ドブさらい
◆◆◆ドブさらい◆◆◆
私は、2回くらい来たことのある役場に、おぼろげな記憶を頼りにたどり着き、受付のお姉さんに依頼の話をしました。
「ヘンリエッタさんですね。それでは、この地図の…ここはわかりますか?」
役場のすぐ近くだ。さすがの私でもわかります。
「はい、大丈夫です。」
「ここに、溝があるのは知ってるかな?」
「はい、道の…横の方にある所ですよね?」
「うん、それね。そこを掃除してもらうんだけど、ここから…ここまでになるんだけど、大丈夫かな?」
「はい、大丈夫です。がんばります。」
「良かった。道具持ってないよね?ちょっと待ってて。」
お姉さんが奥へ引っ込んでいきました。どんな道具なのかな?
「お待たせ。あんまりいい道具じゃなくてごめんね。」
小さなスコップと大きなスコップを渡されました。
「さらったドロはこの袋に入れてね。たくさんいっぱいになったらボーナスが出るから、がんばってね。」
「はい!」
大きな、なんかゴワゴワした袋を渡されました。おうちにもあったような?
「たぶん、一個じゃ足りないけど、いっぱいあっても邪魔になるから、それがいっぱいになったら持って来てね。それじゃぁ、いってらっしゃい。」
「はい、いってきます。」
ヘンリエッタは、今日初めて一人でおしごとをします。
ドブさらいって、道端のみぞの、汚れたドロを取るおしごとだったんですね。
ザッザッガッ
「うーん、ここの土かたいよう…。」
どろどろのぬめぬめの所はちょっと汚いけど簡単です。
乾いててカチカチのところはたいへんです…。
「そうだ、ネクロマンサーなんだから、スケルトンさん呼べないかな?」
スケルトンさん、スケルトンさん、手伝ってください。
しかし何も起きなかった。
「いけにえとかいるのかなぁ…?」
ギルドに帰ったらおねえさんに聞いてみよう。
「今は、がんばってドロを集めないとね。」
この後、何回か役場を往復して、夕方まで頑張りました。
「あの、ごめんなさい。全部できませんでした…。」
「え、ああ、いいのいいの。そこのエリアが担当ってだけで、報酬は集めたドロの量と、ちゃんと溝のドロがが減っているかで決まるから安心してね。それじゃぁ、現場に行こっか。」
「は、はい!」
よかった。ぜんぜん終わらないから、私にはできないお仕事なんじゃないかなって思っていました。
「ドブさらいはね、どろどろの所の方が簡単にドロが集まるでしょ?」
「はい、カチカチのところはたいへんでした。」
「あはは、だよね。カチカチの所は、ドロもあんまり量が取れないし効率が悪いから、ざっとやるだけの人が多いんだよ。」
「え、あ。そっか。」
「でも、大丈夫。ちゃんと奇麗にしてくれた人にはこっそりご褒美をあげているのです。ヘンリエッタさんは、ちゃーんと奇麗にしてくれましたか?」
「はい!がんばりました!」
「ふふ、それじゃぁ、楽しみだね。っと、ここだね。ふんふん…。なるほど…。」
役場のおねえさんが溝を端から歩いてチェックしています。
「ど、どうでしょうか・・?」
「うん、合格だね。はい、完了札とご褒美の大銅貨。」
役場のおねえさんがポケットから木札と大銅貨を取り出しました。
「今は手が汚れているみたいだし、ここのポケットに入れておいてあげるね。手を洗う所はある?」
「えっと、その…。」
「じゃぁ、役場にまた戻るのも面倒だろうし、ギルドの外で洗わせてもらうといいよ。ぐるっとギルドの外を一回りすればわかるはずだから。」
「わかりました、ありがとうございます。」
えへへ、親切なおねえさんでたすかりました!
暗くなりそうなので急いでギルドに戻り、手を洗えるところを探して使わせてもらいました。
他にも使っている人がいて、ちょっと怖かったです。