公式掲示板 後編
505:名無しの来訪者さん@神魔決戦開催中!
通常戦勝ててない勢だけど、
特別戦はどんな感じ?
506:名無しの来訪者さん@神魔決戦開催中!
相手次第としか
507:名無しの来訪者さん@神魔決戦開催中!
どう立ち回るのが正解なんだろうなぁ、特別戦
神・魔でもステアップの傾向違うんでしょ?
508:名無しの来訪者さん@神魔決戦開催中!
相手に回復なしなら撃破狙い
ありならスコア重視、あるいはタイムアップ狙いがいいかと
509:名無しの来訪者さん@神魔決戦開催中!
タイムアップでもらえるスコアも結構多いんだよな……
510:名無しの来訪者さん@神魔決戦開催中!
魔界幹部は攻撃・デバフスキルの追加多め
神界幹部は回復・バフスキルの追加多めって噂も
511:名無しの来訪者さん@神魔決戦開催中!
多分だけど、
参照元の継承スキルの傾向がそうなんだろうなぁと
全部イベント専用のオリジナルスキルとか、
そういう無駄なことはしないと思うし
512:名無しの来訪者さん@神魔決戦開催中!
結局、元職に回復があれば関係ないし
高ステ・自己回復持ちになる武闘家(気功型)が幹部だと凶悪
パーティなしの一人補正込みだと更にカッチカチ、安定感がヤバイ
513:名無しの来訪者さん@神魔決戦開催中!
ボッチのほうが安定するとか、俺かな?
俺かな……
514:名無しの来訪者さん@神魔決戦開催中!
涙拭けよ
515:名無しの来訪者さん@神魔決戦開催中!
悲しいなぁ
516:名無しの来訪者さん@神魔決戦開催中!
そもそも通常戦で連勝できないんですが!
スペシャルマッチ出ないんですが!
517:名無しの来訪者さん@神魔決戦開催中!
ちゃんと内部レートがあるらしいから、
勝てない人は我慢して連敗しようか
少ししたら適正な対戦相手が来るよ
518:名無しの来訪者さん@神魔決戦開催中!
普通に苦行じゃないか……
519:名無しの来訪者さん@神魔決戦開催中!
負けてもそれなりにポイント付くんだから頑張れ
520:名無しの来訪者さん@神魔決戦開催中!
そもそも対人戦が苦行なんやが
521:名無しの来訪者さん@神魔決戦開催中!
対NPCモードでもやればいいんじゃない?
そっちはポイント少ないし、
それやるなら一人でオフゲやってればって思うけど
522:名無しの来訪者さん@神魔決戦開催中!
対人戦は好きじゃないけど、同じ話題では盛り上がりたいんよ
そういうオンゲの楽しみ方じゃいかんのか?
523:521です
そっか、俺の見方が狭かった
言葉の選び方も悪かったね、ごめんね
524:名無しの来訪者さん@神魔決戦開催中!
いいんやで
こっちも対人戦好きの人に水差すようなこと言ってごめんやで
525:名無しの来訪者さん@神魔決戦開催中!
やさしい世界
「……駄目だ。わかっちゃいたけど、一般プレイヤー側の話ばっかりだ」
「うむ。幹部サイドの私たちとしては、これでは参考にならんな!」
「そうだな」
「かー! 選ばれし幹部だからなー! 仕方ないなー!」
「……」
俺たち、幹部選考である予備戦には参加していないんだけどな……。
イベントトリガーを引いた特典で幹部になっただけだし。
それはそれで特殊だが、少なくとも強さで選ばれたわけではない。
気分が良さそうなので、あえて指摘はしないが。
「しかし本当に見づらいな! この掲示板!」
「まあな。早いとこ改善してほしいよな」
「だが、いつもの掲示板よりみんな自制が利いていていいと思った!」
「あー、確かにな」
ユーミルの言うように、公式掲示板の書き込み内容は……端的に表現するなら、行儀がいい。
外部サイトへの書き込みと違い、暴言などにはゲームアカウントの停止措置があるせいだろう。
書き込み内容によっては一発で永久停止もあるとかないとか。
「ルールが緩いところは尖った意見や本音が聞けるけど、場が荒れやすいものな」
「止まり木のチビたちには、こっちを使わせたいな!」
「違いない」
ほんわか傾向ということで、低年齢プレイヤーの利用に向いている。
他にも公式掲示板では質問スレ、初心者スレへの書き込みが活発だったはず。
質問スレでは、運営の中の人が答えてくれることがあるとかないとか……これまであまり使われていなかったせいか、噂レベルの情報が多いのだ。
「……そうか。今回の場合、掲示板に情報を求めるのがそもそもの間違いか」
「む?」
ユーミルと話しているうちに、とある考えが自分の中で浮かんできた。
今回のイベント、大多数のプレイヤーは陣営幹部ではないのだ。
当たり前のことだが。
「情報は適切な場で集めないとな」
「むむ?」
「つまりだ。共通ロビーで、他の幹部プレイヤーに話を聞きにいくのはどうだろう?」
「おお! ……お?」
その手があったか! という顔をした直後。
ユーミルは眉根を寄せて腕を組む。顎に手を添える。
「それ、素直に話してくれるのか?」
「状況次第だと思う」
「む?」
個人順位に拘っている人は難しいだろう。
進んで他人が有利になる内容を話したがるとは思えない。
それと、フィリアちゃんやセレーネさんのように、そもそもあまり他人と話したがらない人もいる。
だが、勢力勝ちを狙っている人や話し好きの人を選べば……。
「よくわからんが、勝算があるなら行くか! ハインド!」
「行くかって、付き合ってくれんの? お前、今のままでも高順位じゃん。十分ハイペースじゃん」
ランキングは最高成績から算出、数戦程度の平均値で算出など、それぞれ条件が違うが……。
もちろん、累計ポイントというものもある。
だから現状でも高ポイントを稼げているユーミルは、とにかくイベントをやりまくる! というのも悪くないはずだが。
「当たり前のことを訊くな! お前が行く場所が、私の目指す場所だ!」
「格好いいこと言っているけど、そんなに大袈裟な話じゃないからな」
大事な決意表明の後に言ってくれたら感涙ものだが、今だとあんまり。
なにせ、目指す場所はイベント専用・共有ロビーだ。
なんの準備も気合も要りはしない。
……しかしまあ、せっかく一緒に来てくれると言っているのだ。
「それじゃ、休憩を兼ねてロビーに行きますか……他の幹部プレイヤーから話を聞こう」
「うむ! 魔王軍、にこにこ幹部交流会だな!」
「魔王軍で、にこにこ……すげえ字面だ。魔王軍幹部って、仲が悪いイメージないか?」
「では、ギスギス幹部交流会か?」
「それは嫌だな。自分で言っといてなんだけど」
もっとも、共有ロビーさえもRPP査定の対象になるなら話は別かもしれないが。
強気だったり、口調が荒めのほうが有利な傾向にあるからなぁ、魔王軍幹部のロールプレイ。
そんな調子で、ほとんど初対面の人たちとの会話か。
……。
軽く想像してみたが、まともな会話の成立が難しくなりそうだ。
今の仕様のままでいいな、うん。
景色が変わって、数秒後。
俺たちは『魔王城・玉座の間』――イベント共有ロビーの片隅に立っていた。
「うわ、あの後ろ姿は……」
玉座の近くに見慣れた背中を見つけ、ユーミルがちょっと嫌そうな顔をする。
他人のふりを決め込み、周囲を見回し始める。
なんで玉座の横で這いつくばっているんだ、あのエセ忍者……。
「さて、話をしてくれそうな人は……」
俺もユーミルに倣い、同じようにロビー内の状況の確認に移る。
うーん、ざっと三十人くらいか? 夜間の浅い時刻だからか、これでも人は多いほうだ。
共有ロビーには、トビのように魔王ちゃん目当ての幹部プレイヤーが何人もいる。
中には交流・話し好きのプレイヤーもいるだろうから、会話に応じてもらうこと自体は難しくないと思う。
問題はどの種類のプレイヤーなのか、どうやって見極めるかだ。
すでに動き出しているユーミルのように、片っ端から話しかけるのもいいが……。
「!」
「!!」
不意にロビーの扉が開き、ロビー内のプレイヤーが一斉にそちらを見る。
あの扉、以前触れたようにプレイヤーは開けることができない仕様だ。
共有ロビーを経由して魔王城の他の場所に侵入することはできない。
つまり、あそこを通れる者は――。
「皆のもの、頑張っているか!? 我が労いに来てやったぞ!」
魔王城に棲む者だけだ。
一部プレイヤーが待ちかねていた魔王ちゃんの登場に、ロビー内の空気が一変する。
これは……どうなんだ? 上手く状況を利用すれば、一気に情報を集められるか?