「あなた、誰?」

木陰に誰かがいた。

「あー、あんたらがスライム飼育委員会の人?」

そう言いながら、のそっと現れたのはすらりと背の高い、目鼻立ちのはっきりした美少女。髪の毛は縦に巻いてあるがドリルロールというわけでもなく、短めで、後頭部にお行儀良く収まっていた。見た目は私よりもよっぽどお嬢様で、口調は私よりよっぽど普通の人間だ。

「どちら様ですの?」

やや警戒心を込めて聞くと、

「私はアリスだよ。それより、こいつあんたらのとこのスライムじゃないのかい?」

と言いつつアリスと名乗った彼女がひょいと持ち出したのは、ピンクのスライム。

「名前はわからんが、この辺りでピンクのスライムといったらあんたたちが飼ってた子くらいだろ?」

確かに、彼女が持ち上げているスライムは、見た目も大きさも質感も、見るからにくぁせふじこそっくりだ。

「……違います!」

平美さんが叫ぶように言う。確かにそっくりだけど、くぁせふじこは車に轢かれて、この小屋の裏に埋められているのだ。

「どうして違うのさ」

腑に落ちないと言った顔のアリスさんにぽつりぽつりと事情を説明すると、

「あーん、なるほど。まぁあれだな、こいつのことあんまわかってねぇみたいだな」

と言って、ピンクスライムをゆさゆさふったアリスさんは、それをずい、と私たちの前に突きつけた。

「さて、こいつが何スライムか知ってるかい?」

何スライムも何も……

「スライムって種類があるんですか?」

にわかに元気を取り戻した平美さんの言う通り、種類があるとは思ってもなかった。

「よしじゃぁ基本からだね。スライムは大きく分けると、二種類がある。硬めのグミスライムと、それに比べると柔らかいジェロースライムだ。こいつは硬さから見てジェロースライムだな。ちなみに食うと美味い」

食べると上品に言わないものかしら、と一瞬現実逃避に走りそうになったが、

「ありえない」

という平美さんの声に全力で同意を示す。多分理由は私と彼女では違う。私はこんな気持ち悪いものを食べるなんて、と思っていて、彼女はきっと、こんな可愛いものをたべるなんて、と思っているに違いないから。

「あ、ちなみにこいつには毒があるから間違っても食べちゃダメだからね」

ゆさゆさとスライムをふるアリスさん。癖なのだろうか。

「で、君たちの話によれば、この子を土に埋めた時、まだ本体はピンクのままだったんだろ?」

その言葉に、頷いて答える私たち。

「だったら……まぁそろそろ足も疲れてきただろうし、一旦座ろうか」

「あ、はい、そうですね」

平美さんばかりが彼女に言葉をかけているような気がしてきた。とはいえ、私たちの周りにはちょうどいい椅子も、切り株もない。地面はどろっとしていて、座れるような状態でもないし。キョロキョロとしていると、

「校舎に行った方がよさそうだねぇ」

とアリスさんが苦笑いして、スタスタと私たちを置いて校舎に向かって行ってしまった。慌てて追いかける。


「それでね、スライムってのは、砕けたりした場合、相当なことがない限り、それで命が尽きると言うことはない」

やっぱり癖なのか、ゆさゆさスライムを振りながら説明するアリスさん。

「こいつの命が尽きると、ジェロースライムだから……灰色になって、硬くなる。でも君たちが埋めた時には色がそのままだった。だから、考えられる事象は一つ。埋めてあったおかげでこの子は体を一つに繋ぎ合わせることができて、死を免れた、とこう言うことさ」

びっくりするようなことをさらっと、笑顔でアリスさんは告げた。

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