縦横無尽
◆◆◆縦横無尽◆◆◆
「あなたはそこを左、あなたはもうちょっと進んで。あなたはそこで待機。皆さん!分かれ道があったらそこでいったん止まるんですよ!」
スケルトンさんたちを派遣するだけで楽そうと思っていた私が間違っていました。
全部私が指示しないといけないんですね。
そうですよね、指示しないとどっちに行ったらいいかわかりませんよね。
スケルトンさんが足りなくなりました。曲がり角多すぎです!
私は足りない分のスケルトンさんを逐次召喚していきました。
当然、呼べば呼ぶほど私は忙しくなってしまいます。
「あ、なんだかスケルトンさんが蹴散らされているところがあります。」
「どこだ?」
「あっちのあの辺りの角を右に曲がって少し行ったら左に曲がったところです。」
「どれ、見てきてやろう。護衛にトカゲでも呼んでおくと良い。」
「そうしておきます、ロイヤー、警戒をお願い。」
一応周囲はスケルトンさんだらけなので大丈夫だとは思いますが念のため、ですね。
キリコさんはふよふよと私が教えた方へと向かっていきました。
あれ?階段を降りているスケルトンさんがいます。そっちへ行けばいいのかな?
この階は広いけれど、階段の場所さえわかってしまえばそんなに遠くは無いみたいです。
考え事をしているとキリコさんがそそくさと帰ってきました。
「はぁ、面倒な事になった。」
ぞろぞろと冒険者のように見える人たちがこちらに向かってきます。
5人パーティーのようですね。
「おいおい、お前、ナメとんのか?!あ?!!」
うわぁ・・。
「あそこは俺たちの縄張りだっていう。」
「誰に許可もらって俺たちのシマ荒らしてんだ?おい、何とか言ってみろよ!」
ひ、ひえー・・・この人たちこわいですぅ・・・。
「おい女、ちょっと飛べるからってチョーシこいてんじゃねーぞ!やんのかコラ!」
「ほぅ、いい度胸だ。」
キリコさんが凄んでいます。
挑発しないでくださいよぉ。
「チッ!」
「とにかくさぁ、あんたらが邪魔してくれたせいで俺たちの稼ぎが減ったわけじゃん?これはもう迷惑料を払ってもらうしかないよなぁ!!」
「おうおうおう!キッチリ金貨1枚払ってもらおうじゃねーか!!」
「え、あ、はい、じゃぁ・・。」
「まぁまて。それでは、こちらの探索の邪魔をした分の迷惑料としてそちらも金貨1枚払ってもらおう。なんと、これは素晴らしい。双方の支払額が一致するおかげでこの件は解決。という事でどうだ?」
「ふざけんなやゴルァ!!!」
怒り狂った冒険者の一人がキリコさんに斬りかかりました。
ゴッ!
何やら鈍い音がして、冒険者が振り下ろした剣が中ほどで折れてしまいました。
「何かしたか?」
「ば・・ばけもの・・・」
斬りかかった冒険者が恐怖におののきながら後ずさります。
「お、おい、これやばいんじゃねーか?」
「俺は知らん!」
「あ、おい!待てよ!」
冒険者たちは逃げていってしまいました。
「はははは!どこへ行こうというのだね?出口はあちらだぞ?」
キリコさんが回り込んで冒険者の前に立ちふさがりました。
なにしてるんですかー!
「ひ、ひいいいい!」
「いやだ!死にたくない!!」
キリコさんが冒険者を掴んでは祭壇へ放り込み、5人とも放り込んだところで転移装置を起動しました。
「どうやらうまくいったようだな。」
キリコさんがいい仕事をした!みたいな顔をしています・・・。
「あ。」
こちらの様子をうかがっている別パーティーと思われる冒険者の1人と目が合いました。
冒険者さんはそれに気が付くと素早く通路の影に身を隠してしまいました。
「あぁ、あれ、絶対何か勘違いされました。」
「良いではないか。面倒ごとが減るに越した事は無い。」
「も、もう、スケルトンさんをたくさん呼んで探索するのは辞めようかな・・・。」
あ、さっき引っ込んだ人と一緒に冒険者パーティーの人たちが出てきました。
「すみません!祭壇に近づくことをお許しください!」
え?もしかして、私に言ってるんですか?
「えっと、どうぞ?」
「ありがとうございます!」
そのパーティーの人たちが武器も構えず一列になってこちらに・・じゃなくて、祭壇に走ってきました。
「お初にお目にかかります、勇者様。このようなところに勇者様がお越しになられるとはお聞きしておらず、申し訳ございません。お邪魔になってはいけませんので、我々は今日はこれで引き上げさせていただきます。ご健闘の程、お期待申し上げます。」
え、この人何言ってるんですか?
「そうか、いい考えだ。今後も励み給え。」
「は!お言葉を賜り光栄にございます!」
キリコさん何言ってるんですかーー!!
私は必死に視線で訴えますがキリコさんはまったく気にしていません・・・。
冒険者パーティーの人たちは揃って礼をして帰って行ってしまいました。
「キリコさん、なにしてるんですか・・・。」
「これで今後の探索への支障も減るだろう。良いことだ。」
「全然良くありません。本物の勇者様が聞いたらどうするんですか・・・。」
「その時はその時だ、手合わせの一つでもしてもらうとしよう。」
「やめてください・・・。」
帰りたい。でも、今帰ると絶対さっきの人たちと鉢合わせてしまいます。
うう、少なくとも今は帰れません・・・。




