味が良くない
◆◆◆味が良くない◆◆◆
「ふむ、いいぞ。食べられない事もない。」
「なんだか、微妙な言い方ですね。」
「味が良くない。まぁ、焼けば問題なかろう。」
「え、食べたんですか?」
「少しな。毒味も必要だろう?」
「生で食べると寄生虫がいるかもしれないってお母さんが言ってました。」
横で聞いていたお父さんが青い顔をしていたので、きっと食べてしまった事があるんです・・・。
「この体を蝕めるほどの寄生虫がいれば気配でわかる。大丈夫だ。」
寄生虫に気配なんてあるんですね・・・。
私はざっとアローラビットをさばきました。
その間にキリコさんが石で串を作ってくれていたので、それに刺して火であぶります。
「朝からこれ全部は大変だけど、ちょっと味見するくらいならいいよね。」
こうやって火を通しておけばそのままでも今日の夜までは大丈夫です。
でも、せっかく雪があるので完成したら雪で固めてブロック状にしたのをスケルトンさんに運んでもらおうかな?
「川の水が使えるか確認できるか?」
「うーん、川の水は飲んだことがないのでわかりません。」
いつも井戸水を飲んでいたのでわかりません。わざわざ川まで行って飲む人なんていませんよね?
「まずは水筒を見せてみろ。」
私はキリコさんに水筒を渡しました。
昔から使っている竹で出来た粗末な水筒なのでちょっと恥ずかしいです。
暑い日の農作業では、井戸まで行っていたらきりがありません。
この水筒にはお世話になりました。
でも、そろそろいい水筒を買った方がいいですよね。
やっぱり金属製かなー?
「まだ半分は残っているか。水筒が空で川が澄んでいれば洗っておいた方が良い。
水が残っている場合は、この川が利用できない危険性があるから保留だ。
まぁ、濾過層を作る魔法がつかえれば何の問題も無いのだが。」
「濾過層の魔法・・・ですか?」
「これだ。」
キリコさんがポンと四角い土を出しました。
「配合や配置の問題で様々な種類を考案したのだが、とりあえずこれが簡単だ。上から水を垂らすだけで飲用に足る水を生成できる。これは作るのが簡単な代わりにある程度奇麗な水を使わなければならないが。」
「私、土魔法なんて使えませんよ?」
「この土を持ち歩いてもいいし、市販のろ過装置を買ってもいい。
少なくとも水を持ち歩くことに比べれば容易だろう。
クリエイトウォーターは空気中から集めるから効率が悪いし、コントロールウォーターは熟練しないとゴミを分離できない。
土属性魔法こそが万能の属性だ。
それはさておき、誰にでもできる簡単なもう一つの方法は蒸留だ。
火にかけて沸かせて湯気を集めて飲み水にするのだが、これは面倒だ。
最終手段だと思っておくと良い。」
「えっと、そのまま飲むのが最終手段じゃないんですか?」
「すぐに水を飲まなければ死ぬという状況であればそうだろう。しかし川の水は基本的に汚い。可能な限り準備してから飲んだ方が良い。」
「キリコさんってこういう事に詳しいんですね。でも、私は飲み水を用意する方法が分かるのでありがたいですけれど、寄生虫を全然気にしていないキリコさんに言われると変な気持ちです。」
「何の話だ?きれいにしてから飲んだ方がうまいに決まっているだろう?」
「あ、はい。そうですね。」
結局、キリコさんなら水が汚れていても味が悪いだけで飲めるんですね。
「この水は普通だな。まぁいい。そいつはやるからある程度水を確保しておけ。」
キリコさんが私の分の濾過層を作ってくれました。
なんだか、帰ったら買わないといけないものがどんどん増えていくような気がします。
「ええい、まどろっこしい!人化解除!」
人化解除したキリコさんが濾過層を咥えて上からジャバジャバと水を流し込んでいます。
「そうやって使うから濾過層なんですね・・・。」




