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1 はじまり
何気ない日常が突然奪われるー
そんな文言からふつうは何を想像するだろう。
突然の事故や病気、はたまた殺人事件や自殺。
そういったアクシデントが思い付くだろうか。
しかし、今私が遭遇したソレは、誰も想像することが出来ない物だった。
梅が咲くこの季節、まだ寒さが厳しいが柔らかな朝日に起こされるところ、今日は随分早い時間に起きたのか、まだ日の光は見えない。
えいや。と、気合一つで布団から起き上がり、ひやりとした空気にぶるりと震える。
こんな日の朝は温かなスープで始まりたい。
そう思いながら寝間着にパーカーを着込んでまだ冷たいもこもこスリッパに足を突っ込み、部屋から出るために扉を開いた。
開いたら、ふつうの白い壁紙と茶色いフローリングで、リビングに続く廊下が出迎える。
しかし、今目の前には白や黒い羽織を着た人達がずらりと並んでいる。
扉を閉めた。
また扉を開けた。
杖を掲げたような白や黒い人達。
「………あ、夢か。」
そう呟いた途端。
『夢などでは無い、古き新しき知恵を持つ者よ。』
頭の中で聞いたことも無い声が響いた。