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番外編1 ルード






 国王の座から、リオニー領の領主へと戻ったルード・リオニー。彼は少し寂しいと感じていた。今まではメイドや執事、国王騎士達がそばにいた。けれど、今は彼らはそばにはいない。

 やりたいことがあれば、一つ返事で従っていた部下達。嫌そうな顔をしても、否定されることはなかった。欲しいものがあれば持って来てくれていたけれど、そんな存在は今は1人もいない。

 でも、ルードには今1人の女性がついている。小柄なシマエナガの鳥人族の女性は、見た目は人族のようだ。背中から生えた翼は小さく、正常に成長しなかったのだ。

 そのため両親に捨てられたのだという。以前の領主に拾われた女性は、それからずっとそこで暮らし働いていたのだ。

 現在はルードの秘書として働いており、国王をしていたときも何度も城に書類を持って来ていた。別の仕事がしたければ、別の仕事についても構わないと戻って来たときに告げたルードの言葉に唯一残った女性。

 変わらず接する女性がルードは気になっていた。

 領主としての仕事で会わなければいけない者もいる。今までは国王として会っていたけれど、国王ではない今は領主として会っている。

 スケジュールの全てを彼女が管理しているため、ルードは仕事がしやすかった。ただ、屋敷にはルードと彼女しか住んでいないため屋敷をあけることができなかった。人と会うのは、全て屋敷。

 仕事中も彼女はルードから離れなかった。飲み物が欲しいと思ったときには、すぐに飲み物が出てくる何が食べたいと思ったときでさえも。

 いつも笑顔でいる女性をルードは気にしていた。何処に行くでも一緒に連れて行くのは、屋敷に2人きりだからでもあった。しかし、それだけではないとルードは気づいていたのだ。

 ――離したくない。

 そう思うようになっていたのだ。城から戻って来ても唯一残った女性。変わらず優しく接してくれる女性。知らずに思いを寄せていたのだ。

 ロベリアを好きだと思って結婚しようとしたわけでもないので、ルードは自分の気持ちには気づいていなかった。

「ルード様、コーヒーとクッキーをお持ちしました」

 笑顔で言う女性にルードは頷いた。いつも1人で何もかもをしてしまう女性に感謝しながら、ルードはコーヒーを飲む。

 正直スワンの淹れるコーヒーのほうがおいしいとは思うルードだが、クッキーは女性が作ったほうが美味しいと感じていた。

 そして、女性はルードが欲しいと思うタイミングを僅かな変化で見抜いていた。その変化を見つけることができるほど、女性はルードを見ているのだ。

 どこにいようと、ルードが見える場所にいるのだ。だから変化に気づくことができる。

 それだけではなく、女性はルードを見ていたかったのだ。何故なら、ルードが好きだったからだ。結婚式にも呼ばれていたのだけれど、参加することはしなかった。

 できなかったのだ。好きな男性が結婚する姿を見たくなかったから。

 けれど、今はルードの側にいることができる。女性はそれだけでもよかった。好きな男性と一緒にいられるだけで幸せだったのだ。

 だから女性は知らない。ルードが好意を寄せてきていると。

 それに気づくのは、まだ先のことである。











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