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あの丘を越えて

◆◆◆あの丘を越えて◆◆◆

ざくざく。ざくざく。


私たちは特にあてもなく雪原を歩いています。


雪原は広くて景色に代わり映えも少ないし雪であまり進めないのでとっても疲れてしまいます。


「もっとこう、何かないのか?ほれ、宝箱ぐらいあるのではないか?」


「うーん、あるにはあるんですけど、1か所に5個くらいあるんですよね。きっと、もう誰かが集めちゃった後なんですよ。」


「ほう、つまり、そこへ行けば何かがありそうだな?」


「えー、きっとほかの冒険者さんたちですよ?行きたくないなぁ。」


「宝箱を集めるにしても、開けないのは不自然ではないか。これ見よがしに階段の近くにダンジョンマスターが配置してくれただけかもしれぬぞ?」


「ダンジョンマスターが置いてくれたっていうのはさすがにないと思いますけれど、たしかに開けないのはおかしいですね。」


「だろう?他に目ぼしいところも見当たらぬのだ。ここは行ってみるしかなかろう。」


「他の冒険者さんと揉めるのはやめてくださいね?」


「無論だ。我はこれでも我慢強い方なのでな。」


「それ、ぜったいうそです。」


「ははははは!善は急げだ。ファイア!」


キリコさんが火魔法で雪を溶かして道を作っています。


「わ!やめてください!雪崩が起きたらどうするんですか!」


「大丈夫だ。必ずや守り通してみせよう・・・!!」


ドドドドドド


「な!なだれです!」


若干登りになっている坂の雪を溶かしたせいで本当に雪崩が起きてしまいました!


「しっかりつかまっていろ。」


「はい・・。」


私はキリコさんに引っ張られて空中へと逃れました。


ドドドドドドドドドドドドドドド


「なだれって、すごい迫力なんですね。」


間近で見る雪崩は襲い掛かってくる魔物みたいな怖さがあって、音もすごいです。


「ふむ、この高さだともしかしたら巻き込まれるやもしれぬな。」


「え!?も、もっと高く!高く飛んでください!!」


「まぁまぁ、魅入っているようだったから待っていただけだ。」


キリコさんがゆっくりと高度を上げてくれました。


ふぅ、これだけ離れれば安心?ですね。


雪崩が収まるまでぼーっと眺めたあと、ゆっくりと降ろしてもらいました。


「さて、なんだかんだで宝箱に近づいたと思うがどうだ?」


「キリコさんは強かですね。さっきのなだれ、怖くなかったんですか?」


「なんだ?あの程度の雪崩れなど、防ぐまでもなく受けきることが出来るぞ?そちらの方が良かったか?」


「い、いえ。さっきので良かったです。」


そんな事したら私はながされてしまいますぅ。


「ん?お!いたぞ、いかにもなやつが。」


キリコさんの視線を追うと、ちょっとした丘みたいなところがありました。


「あ、宝箱です。」


5個ともきれいに揃っています。


「そっちではない。あの丘のように見えるのがあるだろう?あれから気配を感じる。あれは魔物だな。」


「えっと、丘が魔物なんですか?」


「そのようだ。あの丘が移動して宝箱を集めてしまったのだろう。さて、どうやって倒したものか・・・。」


「ええ?倒すんですか?丘ですよ?」


そもそも倒せるようなものなのでしょうか?


「とりあえず割ってみるか。」


「も、もう仕掛けるんですか?その、宝箱は取っておいてくださいね!」


「はは。善処しよう。人化解除!」


巨大な獣となったキリコさんが丘に先制攻撃を加えました。


キリコさんの前腕・・・前足?えっと、腕の部分での叩きつけで丘が割れましたが、丘は割られるままに両端を持ち上げてキリコさんを包み込もうとしています。


本当に丘が動くんだ・・・。すごい。


キリコさんは華麗なバックステップで攻撃を逃れ、丘が閉じた所にすかさずもう一撃を加えました。


「土がいっぱい飛び散りましたけれど、なんだかあまり意味がなさそうですね。」


丘は特に気にする事もなく、キリコさんを取り込もうとしています。


「あ、識別してみようかな?」


▼名もなき雪原の丘 +敵


「丘ですねー。」


キリコさんと丘はまだ激戦を繰り広げています。


怪獣大決戦みたいです!


「あれ、丘がちょっと小さくなっています?」


どうやら、飛び散った土はそのままみたいです。


しばらく泥仕合が続いたあと、半分以下になった丘の前に未だ疲れた様子の無いキリコさんが立っていました。


DAURARUUUUUUA!!


キリコさんが何かの力を発動して、全身に炎を纏いました。


ザザザザザザッ


突然、飛び散っていた土が一斉に丘へと戻って行き、その通過点にあったキリコさんに突き刺さりました。


「あ!どうしよう。キリコさん、大丈夫かな?とりあえず、ダークガーデン!」


キリコさんはすっごく丈夫みたいで全然動きが鈍っていませんけれど、けっこう長く戦っているのでそろそろ回復した方がいい・・ですよね?


しばらくすると、闇の光が沸き上がり、キリコさんを治し、丘に闇のトゲが刺さりました。


「闇のトゲは焼け石に水ですね。」


あ、どちらかというと、ぬかに釘でしょうか?


そんな事を考えている間も、元気になったキリコさんが丘を細切れにしていきます。


【霊体を捉えました。魂を吸収しますか?】


「え?あ!あの丘って幽霊が憑りついていたんですね。吸収します。」


【魂を吸収しました。魂を1獲得。】


「あんなにおっきくても、魂は1つなんですね。」


それまで果敢に戦っていた丘はぐにゃりと潰れてしまいました。





あれ、霊視の魔眼強くない?


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