食べられる野草
◆◆◆食べられる野草◆◆◆
「まずは、食べられる野草の採取だな。これが最も無難だ。」
洞窟から出るとキリコさんがそう言い出しました。
「えっと、この雪の中を探すんですか?」
昨日と変わらず地面は雪に覆われていて、これを掘り返して探すのは大変そうです。
「もちろんだ。むしろ、この雪のおかげで探しやすい。地上と違ってここは一年中雪だろうからな。こんな雪の中でも育つ植物など限られている。その一つが薬草だ。」
キリコさんがさっきの薬草を取り出しました。
「これもここの近くで採取したものだ。薬草は大地の力で生えてくる。陽の光に風に水、何も必要としない。まぁ、ある方が育つのだが。ダンジョンでまともな地面があるとなればもう生えていると思っていい。」
「へぇ、大地の力だけでも育つなんてすごいんですね。作物を育てるのはあんなに大変だったのに・・・。あれ?でも、町の中では全然見ませんでしたよ?」
そんなにどこでも生えるんだったら、お家の畑とか道端とかにも生えていないとおかしいです。
「それは都市核の力で抑えているのだろう。
どこにでも生えるからな。
家屋を支える重要な部分の下や城壁の下から生えてきて倒壊を招く。
ダンジョンでは時々巨石を転がしていた。
一株生えるとそれが周囲の大地の力を吸い取るせいで他の薬草が生えてこなくなる弱点が無ければ今頃薬草が植生の天下を取っていただろう。」
「へぇ、知りませんでした。薬草ってすごいんですね。」
「どうだ?興味がわいただろう?ダンジョンで暮らしていた頃はする事がなかったからな。よくその生態系をじっと眺めて観察したものだ。」
植物の観察って、ときどき見に行って変化の記録をつけるんですよね?
ものすごく暇だったんですね・・・。
「その、薬草は結局手当たり次第に探せばいいって事ですか?」
「そうだ。雪が盛り上がっていればそこに何かある。そしてその中に薬草も混じっているという事だ。」
「じゃぁえっと、とりあえずあれかな?」
ててててて。わさっ。
「石でした。次はあれかな?」
てててて。わさっ。
「あ、薬草です!へぇ、こんなに簡単に見つかるんですね!」
「だろう?これで薬草のサラダを一株分確保だな。さて、次は・・・川でも探そうか。」
「川ですか?こんなところにあるんでしょうか?」
広いとは言っても、ダンジョンの中です。そんなところ用意してあるのでしょうか?
「少なくとも水場があるはずだ。昨日、オークの村があっただろう?ともすれば、生活に水が必要だ。そう遠くないところにあるのだろう。占有していないという事は、あの村のオーク以外も訪れる可能性が高いな。運が良ければ肉も確保できるかもしれぬ。」
「私、オーク肉は食べませんからね?」
「水場を使っている他の魔物はオークではない可能性が高い。もしオークなのであれば中途半端に離れた所で別れて住むよりも、共生する可能性が高い。なんせ、仲良くしたくなかったとしてもどうせ水場で顔を会わせることになるのだからな。さて、探索開始だ。」
元オークの村の近くに行って川を探すとすぐに見つかりました。
そしておまけも見つかりました。
ヒュッ
「おなべがーど!」
カッ!
「出ましたね、アローラビット。この程度の矢ならこのおなべのフタでも大丈夫そうです。」
「兎肉ならうまそうだ。無駄にしないよう気を付けるのだぞ?」
「もちろんです。薬草だけだとがっかりですからね!」
カースは当然ダメとして、ダークガーデンはどうなんでしょう?
あの闇のトゲって何でできているのでしょうか?
色からして毒とかありそうです。
ブラックショットはもう使いません。
ハデスを使うとばくはつしてしまいます。
スケルトンさんたちは・・・。
「ごめんなさい・・・私には獲物をダメにしないで倒す方法が、ありません・・・。」
「ふむ・・・とりあえずいつもの、ダークガーデンとやらで倒せば良かろう。
まぁ、たしかに怪しげな色をしておったが倒した後で食べられるかどうかじっくり調べれば良い。
だめなら・・・新しく魔法を覚えるなり剣の腕を磨くなりトカゲにやらせるなり考えるとしよう。」
「そう、ですよね?じゃぁ、ダークガーデン!ふぅ、あとで弓とかも練習してみようかなぁ?」
「弓か。下手に剣を振り回されるよりはいいかもしれぬ。帰ったら1つ練習用の弓でも買うとしよう。これだけでもダンジョンに来た甲斐はあったようだな。」
「スケルトンさんの弓を使ってみろとは言わないんですね。」
闇の光が沸き上がり、アローラビットを闇のトゲが貫きました。
「体格の合わない弓など、初心者に扱えるわけがない。さて、毒を調べるとしよう。」
「私は小さくありません!」
キリコさんは私の主張に耳を貸すこともなく、熱心に毒がないかを調べていました・・・。
そういえば、ついに前話でかの名言
「これだから人間は・・・。」
を出すことが出来ました!
くっ!キリコさんはそもそも人外じゃん・・・。




