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出会い

私のやりたいことリスト

①美味しいものいっぱい食べること。

②いっぱい遊ぶこと

③デートしたい。

④親孝行

⑤、、、、


「やりたいこと多いな~間に合うのかな」


少女は書き記したノートを見つめながらどこか諦めたような声音で呟く。そのつぶやきは一人きりの部屋に虚しく響く。

少女の名前は花宮遥という。まだ高校二年生である。

まだあどけなさの残る顔をしている。大きな黒目がちの目にほんのりと桜色に色づいている薄い唇、白い肌がなお映える艶やかな黒髪、どこからどう見ても健康そのものに見える。

しかし、少女に残されている時間は少ない。少女の体は病に蝕まれていた、その病はじわじわと少女の命の灯火を消しにかかっている。


「よし、早速明日から取り掛からなきゃ」


前向きな言葉は自分に必死に言い聞かせているようにも聞こえる。少女の大きな瞳から一筋の涙が零れた、涙は堪えようもなく次から次へと溢れてくる。

ああ、泣いたって状況は変わりはしないのに。こんな姿両親が見てしまったらさらに心配させてしまう。


「·····やだ、やだよ」


ノートに涙が零れてボールペンのインクが滲み黒いシミが広がっていく。


「死にたく、ない」


それは唐突な申し出であった。


「あの!私の彼氏になってください!」


高校生位の少女が目の前に真っ赤な顔をして立っている。どうしたものかと男は頭を悩ませる、面倒なことになってしまった。

事の発端は数時間前に遡る。

男の名前は太田翔太、22歳の大学生である。バイトで彼は少し珍しい仕事をしている、レンタル彼氏である。

ホームページにいつもの様にメールが届き、事務所に受理されこうして待ち合わせ場所にやってきた。今回の依頼者は自分と22歳の人らしい、自分と歳が近いと少しは気楽に過ごせるため今日は肩の力を抜いて待ち合わせ場所であるカフェの前にやったきたのだが、現れたのはなんと制服を着た女の子だったのだ。

さすがに未成年はまずいと思い、遥と名乗る少女にその事を伝えたのだが頑なに帰ろうとしない。さすがにカフェの前で言い合うのもしのびないため店内へと入った。

何故、高校生の少女がレンタル彼氏などを呼ぼうと思ったのか、イタズラかはたまた何か理由があるのか。

遥はオレンジジュース、翔太はコーヒーを頼み互いに向き合う。


「あのね、何度も言ってるんだけど未成年はちょっと·····」

「あの!どうしても、お願いしたいんです、私の彼氏になってください、1日だけ·····お金は払えますから!」


遥は必死の形相で訴えかけてくる。翔太は溜息を吐き遥かに問うた。


「何か理由があるの?」

「え」


遥の顔が強ばる、目をキョロキョロと彷徨わせ必死に何か理由を探そうとしているようにも見えた。

高校生の少女がどうして、それは単純な疑問だったが聞いてはならなかっただろうかと少し後悔した。

ふと遥の視線が壁にかかっている時計に定まる。何かを思い出したかのようにカバンを探りポーチを取り出す。


「すみません、少しトイレに·····」

「どうぞ」


翔太は運ばれてきたコーヒーを啜りながら遥かを待つことにした。


危うくお昼の薬を飲み忘れるところだった。まだ薬を飲み始めて日が浅く、薬を飲むという習慣が身についていないためついつい忘れてしまいそうになるのだ。

今は合計で4つの薬を飲んでいる、もう少し病気が進行するともっと薬は増えるらしい。

薬を飲むのは嫌いだが長生きするためには欠かせないものだ。

最近の医学はものすごく進歩しているらしい、すごいなと思う反面何故私の病気を直せるまでになっていないのかと嫌になるときもある。

トイレで薬をのみ終わったあと鏡を見ると少し痩せているような気がした。


「へへ、ちょっとしたダイエット·····」


前向きに捉えていかないと心が砕けてしまいそうになる。


「お待たせしました」

「大丈夫だよ」


二人の間に沈黙が流れる。沈黙を破ったのは遥の方だった。


「あの、どうしても今日だけ、制服は着替えますから·····」

「·····理由は聞かない方がいいのかな」

「そうして貰えるととてもありがたいです」

「·····分かりました」

「ほんとですか?」


遥の顔が輝く。さっきまで暗く落ち込んだような顔が嘘のようだ。


「私、行きたいところ沢山あります!食べたいものも!」

「うんうん、全部行こうね」

「わーい!」


こうして二人の長いようで短い物語が始まる。


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