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私こと、竹中薫は純然たる日本人。緑茶やほうじ茶、紅茶やウーロン茶などには親しみがあるが、ジャスミン茶やハーブティーのようなものはあまり嗜んではこなかった。だから、ハーブティーとかはどちらかと言えば苦手だ。この中世のヨーロッパのような外観の国では紅茶かハーブティーが出るだろうことは予測していた。広がった香りに香ばしさがあったことから紅茶であろうことが確定して正直安心していた。多少の慣れない味ではないことは仕方ないとちゃんと思っていた。
それでもだ。
「にっっっが!これにっがい!なんですか、このお茶は!?」
気付けなんてものじゃない、舌を痺れさせて脳天に突き抜ける様な苦さは何なんだ!緑茶でやろうとしたら相当茶葉を入れてグラグラ煮出さないと無理だ。そして渋い。喉の奥がきゅーっとする。何なら朝ごはんに温かいスープを飲もうとしていた胃まできゅーっと縮み上がるような感覚だ。
「おや、お気に召されませんでしたか?でしたら砂糖を入れると飲みやすくなりますよ?」
「それぐらいでどうにかなるような味ですか!?」
砂糖で到底何とかなるような苦みや渋みではない。
「!貴様、何をしようと!?」
私は勢い良く立ち上がり、ワゴンに置いてあるティーセットに歩み寄る。突然の私の行動に近衛兵隊長が手を伸ばして来るが、構わずティーポットの蓋を開ける。その中にはふやけた茶葉がみっちり入っていた。
「こんなに大量の茶葉を使ったら苦くて渋いに決まっているじゃないかっ!」
ティーポットの温かさから、おそらくしっかりと器具類は温められていたのだろう。しかし、この場には四人の人間(妖精は除く)しかおらず、四人分の茶葉だとしても10グラム前後になって、底の方に開いた茶葉が少しの厚みを伴って広がっている程度のはずなのだ。それがティーポットにもっさりとしている。
「いや、これ明らかに茶葉が多すぎませんか?これおかしいでしょう、何かの間違いですか?」
私の剣幕に、他の三人はお互いに顔を見合わせる。
『古き新しき知恵を持つ者よ、何度も申す通りにこの世界は理が異なるのだ。それは力だけではない、多くのことが似通っていて異なっているのだ。』
そう妖精が言葉を添える。
「交渉人よ、それはカオル様の世界との違いは魔法以外にも及ぶ、と?」
『左様、故にかの者を呼び寄せたのであろう。』
妖精はそう言ってヘリベルト局長を見る。真正面から見据えられたヘリベルト局長は居心地悪そうに肩を揺らす。
「つまり、魔法だけではなく、異なる生活様式と言う事も召喚の要件になっていたということですか。」
そこまで言って、私は再び席について頭を抱えた。お茶一つでここまで味覚に差があるのだ、他にどんなところで違いがあるのかわからない。
そんなことをいくら頭では考えても、体は思考を裏切り、お茶を飲んで余計に冗長された空腹という欲求が、腹を鳴らすという形で表出した。