アッティレイス村
◆◆◆アッティレイス村◆◆◆
「そ、それでは私はこれで!」
私が馬車を降りると、馬車の人が大急ぎで帰っていきました。
無理もありません、すぐそこに魔物の軍勢が押し寄せてきているのですから。
「焼き尽くせ、バーンブラスト!」
「堅牢なる守りの加護を我らに与え給え、ホーリーキャッスル!」
「2匹抜けたぞ!逃がすな!」
「アサシネイトエッジ!」
村の向こう側での激戦の模様が、村の裏手についたばかりの私にも伝わってきます。
「どうしたらいいんだろう?」
この村にいる誰もが戦いに出ているみたいで、パッと見た感じこちら側には誰もいません。
でも、いきなりあっちに混ざるのは怖いので、誰か、いないかなぁ・・。
「おいおい嬢ちゃん。ここは砂場じゃないぜ?」
「え、うわ、いつの間に。」
後ろから声がしたので振り返るとボロボロの服を着た人が立っていました。
「なーんてな、ここに来たんだ。依頼、受けたんだろ?」
「はい、受けました。」
「やっぱりそうか、ま、今は取り込み中でね。
細かいことは後で誰かが教えてくれるから、たった一つだけ!重要な任務を伝える。
いいか?・・・死ぬな!!
どうだ?わかったか?
誰も来たばっかりのやつの戦力なんかアテにしていない。
死なずに生き残れ。
何もしないのは嫌だってんならついでに出来ることをしろ。
それだけだ。
んじゃ、俺は十分休んだし、あっちに戻るわ。」
男の人はすごい速さで魔物のいる方へ走って行きました。
「結局どうしたらいいんだろう?・・・あの高いところに上ってみようかな?」
たしか、やぐらとかいうのが立ててあります。
あの上に登れば、遠くが見えるので、どうしたらいいか分かるかもしれません。
梯子をのぼって上に着くと、先客がいました。
「ああ、新人かい?さっさと降りな。」
どうやら女の人のようです。
「えっと、何をしたらいいのかわからなくて。その、魔法が使えるのでここから撃ったらどうかなって思うのですけど。」
「はぁ、ダメダメ。ここは見晴らしがいいだろう?すぐ敵に狙われるんだ。」
ヒュンッと矢が飛んで来ました。
「こんな風にね。だいたいはウォリウなんだけど、ちょっとだけ違うのが混ざっているんだ。だからお嬢ちゃんには無理さ。下に降りてちょっと遠くに向けて適当に魔法を放った方がマシだよ。」
「えっと、わかりました。」
実は、登ってみたら結構高くて怖かったので丁度良かったです。
えっと、カースは見えていないと使えないし、ダークガーデンは味方に当たっちゃうから危ないよね。
スケルトンさんを敵の近くに呼んで戦ってもらうのがいいと思うけど、結局それは見える所じゃないとダメだよね。
空中に出せたりしないかな?
下に降りたらやってみましょう。
「うーん、さすがにここはやりづらいかも。」
住居が並んでいて、ここから攻撃できれば安全なんだろうけど、やっぱり味方に当たるからみんな敵の近くで戦っているのかな?
「ちょっとだけ、近づいてみよう。ちょっとだけ。」
窓は基本的にこちら側にしか開いていないようです。石でも当てられたら大変ですから仕方ないですよね。
「あ、建物の隙間から向こうがちょっと見えました。まだまだすごい数がいるように見えます。」
私はいったん引っ込んでどうしようか考える事にしました。
まず、空中にスケルトンさんを出せるか調べた方がいいですよね。
ヒュンッ
私がさっき覗いていた辺りを矢が飛んでいきました・・・。
「ここここれ、もしかして、鎧とか着てないと危ないんじゃ・・・。」
兜なんて持ってません・・・。
「えっと、せめて、敵の矢をスケルトンさんたちに受けてもらいましょう。冒険者さんたちが当たるよりはいいですから。」
私は道にスケルトンさんをたくさん配置する事にしました。
飛んでくる矢が1本なので、そんなにたくさんの弓使いがいるわけではないと思うのです。
きっと持って来ている矢もそんなにたくさん・・・なかったらいいなぁ。
魔法やスキルで矢を作る人とかいるらしいので、これはあんまり期待できませんね。
「おい、お前、新人だよな?もしかしてネクロマンサーか?魔獣使いでさすがにこれは無いだろうしネクロマンサーだよな?このスケルトン何体かダメにしてもいいか?」
また誰かがこっちに来ました。ローテーションで休んでいるのでしょうか?
「えっと、はい。いいですけど何に」
「そぉりゃああああああ!」
いきなり私のスケルトンさんを投げてしまいました。
「よし、なかなかいい所に落ちたな。あ、さっきのやつは適当に暴れさせておけよ?」
「あ、はい。」
でも、この距離で指示届くのかな?さっき飛ばされたスケルトンさん、近くにいる魔物と戦ってください。
どうなんだろう?見えないからわかりません。
「はぁぁぁぁぁああああ!」
またスケルトンさんが投げられました。
「えっと、他のスケルトンさんたちも、魔物の近くに行ったら戦ってくださいね。」
「まだまだぁああああああ!」
次々とスケルトンさんたちが投げられていきます。ちょっと補充しようかな。
「お、いいね。まだまだ余力あるみたいじゃん。ガンガン行こうぜ!」
このスケルトン爆撃、役に立っているのでしょうか?なんだか、結構スケルトンさんたちがやられちゃっているみたいなのですが・・・。
「あ、やっべ!ミスった!避けろ!」
「おい!ふざけんなよザン!さっさとこっちこい!」
「へいへい。んじゃ、俺行ってくるわ。お前は無理すんなよ。」
「はい、気を付けます。」
なんだか、騒がしい人でしたね。




