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公式掲示板 前編

481:名無しの来訪者さん@神魔決戦開催中!

なんで!? なんで勢力ゲージが拮抗してるの!?


482:名無しの来訪者さん@神魔決戦開催中!

予備戦ではあんなに魔界優勢だったのに……


483:名無しの来訪者さん@神魔決戦開催中!

このコメントはガイドラインに則り、削除されました




「む? ハインド、なにを見ている?」


 メニュー画面を開いたまま、動きの少ない俺を不審に思ったらしい。

 剣の素振りを止めたユーミルが声をかけてくる。

 俺は画面を共有モードに変えると、ユーミルに向けて放り投げた。

 百聞は一見に如かず、ということで。


「くあ……」


 手が空いた俺は、こらえきれずに欠伸(あくび)()らした。

 ついでに近場の岩に腰を下ろす。

 ひよりちゃんたちを無事に家に帰して、少し気が抜けたのかもしれない。

 彼女らは昼過ぎくらいに、一番遅い子でも夕方になる前には帰っていった。

 今夜は多分、誰もログインしてこないだろうなぁ。

 泊まりという無茶なことになった分、今夜は親御さんと一緒にいて安心させないとだしな。

 しかしこのイベント異空間の岩、座るのにちょうどいい形をしている。


「……これは、掲示板か?」


 視線を上下させていたユーミルがこちらを向く。

 疑問形なのは、俺たちが普段よく見ている掲示板と違うからだろう。


「それ、ゲーム公式の掲示板だよ。ちょっと見づらいよな」

「ほう! ……って、ゲーム内で掲示板って、前から見られたか?」

「いや、この前のアプデから。掲示板自体は初期からあるけどな」


 アプデで簡易的かつ限定的なものだが、ゲーム内ブラウジングの機能が追加された。

 閲覧可能なのはゲームの公式ページ、ヘルプページ、そして公式が提供している掲示板だ。

 それから一部、提携していると思われる外部サイトも閲覧できる。数は少ないが。


「ああ! このところ、トビが頻繁に立ち止まってニヤついているのは……」

「これを見ているからだろうな。魔王ちゃんスレかな?」

「うむ、現実のあいつと変わらんな! セッちゃんが怖々と画面を見たり見なかったりは……」

「自分のことに関する書き込みを見つけちゃったんだろうなぁ……」

「うむ! 多分だが、現実のセッちゃんと――」

「やめたげて」


 俺もそう思うが、最後まで言わないであげてほしい。

 エゴサしているわけではないのに、運が悪いというか間が悪いというか。

 セレーネさん、そういうところあるよなぁ。


「それでまぁ、この掲示板。色々と問題があるんだが……」

「例えば? 文字の縮尺がおかしいとか、ページを戻しただけで表示がクラッシュするとかか?」

「あー、昔のゲーム機だとそんなのあったな。すごい脆弱(ぜいじゃく)だった」


 ユーミルが言っているのは、ネットワーク接続できるゲーム機が出始めた頃の話だ。

 あれを使ってネットサーフィンしていた人はいるのだろうか?

 今はどのゲーム機も――もちろんこのVRデバイスでも安定しているし、機器によってはPCよりも動画等の閲覧に適している。

 ただ、それとこの公式掲示板の使いにくさは別の話だ。


「さっきも言ったけど、この掲示板。配置かフォントか原因はわからないけど、なんか見づらいんだよ」

「IⅮもないしな! 個人の識別にはコテハン必須か?」

「かもな。で、NGワードが多くてコメントが消されやすい。特に卑語には厳しい」

「子どもも簡単に見られるからだろうな!」


 簡単なNGワードは、書き込む前の段階で弾かれるらしい。

 アプデ直後はNGワードを避けて、同じ意味になるよう書き込むのが流行っていたようだが……。

 それもAIの学習機能で、少しすると消されているようだ。

 いくつか免れているものも散見されるが、それらも時間の問題だろう。


「うん、正解。そんな公式掲示板は使いづらい見づらいで、これまであまり使われていなかったんだな。でも、ゲーム内から閲覧・書き込みができるようになったことで――」

「一気に利用者が増大したわけか! 今のイベント、マッチング待ちもあってちょうどいいし!」

「大正解。今日は()えているな」

「えっへん!」


 割合興味のある分野の話だったからか、いつになくユーミルの理解がスムーズだ。

 普段からこうだと俺やリィズが助かるんだけどな。


「ハインド! せっかくだから、このまま一緒に掲示板を見よう! マッチングは一時中断!」


 ユーミルは自分のメニュー画面を指で操作すると、俺が渡した掲示板の画面を持って突っ込んでくる。

 マッチングを止めてまでやることではないと思うけれど。

 ――って、近い近い!


「お、おい。自分のメニュー画面で見ろって」

「嫌だ! くっつかせろ!」

「火の玉ストレートやめろ! 反応に困る!」

「そう言いつつ、きっちり隣のスペースを開けるハインドなのだった。最高だな!」

「ぐっ……はぁ。もうさっさと座れよ」


 なにを言っても勝てない流れなので、観念して隣に呼び込む。

 ユーミルは嬉々(きき)として肩が触れる距離に座ると、見やすいようメニュー画面を真ん中に設置した。

 せっかくだから、他のプレイヤーのイベント進捗(しんちょく)を確認しておくか……。


 


484:名無しの来訪者さん@神魔決戦開催中!

おかしいな?

魔界優勢と見て、本戦は魔界に乗り換えたんだが?


485:名無しの来訪者さん@神魔決戦開催中!

このコメントはガイドラインに則り、削除されました


486:名無しの来訪者さん@神魔決戦開催中!

そうだね、女神様が悪いね


487:名無しの来訪者さん@神魔決戦開催中!

このコメントはガイドラインに則り、削除されました


488:名無しの来訪者さん@神魔決戦開催中!

お前らひどいな!


489:名無しの来訪者さん@神魔決戦開催中!

ちょっと笑ったけど、某匿名掲示板みたいなノリはやめたまえ


490:名無しの来訪者さん@神魔決戦開催中!

ようやるわ

垢BAN怖くないんか? 公式掲示板やぞ?


491:名無しの来訪者さん@神魔決戦開催中!

○○に悪い女神様はアカンわ

あれ? もしかしてこれもアウト?


492:名無しの来訪者さん@神魔決戦開催中!

グレーゾーンっぽいのはやめたほうがいいかもね

念のため


493:名無しの来訪者さん@神魔決戦開催中!

そんな! こんなにNGワードだらけで、

一体なにを話せって言うんだ!


494:名無しの来訪者さん@神魔決戦開催中!

猥談が基本なのは人として駄目でしょ……


495:名無しの来訪者さん@神魔決戦開催中!

普通に攻略情報を話しなさい


496:名無しの来訪者さん@神魔決戦開催中!

健全! この掲示板は健全な場です!


497:名無しの来訪者さん@神魔決戦開催中!

ゲームのキャラデザが健全じゃないんだよなぁ


498:名無しの来訪者さん@神魔決戦開催中!

女神推し勢が思ったよりも多いな

あんなに魔王ちゃん魔王ちゃん言ってたのに


499:名無しの来訪者さん@神魔決戦開催中!

つっても勢力報酬なんて微々たるもんだろ

個人報酬だけしっかり8000ポイント目指せ


500:名無しの来訪者さん@神魔決戦開催中!

幹部になれば影響大きいよ?

勝てば豪華で、負けると微妙


501:名無しの来訪者さん@神魔決戦開催中!

ほとんどのプレイヤーは幹部じゃない定期


502:名無しの来訪者さん@神魔決戦開催中!

大体、あんな恥ずかしいロールプレイ嫌だわ!

俺なら頼まれたって……嘘ですごめんなさい

予備戦で勝てなかっただけです




「……俺ら、恥ずかしいってよ」

「私は恥ずかしくないが?」

「あ、そう……」


 書き込みに乗じ、二重の意味での言葉をかけるも堂々と言い返されてしまった。

 距離を取る気はないらしい。

 それと、こういうところがイベントのポイント差に繋がっているのだろうな……。

 しかし、どうせならもう少し攻略に役立つ書き込みが欲しいところだ。

 なにかいい書き込みはないだろうか?

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― 新着の感想 ―
[良い点] 女神様という巨乳テコ入れによって魔王ちゃん勢力が拮抗され始めた件について みんな性欲に正直だなぁ… そして公式掲示板がゲーム内から出来るようにアップデート NGワード多すぎるとはいえゲー…
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