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ひと仕事終えました

◆◆◆ひと仕事終えました◆◆◆

「はーいおつかれー。完了報告は俺がやっとくから、報酬は次にギルドに寄った時にでも受け取ってくれ。んじゃぁ、解散!」


ライネルさんがそう言って、みなさんを解散させました。


「腹減ったぜ、飯だ飯。」


「一仕事の後は焼肉っしょ?」


「いこうぜ、いこうぜ!」


みなさんが口々にそう言いながら解散していきます。


「よう、お嬢ちゃん。初めての護衛はどうだった?」


ライネルさんが話しかけてきました。


依頼は終わったのに、まだ気にかけてくれるんですね。


「魔物がどこから出てくるかわかりませんでした。これから私はあんな魔物と戦えるようになれるのでしょうか?」


ちょっとダンジョン村に行って帰ってきただけで何度も戦うことになったのです。戦えなければ町から離れる事も出来ません。


「うーん、まぁ、そうだなぁ。

最低限、雑魚に囲まれても返り討ちに出来るくらいじゃないといつか死ぬぜ。

あとは、強い奴から逃げる方法だな。

逃走用アイテムとか結構売れてるぞ?専門店まであるしな。

お嬢ちゃんは稼ぎ自体は悪くないんだし、保険に何か買っておいたらどうだ?

あ、買っておいたらってので思い出したが、アイテムポーチくらいは持っておいた方がいいぞ。

ポーションとかを普通のカバンに入れていたら攻撃を受けた時に割れてパーだからな。」


「逃走用アイテムなら私にも使えそうですね。アドバイスありがとうございます。」


「いいって事よ。それとだ、ダリスになんでこんな雑魚しか出ない護衛をやってるのか聞いたそうだな?」


「はい、聞きました。」


そういうのは聞いてはいけないことだったのでしょうか?


「あいつらは強い。Eランクのコボルトを無傷であしらえる程だ。そうだよな?」


「はい、聞いたのはそれより前でしたけど、もっと難しい依頼を受けた方が報酬がいいんじゃないかなって思ったんです。」


「それで、ダリスがなんかそれっぽい事言ったんだろうけど、これはそもそも依頼を受ける側の問題なんだ。俺はDランクなんだが、俺が受けるべき依頼もDランクだと思うか?」


「Dランクの人が主に受ける依頼がDランクの依頼という意味ですよね?」


「ほーら、やっぱり間違えている。Dランクならクリアできるだろうと思われているのがDランクの依頼だ。」


「えっと、だからDランクの人が受けるんですよね?何か違うんですか?」


「全然違う。極めて危険な考えだ。

 俺たちDランク程度の人間は万能じゃない。得意不得意くらいはある、そうだろう?

 当然人によって得意分野と苦手分野も違うわけだ。

 そこで問題なのが、依頼の難易度を上げている原因のほとんどは魔物だってことだ。

 出会ってみてすいません苦手でしたじゃ済まない。

 言ってみれば、そこで出てくる魔物も、Dランクに相応しい魔物だってことだ。

 運が悪いとそれ以上に強かったりするがな。

 まぁ、とにかく、戦う魔物がDランク。そして俺もDランクとなるとどうだ?

 もしかしたら俺の勝率は50%くらいしかないんじゃないか?」


「あっ、確かにそうですよね。でも、自分と相性のいい場所や魔物が出る依頼を選べばいいって事ですよね?それなら勝率はぐっと上がると思います。」


ダリーさん達なら森の中での依頼を受けるのが都合がいいってことですね!


「はいざんねん。それが落とし穴なんだよ。Dランクの俺は、Dランクの魔物と戦っちゃダメなんだ。」


「え、そう、なんですか?」


Dランクなのに?Dランクって何なんでしょう?


「まぁ理由は単純な事なんだ。俺たちDランクが、徹底的にDランクの魔物の弱点を突いて勝率を99%まで上げたとする。どうだ?さすがにそれだけ準備すれば大丈夫だって思うだろう?でも違う。足りないんだ。全くもって足りていない。何故だかわかるか?」


「……わかりません。99%で勝てるなら戦ってしまった方が安全だと思います。」


「勝率99%の敵と戦って、20連勝できる確率はたったの8割くらいしかないんだ。

100人がその条件で挑んで、誰一人犠牲者が出ない確率なんて1/3だ。

100人に1人しか犠牲者は出ないが、その1人の犠牲者っていうのは、こんなにも高確率で出てしまうモノなんだ。

その犠牲者が俺かもしれないし、お嬢ちゃんかもしれない。

だから、絶対に戦ってはいけないんだ。」


「そういうことだったんですね。勉強になりました。ありがとうございます。」


「なーに、これも先輩冒険者の役目ってやつだ。そんじゃ、俺は報告があるんでね。」


「ライネルさんは大変ですね。おつかれさまです。」


ライネルさんが背を向けたまま手を振って去っていきました。


私も、今日は帰りますね。



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