兄さんと弟の俺。
初投稿です。
「ほら、置いていくよ。」
貴方はいつだって俺の前を歩いてる。
「待ってよ兄さん。」
いつからだったか。
その大きな背中が時折見せた弱さに、儚さに、心を奪われるようになったのは。
俺の朝は兄さん曰く還暦のおじいちゃんレベルに早いらしい。といっても5時くらいなんだけど、低血圧で布団に引きこもりたがるうちの兄にとっては随分とせっかちに感じるのかもしれない。
朝飯、昼の弁当を用意して洗濯物を回す。
6時半、もうそろそろ起こさないと。あの人下手すると30分くらい起きてこないし。
階段をゆっくり登って一番はじめに現れる階段近くの部屋の扉を開ける。
健やかな寝息が自動的に耳に入り、寝こけている様子が伺えた。
「兄さん。」
布団の膨らみを揺すってみる。
「うぅ…、……スゥ」
「…兄さん。」
布団をめくってみるが取り返されてしまった。
「あと5分……」
「はぁあ…」
仕方ない。禁断の手をつかうか。
「兄さん、起きて。もう8時だよ。あと5分で家を出ないと遅刻しちゃうんだけど…」
「…ふぇ!?遅刻…?」
「おはよう兄さん。」
「…おはよう?」
兄さんは朝が弱い。
大抵兄さんは寝ぼけているので俺が嘘を吐いて起こしたことも覚えていない。
「ほら、ご飯出来てるから早く着替えて顔洗ってきて。」
「うん…」
ぽやぽやしたまま布団を出て洗面所に向かう兄さん。
俺がいなくなったらこの人生きていけないんじゃないか。
今日この頃弟は兄さんの行く末が心配だ。
第1話 兄と弟。