表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/60

第03話 行動を起こす






 結局、一睡もすることができなかった。ベッドに横になっていてもスワンさんの言葉がずっと、頭の中で繰り返されていた。

『ロベリア様はそれで幸せになれるの? それに、貴方も。後悔しない? ときには行動しないといけないときだってあるの。それは、私も同じ。よく考えなさい。国王陛下のことなんかどうでもいい。ロベリア様と貴方が幸せになる道を。後悔しない道を』

 このままベッドで寝転がっていても、後悔する道しかない。でも、結婚式に呼ばれてもいないし、今日は休みなのだ。城にも行けない。

 とにかくゆっくりとベッドから起き上がり、床に足をつけた。結婚式がはじまる時間は聞いている。けれど、行こうとは思えなかった。

 ウエディングドレスを着ているロベリアは見たい。けれど、その隣に俺以外の男が立っている姿を見たくはなかった。こんなことになるなら、俺の思いを伝えていればよかった。そんなことを思っても、もうどうすることもできはしない。

 立ち上がり、部屋から出ると1階に下りて冷蔵庫に向かう。お茶を取り出して、洗ったコップを置くとお茶を注いで一気に飲み干した。

 お茶とコップを持ち、テーブルに置いてからソファに座る。テレビをつけて内容が頭に入って来ることはないニュースを見て、今日国王の結婚式があることを報道されていないことにやっぱりかと思う。

 何故に秘密にしているのかはわからない。大勢が城に押し寄せてくるからだろうか。そうだとしても、近隣諸国の国王を呼ぶくらいはするだろう。それなのに、それすらもないのだ。もしもこの国に他国の国王が来ていたら、それこそニュースになるだろう。

 けれど、ニュースになっていないのだから呼んでいないのだ。結婚すれば発表するのだから呼ばなくてもいいと考えている可能性はある。自分の使えている国王ではあるけれど、何を考えているのかもわからない。

 そのまま黙ってテレビを見続けて時間がすぎていく。偶然時計を確認して、そろそろ結婚式がはじまる時間だと気がついた。

 時間を見てしまうと、どうしても気になってしまう。だから、コップを洗ってしまおうと手に取り立ち上がった。先にお茶を冷蔵庫に入れて、コップを洗おうとしたが、ある一点を見つめて固まってしまった。

 そこには、食器棚がある。1人暮らしのため食器は少ないけれど、見つめる先にあるのは以前ロベリアが使ったコップだった。

『俺が包丁を使えるから、ロベリアは俺が包丁で切ったものを調理すれば問題ないよ』

 突然思い出す、ロベリアを自宅近くまで送った日の言葉。このままロベリアが結婚してしまえば、もう二度とこの家に来ることはないのだ。一緒にキッチンに立つこともない。

 後悔しない道を選ぶのなら、今だろう。今なら、まだ間に合うはずだ。コップを置くと、俺は自室へと向かった。

 今日、城へ向かうのは命令違反だ。休みの俺は、城へ行ってはいけない。でも、行動を起こそうと思った。何もしないで後悔するよりは、行動してから後悔したほうがいいだろう。

 国王からロベリアを取り戻す。取り戻すという言い方はおかしいけれど、大人しく好きな女性をあの国王には渡せない。ロベリアを国王から奪ってしまえば、この国にいることはできないだろう。

 ロベリアと一緒なら何処にだって行ける。きっと、彼女は俺を拒むことはないだろうと思う。自室へ入ると、クローゼットを開いた。そこには国王騎士の制服が数着入っている。

 俺は、そのうちの1着を手に取った。行動を起こすために。











評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ