食べてはいけない物
◆◆◆食べてはいけない物◆◆◆
「さて、水、狩り、薬草の話をしたわけだが、そろそろ食べてはいけない物の話もしておこう。」
「よくわからない木の実とかの事ですか?」
「ふむ、木の実については食べカスが多数見つかれば食べられる可能性がある。もちろん、それを食べている魔物か何かが毒に強いだけという事もあるので期待すべきではないが、そもそも木の実は外見での判別が容易だ。食べられる木の実集なる本でも買っておけば役に立つやも知れぬ。」
「えっと、本はちょっと・・・。」
キリコさんがやれやれという感じになりました。
「それならば、有名どころや美味しい木の実の載った絵本でも買え。」
「わ、私は子供ではありません!」
「絵だけでも覚えておけば食べられるだろう?絵本をバカにしてはならない。」
「うー、そんなつもりは・・。冒険者のたしなみ、として、必要?ですよね。」
ふぅ、それならそうと先に言ってくれればいいのに。
「はぁ。食べてはいけない物の話だったな。真っ先に挙げられるのはキノコだ。」
「キノコですか?でも、しいたけとかえのきとか、お店で売ってますし、よく食べますよ?見ればわかると思うんですけど・・。」
「見た所でわからないからそう言っている。識別のランクを上げたり専用のスキルでも持っていればそれに頼ればいいが、何もなければ見分けなどつかぬ。」
「いくら私でも、しいたけくらいは見分けつきます!」
「絶対に無理だな。スンスン。ちょうどいい教材があるようだ。ついてこい。」
「あったんですか?しいたけ。」
キリコさんはニヤリとするだけで私を木がたくさん生えている方へと誘導しました。
「これだ。これは何に見える?」
茶色くて質量感のある傘。小さく白いてんてんが付いていておいしそうです。
大きさは直径6cmくらいで食べごろですね!
軸もまるまると太っていておいしそうです!
「おいしそうなしいたけですね。さっそく茹でましょう!」
「それはウラタケ。毒キノコだ。」
「えぇ?!」
どう見てもしいたけです。
「暗くしてみろ。」
「え?こうですか?あ!」
影を作って暗くしたらしいたけが光りました。
「わかったか?それがウラタケだ。あっちはどうだ?」
キリコさんが指差した方にもしいたけに見えるキノコがあります。
「えっと、しいたけみたいですけど・・・。」
「しいたけが生えているところは見たことあるんだったか?」
「はい、おうちで育てていたことがあります。」
「そのしいたけはもう少し上を向いて生えていなかったか?」
「そう言われてみるとそうだったような・・・。」
このしいたけはちょっとだけ傾いています。
「これはしいたけもどき。毒キノコだ。」
「えー・・。」
真っすぐ上に向かって生えない以外は同じって事ですよね?
「ちなみにあれはどうだ?」
キリコさんが地面というか雪から生えているキノコを指差しました。
「あれは毒キノコですね。しいたけはあんなに平べったくありません。」
色はしいたけですけれど、生えている場所もおかしいし、厚みのある傘が台無しです。
「それは凸シメジ。傘は毒だが軸は食べられるしうまい。しかも見ての通り、軸の部分が長い。」
「雪から顔を出しているくらいですからね。でも、これはわかりやすい形ですし、むしろこのキノコを狙えば食べられますよね?」
「その隣に生えているのはニセ凸シメジ。毒キノコだ。」
「えー・・・。」
「ニセ凸シメジの方が少しだけ色が赤い。」
「そんなのわかりません。」
凸シメジとニセ凸シメジが並んでいるのに同じに見えます・・・。
「とまぁ、こんな風に。キノコはダメだ。どうしても食べなければならないのであれば、即座に猛毒すら解毒できる方法を用意しなければならない。」
「なんでキリコさんはそんなに詳しいんですか?名前まで知ってるし。」
「暇だったからな。食い物を漁るくらいしかする事がなかった。食べ物も限られていたのでな。食べたキノコを1本づつ残して標本にしていたら、ダンジョンマスターが教えてくれた。」
「毒かどうかは実際に毒味して調べたんですね・・・。」
「一つだけ、食べずに危険と判断したキノコがある。あれからは怪しい気配がするからな。・・・・・・見つけたぞ、こっちだ。」
「そんな危ないキノコの所に案内しないでください。」
「大丈夫だ。近づかなければ問題ない。それに、間違って近づかないようにするために知っておいた方が良い。」
「うーん、危ないことはしないでくださいね。」
「当然だ。」
キリコさんに連れられて雪原を移動すると、明らかに目立つ何かが生えていました。
色は赤、枝の様に分かれて上へと伸びていて傘は無く、軸の太さは指と同じくらい?
あれは本当にキノコなのでしょうか?
「あれがカエンタケ。毒きのこ、それも猛毒だ。今の我であればもしかすれば大丈夫かもしれぬが、食べたいと思える形状でも臭いでもない。表面がテカテカと光っているだろう?」
「はい。」
「あれすら毒だ。触れただけでダメージを受ける。」
「えぇ・・・。」
食べちゃダメとかじゃなくて、触ってもダメなんですね。
「もしかしたら、亜種が存在するかもしれぬ。キノコには不用意に触らない方が良いだろう。」
「そうしておきます。」
「では、骨にあのカエンタケを持たせてみてくれ。」
「え、スケルトンさんにですか?危ないんじゃ・・・。」
「それならそれで良い。だが、あれは骨しかないから大丈夫やもしれぬ。持ち運びができれば武器として使えるだろう?」
「うっかり触ってダメージとか受けそうで怖いです。」
「普段は袋でも被せておけばよかろう?」
「うー、本当に大丈夫なのでしょうか?」
今は余分な袋や布がないので、カエンタケも雪で固めてスケルトンさんに持ってもらいました。
これはこれで、そのまま投げつけるだけで効果がありそうです。
罠か何かで飛ばされて私に当たりませんように・・・。
多少盛ってますが、
【カエンタケは実在します!】
実物を見たことはありませんけどね。




