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剣の特訓

 そうこうしているうちに二ヶ月が経過した。依頼をこなし借金を少しずつ返済しながら訓練をこなす。


 訓練では相変わらずエニスに殴り飛ばされることはあるものの、二人ともその頻度は確実に減ってきており、筋力も少しずつだが上がってきていた。


 今日も一通りの訓練メニューをこなし、訓練場で休憩をとっているとエニスがおもむろに口を開いた。


「そろそろお二人に個別のメニューを行っていただきたいと思います」


「「個別メニュー?」」


 肩で息をしながら、二人は流れる汗を拭って声を合わせた。


「はい。以前もお話したと思いますが、シン様は剣術の、ディアーナ様は魔法の訓練を行っていきたいと思います」


「前に言ってましたね」


「言ってたわね。エニスが教えてくれるの?」


「いえ、私は剣術と魔法に明るいわけではないので。使えないわけではないんですけどね。というわけで特別講師の方をお呼びしています」


 芝居がかった口調でエニスが声を上げると、見慣れた二人が訓練場に現れた。


「よっ! シン! ディアーナちゃん!」


「こんにちは~シン~ディアーナ~」


 長剣を腰に差した中年の男性剣士と、狼耳をぴんと立たせた小柄な女性魔法使いだった。


「リムリックさん! レイシュさん!」


 そう、エニスが呼んだ特別講師とは先輩冒険者であるリムリックとレイシュであった。


「剣術は俺が基本を教えてやよ。よろしく頼むぜ! シン」


 そう言うとリムリックは慎の背中を豪快にばしばしと叩く。


「ぶっ、よ、よろしくお願いします」


 そんな二人の様子を尻目に、レイシュはおっとりとした様子でディアーナに近づくとゆっくりと手を差し出した。


「暑苦しい男連中は置いておいて~。魔法の訓練は私が担当しますね~よろしくね~。ディアーナ~」


「ええ、よろしくね」


 ディアーナもにこやかに手を取る。


「と、いうわけで剣術はリムリック様に、魔法はレイシュ様に基礎の訓練をお願いしたいと思います」


 エニスはぱんぱんと手を打つと、場を仕切りなおす。


「リムリック様は先日Cクラスへ昇格されていますし、シン様にアーツの基礎を教えられたと聞き及んでおります。レイシュ様も同じくCクラスへ昇格され、氷魔法を始め支援魔法、治癒魔法に長けております。シン様、ディアーナ様はお二人からそれぞれ基礎を学んでください」


「わかりました」

「わかったわ」


 そして慎とリムリック、ディアーナとレイシュはそれぞれ訓練場の離れた場所に陣取ると、それぞれの剣術と魔法の訓練を始めるのだった。




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




「んじゃあ始めっか。シン」


「よろしくお願いします」


 木剣で肩をポンポンと軽く叩くリムリックと、そんな彼に対し改めて頭を下げる慎。


「どうすっかなぁ。考えるのもめんどくせぇし、模擬戦すっか!」


 言うが早いか、いきなり正眼に木剣を構えるリムリック。どうやらこまごまと何かを考えるのはあまり得意ではないようだ。


「いきなり模擬戦ですか!?」


 慎も木剣を構えるが、いきなりの提案に正直、戸惑っていた。もっと基本的な素振りや型の説明などから入ると思っていたからだ。


「ちまちまと教えるのは性に合わねんだよな! ってことで行くぞっ!」


 言い切る前に鋭い踏み込みからの斬り下ろしが放たれる。その斬撃を構えた木剣でなんとか受け止める慎。木と木が打ち合う乾いた音が響いた。


「ちょっ!? 不意打ちはどうなんですか!?」


「実戦じゃ敵は待ってくれないぜ! ほらほらどんどん行くぞ!」


「うわっ! くっ!?」


 上段、下段、中段とあらゆる方向から次々と放たれる斬撃を、やっとの思いでさばいていく慎。


「お! これくらいなら受けれるか! じゃもうちょっとスピード上げて…」


 リムリックがそう言い放った瞬間、斬撃の重さと速度が急激に上がる。斬撃を受けるたびに慎の手が痺れていく。


 なんとか速度に追いつこうと必死の慎だが、とうとう捌ききれずに右わき腹にリムリックの木剣を受けてしまう。


「ぐぇ!」 


 鈍い痛みに膝をついてしまう慎。リムリックは息も切らさず変わらず木剣で肩を叩いている。


「このスピードはついてこれないか。おーいシン、大丈夫か? どうするよ? 今日はもうやめとくか?」


 軽い口調でリムリックは慎に尋ねる。


「…いえ、まだ、大丈夫です」


 息を整えると、慎は再び木剣を構えなおし、リムリックを見据えていた。


「おう、根性あるねぇ。よし! もういっちょやっか!」


 それからしばらくの間、訓練場には木剣がぶつかり合う音が響いていた。


 

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