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「こちらが今後賢者様にお使いいただく部屋になります。」
カイ近衛兵隊長に案内された部屋は、天蓋付きのベッドにチェスト、食事用のテーブルと椅子の他に、四人掛けの応接セットなどが置いてあった。全体を白でまとめて、カーテンやクッションなどのファブリックに差し色として青が使われていた。
「ずいぶんよい部屋をあてがってくれたようですね。」
「賢者様ですから。食事まで今しばらくお待ちください。」
すでに昼が済んでいるだろうかとを鑑みれば、ちゃんとした食事の用意にはそれなりに時間がかかるだろう。ビロードのような手触りのソファに座り込み、深く息を吐く。私自身、自覚がないまでも緊張をしていたようだ。
「そんなところで立っていないで、どうぞカイ近衛兵隊長もお座りください。」
「いえ、お心遣い痛み入ります。」
「そんなこと言わないでください。せっかく同じ部屋にいるのですから、前に座って少しお話ししましょう。」
袖にされても言葉を重ねると、しばし悩んでカイ近衛兵隊長は私の前のソファに座る。すぐに立てるように浅く座り、背筋はピン。と、伸ばしている。
「カイ近衛兵隊長、」
「カイで構いません、賢者様。」
「でしたら、私も薫と呼んでください。」
「カオル様。」
「……できれば、様も無しにして欲しいのですが、職務上の都合でしょうか?」
「ご推察の通りです。」
微動だにせず答えるカイ近衛兵隊長、改めカイさんは、隊長になれるだけあって職務にはとても誠実な方のようだ。
「分かりました。ですが、私は賢者などと呼ばれていますが、元の世界では一般の庶民、ただの民草です。ですから、あまり堅苦しいのは得意ではありませんので、幾分か砕けてくれた方がありがたいです。」
そう私が言うと、カイさんは私を凝視してくる。
「何か?」
「いえ、身なりもさることからカオル様の立ち居振る舞いに、自分は格式高い家の出だと思っておりました。」
「身なりって、え、ウソ、これパジャマ代わりの、寝間着なんです、忘れてた…。」
思い出せば、今の私の服装はパジャマではないと言え、上は綿の長袖Tシャツにフリースのパーカー、下に至ってはスエットズボンに内側がもこもこの冬用スリッパだ。この冬用スリッパは底が厚いお陰で今まで石造り風の床を歩くのに一切の苦痛を感じなかったために、今の今まで自分がどんな格好だったのかを忘れていた。
「それが寝間着ですか?随分仕立てが良いように見えます。」
と、驚きを隠そうとしないカイさんの服を見る。王族に付くのだから、見た目にもしっかりとしているように見えるし、襟などはパリッとして洗濯糊がきいているように見える。エックハルト皇子も同様だったが、金糸の刺繍が施されていてより華美だったように思う。
しばらくカイさんから一般的な庶民の衣服や生活様式を尋ねていると、控えめなノックが聞こえた。