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デート

遥が行きたいと行ったのはとある公園の広場だった。平日ということもあり人は誰もいない。

そういえば平日ということは学校なのではないだろうか、まだ暦は6月で夏休みという訳でもない。


「遥ちゃん、そういえば今日学校なんじゃないの?」


制服からTシャツに短パンという格好になった遥はニヤリと笑みを浮かべ「サボりなんです」と言った。


「サボりすぎたら卒業できなくなるぞ」

「·····あはは、そうですね」


遥はバトミントンのラケットを翔太に渡してきた。


「バトミントンしましょう、いきますよ!」


かなりの速さの羽がこちらにやってくる、何度か打ち返しているうちに翔太は羽を地面に落としてしまった。それを見た遥は嬉しそうに笑う。

遥は初めのうちは元気に動いていたがすぐにバテてきたのか呼吸が荒くなり、ついにはしゃがみこんでしまった。慌てて駆け寄り声をかける。


「大丈夫か?」

「は、い」

「立てるか、ベンチで休もう」


何とか立てたがふらふらと足取りが覚束無いため肩を貸してベンチへと向かう。顔色を伺うと真っ青な顔色をしていた。

遥をベンチに座らせ自販機へと向かいスポーツドリンクを購入し渡す。


「すみません」

「体調悪かったのか」


遥は首を横に振る。


「いえ、すぐに治ります」

「今日はもう帰った方がいい、タクシー呼ぶから·····」

「嫌です·····すぐになおりますからバトミントンはやめてどこかゆっくり出来るところにいきましょう」


少し休むと遥の顔色はだいぶ良くなってきたようだ。無理はしないように伝え公園を出る。そろそろお昼時でお腹も空いてきたため遥の希望で近くにあったファミレスへと寄った。

ファミレスはそれほど混んではおらずすんなりと入ることが出来た。翔太はオムライスを遥はミートスパゲティを注文した。


「次はどこにしようかな~」


無邪気に笑いながら遥は言う、フォークでスパゲティを弄んでいる。あまり食欲がないのか小食なのかは分からないが全然減っていなかった。


「お腹すいてなかった?」

「いえ、あー·····こう見えて小食なんですよ」


遥はそう言うとクスクスと笑った。

翔太は先程遥が体調を崩してからずっと違和感を抱いていた。遥は何かを隠している、そしてそれはあまり考えたくないし当たっても欲しくないことなのだが。

遥は病気なのではないだろうか。

いくら食欲がないとしても1口ほどしか食べないのはおかしいのではないか、バトミントンをした時もそうだ、女子で体力がないとはいえあんなにもすぐに疲労しうずくまるほどになってしまうだろうか。

次々と疑問は浮かぶがそれを訪ねる勇気は持ち合わせていない。

それに翔太はレンタル彼氏だ。遥とは今日限りの付き合いになる。深く知ろうとする必要はなかった。


「そろそろ出ましょうか」

「そうだね」


予想以上に遥の体は弱っていた。前はそんなに疲れやすくなかったし、めまいなど感じたことはなかった。そんな自分が少し怖い。

次はどこに行こうとしたんだっけとカバンからノートを取り出す。


「それ·····」


翔太が尋ねてきた。表紙には「やりたいことリスト及び日記帳」とマジックで書いてある。

怪しまれないように気づかれないように笑顔を浮かべて「やりたいことがいっぱいありすぎて·····」と無難に答えてみた。


「そっか、でもまだまだ人生長いんだから焦らなくてもいいんじゃない?」


その一言が胸に刺さる。

でもそれは仕方のない事だ、彼は自分のことを何も知らないのだから。目の前に立つ少女が余命いくばくもないことなど想像だにしないのだろう、それが普通なのかもしれない。


「そうですよね」


今自分は上手に笑えているだろうか。



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