ある女騎士の独白
もう少しうまくできると思ったんだけど…………そんなに現実は甘くないね……
ありゃ……今にも泣きだしそうな顔しちゃって……いつもは意地っ張りで無愛想なのに……
ちょっと喋るのもきついので……とりあえず抱きしめてあげた。いつもなら嫌がるんだけど、今は大人しい。
――――ああ、やっぱりそうなっちゃうよね……変なところ真面目だもんね。あんたのせいじゃないって言ってあげたい。
…………でもそれは自分じゃない。その役目はあの人たち……
名前を必死に呼ぶ声が聞こえる……でももう返事もできそうにない……ごめんね……
代わりに笑顔を向けよう……笑顔でいれば大抵はうまくいくんだから。いつも言ってたでしょ……?
……今いる空間が壊れそう……気づいてないなぁ…………まったく、手間のかかる弟ね……
残ってる力も少ない……あんただけでも移動させなくちゃ…………
………………よし、うまくいったみたい。笑顔で送り出せた、と思う……よくやった自分。
崩壊が始まった……でも不思議と怖くはない……きらきらしてて綺麗……
――――こんな時だからこそ……よくわかるのかなあ……肝心な時に役に立たないくせに……
………どん底にいるあんたを引っ張り上げるのは……あの子か……
そっか……あの子と出会うんだね。いつか会わせようと思ってて……結局できてなかったけど、そっか。
自分にはできないとわかって……ちょっとだけ……ほんのちょっとだけ、寂しいし悔しい気がするけど……でも……
あんたが前に進めるなら……私は―――――――
連載中の「三界の書 ―銀閃の聖騎士と緋剣使いの少年―」のプロローグ的な位置づけの短編です。
プロローグ考えてたらなんかシリアスになってしまい、小説タイトルとのギャップがすごいのでプロローグにするかどうか決めかねてます。。
これだけ読むと重い内容にも見えますが、シリアス気味になるのは第3話※くらいからです。
それまでにも伏線はちょくちょくありますが……
とりあえず短編にしておこうと思いました。
ちなみにこのシーンに対応する本編もあります。ただあまり長くはないです。(第3話《4》虚獣の変化※)
ちゃんとした方も考えてはあるのでまた後日投稿したいと思います。
→短編「ある女騎士の独白-少年視点-」を投稿しました。(2020/04/27)
<追記>
文章を少し加筆(正確には4行抜けてました)し、改行を使ってレイアウトを調整しました。
※2020/04/25 本編の章を再編成したので初回投稿時から変わってます。対応済み。
※2020/04/28 いろいろ考えた結果、プロローグ(序章)として本編に追加しました。