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ぐう~~…
と、間延びした音が私のお腹から聞こえてくる。先程まで混乱し、慌てふためいていた空間に脱力感が漂う。エックハルト皇子は軽く手の甲で口元を隠して俯き、ヘリベルト局長に至っては脱げていた羽織をかぶり直して震えている。背後の気配はブルブルしている。
「こほん。空腹でいらしたのですか?」
「はい、私の世界ではまだ早朝の時刻でしたから、朝食どころか水一杯さえさっきのお茶まで口にはしておりません。」
やっと笑いが収まったのであろうエックハルト皇子は心配そうにこちらをうかがってきた。それに私は皮肉交じりのやけくそで返す。窓から見える様子では、太陽は中天を過ぎているぐらいだろうか。おそらく彼らは昼を済ませてから召喚の儀式をしたのだろう。
「申し訳ありません、気付かず。何か用意させましょう。そうですね、一度カオル様にお使いいただく部屋に持って行かせましょう。カオル様にとって突然のことで大変混乱していると存じます。今日はそのままお休みください。カイ、案内を。」
「御意。賢者様にはこれより部屋を移動していただきます。私の後に付いて来てください」
そう言うと、カイ近衛兵隊長は扉を開いて退室を促す。こちらの意思などお構いない行動に些か腹が立つが、実際に空腹ではあるし、今までの事を整理する時間は欲しい。取り合えず大人しく従っておこう。そう思って立ち上がり、彼に従う。
「カオル様。」
エックハルト皇子が呼び止める。少しの逡巡の後、
「本当に、申し訳ありませんでした。」
そう言うと、エックハルト皇子が私に対して頭を下げた。それに対して私は、何の言葉も持ち合わせていなかった。