雪をかき分け
◆◆◆雪をかき分け◆◆◆
私たちは雪をかき分けながら、ゆっくりと進んでいました。
積もっている雪は私の膝が埋まるくらいで、とっても歩きにくいんです。
ある程度進むと、どうやら崖になっているみたいで、私たちは崖の上の方に転移されてきたみたいです。
「あんまり高いところじゃないといいけど・・。」
「遠目とはいえ崖の下に広がる部分が見えている。極端に崖の下だけ深くなっていなければ大丈夫だろう。」
「うん、それもそうですよね。ロープとか持って来ていませんので、降りるのを手伝ってもらえませんか?」
「当然だ、任せると良い。」
「ロイヤーは転がり落ちそうだからいったん戻っててね。」
私はロイヤーを送還してキリコさんと2人で崖際へ到着しました。
「村が出来ているな。ダンジョンの村・・・にしては住民に問題がありそうだ。」
粗末な家とそれらを守る外回りの柵、点々とともされているたいまつがここに多くの人が住んでいることを物語っています。
「もしかして、あれがオークですか?聞いていたまんまです。」
緑の肌、力強そうな体躯、豚のような顔。
オークと呼ばれる種族の魔物が村を作っていました。
「こんなところに村が作られているという事は、我らが通ってきた道はあまり人の通らぬ道であったようだ。」
「どうやって迂回しましょうか?」
「迂回?なにを言っている?このまま高所から攻撃すればよかろう?」
「いいオークさんかもしれないじゃないですか。」
「はぁ、そんなものはいない。気になるなら試しに・・・あの辺りに骨を召喚してみれば良かろう。」
キリコさんが特に何もない空き地を指差します。
「でも、いきなり武器を持ったスケルトンさんが出てきたらびっくりしちゃいますよ?」
「びっくりはするかもしれぬが、それでいきなり襲い掛かるものばかりであればいいオークである可能性は大きく減じられるだろう。」
「うーん、1体だけ呼んで何もさせなければ大丈夫かな?やってみます。」
私は空き地にスケルトンさんを1体呼び出しました。
スケルトンさんに気が付いたオークが何かを叫ぶと、周囲の人がそれぞれ手近な物を手に取り、寄ってたかってスケルトンさんを滅多打ちにしてしまいました。
他のアンデッドとして復活した後もそのまま滅多打ちにされていて可哀想だったのでスケルトンさん・・・元スケルトンさんは送還しました。
「言っただろう?いいオークなどいないのだ。テイムでもされていれば違うだろうが、ダンジョンに住むダンジョンの魔物であればあんなものだ。さて、ここからまとめて攻撃してしまえばいいだろう。経験値を回しておきたい者だけは再召喚しておくんだぞ?」
「はぁ、残念ですけれど仕方ないですよね。ロイヤーとわむこと・・・フウははしゃいで崖から落ちそうだからやめておいた方がいいかな?よし、じゃぁキリコさんお願いします。」
「もう一度言うぞ?なにを言っている?我はアンデッドとして復活したばかりではあるが、生前のLvをある程度引き継いでいるようだからLvが高い。主は何故かLvが低いようだから主が魔法か何かで倒して経験値にするのが効率的だろう。」
「私ですか?うー、倒せなくてもこの場所なら大丈夫・・かな?ダークガーデン。」
私が攻撃に使える魔法やスキルで広範囲なのってダークガーデンしかないんですよね。
「またそれか?試験の時に見せたあの魔法でも使えばいいのではないか?」
「えっと、それはちょっと今は使えないんです。」
詠唱まったく覚えていません( ̄∇ ̄*)
「ふむ?まぁ、この寒さの中で暮らしている魔物だから無難な方が良いか。」
闇の光が沸き上がり、オーク村のオークにことごとく闇のトゲが刺さりました。
オーク村は阿鼻叫喚となり、痛みでのたうち回るオークで溢れかえりました。
痛みのせいか、逃げ出すオークもいないみたいです。
「あの、あれって本当に悪いオークなんですか?」
「直接行ってみて治療でもしてやれば分かるのではないか?」
「それもそうですね。ポーションしかありません、どうしましょう・・?止血だけでもした方が良いかな?」
「冗談だ。滅多打ちにされてからでは遅いからな。本当に向かっていたら力づくでも止めていた。」
「えー・・。」
「仕方ないだろう?対話もせずいきなり襲い掛かってくる魔物と相容れることが出来る者は少なくともここにはいないのだから。」
「それは・・・そう、ですね。」
「ほら、あまり苦しませてやるな。次を撃て。」
私はこの後2回ダークガーデンを使ってオーク村を全滅させました。