久しぶりの冒険者ギルド
◆◆◆久しぶりの冒険者ギルド◆◆◆
久しぶりに町に帰って来て、
久しぶりにおばあちゃんの宿に泊まり、
久しぶりにゆっくり起きて、
久しぶりの冒険者ギルドにやってきました。
相変わらず、依頼を受けるわけでもなく暇をつぶしている冒険者さんたちが来ていますね。
最初の頃はちょっと、ううん、かなり怖かったけれど、今はもう怖くありません。
「群れで襲い掛かってくるウォリウの方がずっと怖かったです。」
「ヘンリエッタちゃん!よかった!」
サリアさんがカウンターを飛び越えてこっちに走ってきました。
「もう!お姉さん心配したんだから!今日は魔物が多かったとか、今日は誰々さんがMP切れで倒れたとか手紙に書かれたらもう・・・心配するじゃない!」
サリアさんがそのままの勢いで抱き着いてきました。
「ごめんなさい、でも、みんな頼もしくて、怪我もしないで済みました。」
家族や知人への手紙も好きなだけ・・・といっても限度がありますが、書いて渡すだけで届けてくれたので何回か手紙を書いたのです。
「うん、いいの。ごめんね?私が、弱くて、怖くて、守ってあげられなかった。ごめんね。」
「大丈夫です。前線で戦っていればいろんなものを用意してもらえるんですよ。見てください、この装備。」
私はサリアさんから離れて、くるりと回って見せました。
「前線に行って2日目にもらったんです。マジックシルバーの装備なんですよ?えへへ、これで一人前の冒険者に見えますか?」
「うん、凄く立派になったわ。そうだった、今回のクエスト達成でヘンリエッタちゃんのランクが上がったの。ちょっと冒険者証貸してね?」
私は冒険者証をサリアさんに渡しました。
ランクアップか~これで私は名実ともに一人前の冒険者ですね!
「はい、これでヘンリエッタちゃんは今日からEランクね。おめでとう。」
「ありがとうございます!」
「ランクが上がったからって、ヘンリエッタちゃんが突然強くなるわけじゃないんだから無理しないでね。日々の積み重ねが大事だよ。」
「はい!」
「それじゃぁ早速、Eランクの依頼掲示板でも見てみる?」
「それも見たいですけれど、その前に、依頼を出そうと思います。前線で戦ってたおかげで、たくさんお金がもらえたんですよ。もちろん、ロイヤーもたくさん頑張ってくれました。」
「そっか、そっか・・・そんなに貯まっちゃうほど戦っちゃったんだね。いくら貯まったのかは聞かないけれど、どんな依頼を出すのかな?」
サリアさんがどこからともなく依頼書を取り出しました。
受付嬢のたしなみっていうやつですね!
「えへへ、もちろん、Cランクの魔物の納品依頼です!」
初日以降はダークガーデンを使わなかったのであまり倒せませんでしたが、スケルトンさんたちの囮が評価し得てもらえたので、毎日ボーナスとして金貨12枚が追加されていたので今の私は結構なお金持ちなのです。このボーナス分はお皿が分けてあったのですぐにわかりました。
滞在期間は20日くらいだったので今の所持金は・・・えっと・・・・・だいたい8000万園くらいです!
「ついにCランク魔物のアンデッドを造るのね。そうだ、前回ヘンリエッタちゃんが出してくれた依頼の紙がまだ残っているから、これ、参考にしてね。」
サリアさんが前回出した依頼申請書を見せてくれました。
さすがサリアさんです、見事な手際ですね!
「ありがとうございます。それでは、ちょっと待ってください。」
カキカキ
カキカキ
ちょっと変えただけだから簡単にできました。
「これでお願いします。」
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●ご依頼の主な内容
ランクC以上の魔物の死体の納品
●ご依頼人
ヘンリエッタ
●ご依頼の場所
特に指定はありません。
●ご依頼の規模
1体
●ご依頼における報酬
金貨40枚
●ご依頼に関するその他の詳細
スケルトン化可能な死体でお願いします。
スケルトン化した時に、最低限指示を理解できる個体にして下さい。
陸上で活動できない魔物はダメです。
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「あれ?1体でいいの?たしか、クエスト完全攻略の報酬として5000万園くらい出てたよね?」
「え?あ、そうでした。じゃ、じゃぁ。今、いくらくらいあるんだろう?」
私は金貨がざっくり詰まっているはずのアイテムポーチに視線を送りました。
「さっきは聞かないっていったけど、ちょっと奥で数えてみる?」
「えっと、そうさせてもらいます。」
私はサリアさんに連れられてギルドの奥の部屋に行きました。
サリアさんがしきりに戸締りを確認しています。
「大丈夫そうね。それじゃぁ、ちょっと広げてみてもらえるかな?」
「は、はい。」
自分の家でもないのに金貨をたくさん出すのは緊張しますね。
ジャラジャラジャラジャラ
ジャラジャラジャラジャラ
ジャラジャラジャラジャラザザー
「こ、これはすごい光景ね・・・。」
「私も、そう、思います。」
会議用?の広いテーブルなので金貨を落とさずに済みましたが、机の上がキンキラキンです!
キッチリ並べてあった時と比べてとっても多いように見えます!
「じゃぁ、その、数えよっか。10枚ずつ重ねてね。」
「はい。」
1、2、3、4、5、6、7、8、9、10。
1、2、3、4、5、6、7、8、9、10。・・・・・・。
私たちは丁寧に10枚づつ重ねていきました。
「うーん・・・534枚もある・・・・・・。もう冒険者辞めたら?」※だいたい1億3千万園
「えっと、それは、どうなんでしょう?」
「ごめん、やっぱ続けた方がいいわ。お金目当てで変な男が寄ってきそう。」
「ですよね・・・。」
「これだけあればBランク魔物の納品依頼を出せるし、その魔物をアンデッド化してコツコツ貯めれば元は取れる上に、元Bランク魔物のアンデッドという強力な護衛も手に入る。
そのアンデッドがいれば多少の問題は跳ね除けられるしスタンピードが起きても最低限自分の安全だけは確保できるだろうから、結局はヘンリエッタちゃんの安全につながりそうね。
そっか、お金さえあればネクロマンサーって強かったのね。
普通はそのお金が用意出来ないんだけど・・・。」
「ネクロマンサーの魔法って、素材をダメにする魔法ばっかりですからね。私はそうならないスキルがたくさん手に入ったのでたくさん稼げました。」
「・・・・・・たくさん?もしかして、アンデッドが倒されても同じ座標に即時別のアンデッドを再召喚する超凄腕のネクロマンサーを送っていただき大変ありがとうございます。なんていう礼状が届いたんだけど、もしかして、個人スキル増えた?」
「はい、私は何もしていなけど勝手に復活するスキルみたいです。」
「それ!ユニークスキルだから!そんな一般スキルもジョブスキルもないから!!」
「え?ももっももももしかして、勇者様と同じ、あああああの!?」
「そう!あのユニークスキルよ!
あ、やばい、誰にも聞かれていないわよね?
ふぅ、防音対策してある部屋で良かった・・・。
えっとね、詳しいことは聞かないけれど、自分で召喚していることにした方がいいわ。
召喚しているフリも付け加えれば完璧ね。」
「そうですか、わかりました。気をつけます。」
「自動って事は、本当の意味で死なないアンデッドって事よね。かなりすごい力だわ。絶対にバレてはいけない。バレたら戦争に・・・。やっぱり、強力なアンデッドは不可欠だわ。」
「戦争だなんて、大げさすぎませんか?」
「不死身の兵士を量産できるのよ?
いくらでも利用価値があるわ。
適当に敵国に突撃させるだけでも何らかの成果を出せてしまう。
あ、光魔法とかで倒せるならまだ大丈夫ね。」
「冒険者さんたちが弱点の火属性や光属性の攻撃で巻き込んでいたりしましたけれど復活していました。」
「ダメじゃない!何の弱点もないじゃない!
もう、これしかないわ。
たくさん稼いで元Bランク魔物のアンデッドを揃えてヘンリエッタちゃんがBランク以上の冒険者になるの。
Bランク以上になれば国が喜んで頭を下げて優遇してくれるようになるから、ここまで行けば安全だわ。
早速、Bランク魔物の納品依頼を出しましょう。」
「Bランクってそんなにすごいんですか?」
「10人集まればもしかしたら勇者様といい勝負ができる時もあるかもしれないくらいね。」
「勇者様と?それはすごいです!」
「でしょ?
といっても、Bランク魔物なんてそう簡単には見つからないから霧の日待ちね。
創造神様なら、きっとどこかで問題を起こしているBランク魔物を倒したついでに私たちの事情を酌んで納品してくれるはずだわ。
霧の日が過ぎてもダメだったらもっと大きな町で依頼を出しなおせばいいんじゃないかな。
うん、それがいい。」
「わかりました。じゃぁ、急いで書き直しますね。」
私は、Cランクと書いていたところをBランクと書き直し、報酬を金貨400枚にして提出しました。
でも、なんで急ぐ必要があったのでしょうか?
クエスト完全攻略の報酬として5000万園ももらったら多すぎるのではと思ったアナタ!
肝心な事をお忘れでは?
前線押し上げにより新たな土地が確保できるのですが、それは当然それまで防衛していた冒険者たちの功績でもあります。
地位も土地も全部美味しいとこどりをする代わりにお金で解決されているのです。
もちろん、前線押し上げに参加してもそれはそれ、これはこれということで追加で土地や地位をもらえたりはしません。
ちなみに、前線押し上げによって利用可能になる比較的安全なダンジョンの利用権も手に入るのでバードリスは超ホクホクです。




