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VRMMOの支援職人 ~トッププレイヤーの仕掛人~  作者: 二階堂風都
継承スキルと大勢力の台頭

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旧友の動画 前編

 部屋に戻ると、ゲームを再開すると宣言した秀平の姿はベッド上にはなく……。

 テーブルの前でタブレッドPCを見ながら難しい顔をしていた。


「どうした? 秀平。ゲームの続きをやるんじゃなかったのか?」

「わっち。いやね、ログインする前にTB関連の動画を見ていたんだけど……」


 話しながら、俺は秀平の目の前に先程購入したジュースを置いた。

 続けて未祐、理世によってテーブルに同じジュースが置かれる。

 それに秀平は一本目で嬉しそうな顔になり、二本目で驚いた顔になり、三本目で最終的に怪訝(けげん)な顔になった。


「なにこれ? くれ……るんだよね? 三本も?」

「うむ。今すぐ飲め、一気に飲め」

「ええ。五秒で全て飲み干しなさい」

「拷問!? 量がおかしいし、炭酸ジュースなんだけど!? これ!」


 未祐と理世が秀平に無体な要求をしているが、それでは意図が伝わらないというか。

 そもそも伝える気はないというか。

 俺が言うのもなんだが、面倒なやつらだなぁ。


「えっと、わっち?」


 (きゅう)した秀平がこちらに助けを求めてくる。

 ……まぁ、素直に伝えたら伝えたで、未祐と理世に(にら)まれそうだしな。


「あー、うん……ひとまず冷蔵庫に入れておくよ。後で飲んでくれ、三本ともな」

「おお、よくわかんないけどサンキュー!」


 ラッキー、と上機嫌でつぶやく秀平。

 そしてジュースを手に冷蔵庫に向かう俺の背中には、様子を見守っていた面々からの妙に生暖かい視線が刺さっている。

 ……空気を変えたいところだな、ここは。


「で、秀平。動画ってなにを見ていたんだ? チラッと見えたが、いつもの魔王ちゃん動画じゃなかったよな?」

「――あ、そうそう。ちょっと、みんなこれ見て!」


 ジュースを部屋備え付けの冷蔵庫にしまい、反転。

 すると、秀平の声に従いみんな集まっていた。

 未祐に手招きされたので、横に並んで画面を覗きこむ。

 ……。


「狭っ!? しかも全員、風呂上がりなせいで暑苦しいっ!」

「当たり前だろ、そんな小さなタブレットPCじゃ……」


 画面が小さければ自然と、密集することになる。

 和紗さんや椿ちゃんは、こうなることを予想して最初から離れているが。

 ……あれ? そういえば、愛衣ちゃんも近くにいないな。

 どこに行った?


「ほうほう、これが先輩の腹巻……」

「なにしてんの!?」


 室内を捜してみると、俺がベッドの上に出しっぱなしだった腹巻を()めつ(すが)めつしていた。

 やがて、愛衣ちゃんは一つ頷くと……。

 腹巻を頭からずぼっと被り、そのまま服の上からお腹へ。

 それから妙にリラックスした顔で、ベッドの中へと潜り込んだ。


「おやすみなさい……」

「待って!? おかしい、おかしいって!」

「えー。どこがですかー?」

「どこもかしこも! ツッコミどころが多くて、間に合わないんだよ!」

「そうですかー。では、おやすみなさい……」

「だからぁ!」


 今は昼寝というには遅い時間だし、寝不足という話も聞いていない。

 このタイミングで寝ようとするのは、単純に体に悪い。

 愛衣ちゃんを止めようと、小春ちゃんと椿ちゃんもベッドの傍に近寄ってくる。


「……あれ?」


 が、目を閉じていた愛衣ちゃんが自ら起き上がる。

 あの眠りに対して一切の妥協がない愛衣ちゃんが、自分から!?

 俺たちが驚いていると、起き上がった愛衣ちゃんが掛け布団をめくる。


「甘いですよ、愛衣さん」


 いつの間に移動したのか、なんと布団の中から理世が現れた。

 予期せぬ登場に、さすがの愛衣ちゃんも固まっている。


「兄さんのベッドに私あり、私あるところに兄さんのベッドありです。旅先でもそれは変わりません」

「……そうなのですか?」

「そ、そんな事実はないけどね?」


 まるで俺が普段から理世に添い寝を頼んでいるかのような言い方だ。

 そしてやけに椿ちゃんの目が冷たい。

 こんな顔をする子だったかなぁ……?


「なんですか、この抱き心地が悪そうな抱き枕は……せっかくいい感じの腹巻を着けたのに、これじゃープラマイゼロなんですけど」


 愛衣ちゃんの快眠評価値が下がった。

 連動して眠気も引いたのか、溜め息を吐いて頭を振る。

 ついでに理世から距離を取る。


「あなたを一晩中、泣くまで罵倒し続けるお得な機能も付いていますよ」

「嫌だなー……全然得じゃないし。一部の特殊な趣味の人は喜びそうですけど」

「嫌ならこのベッドから出なさい、今すぐに。ここは私と兄さんのベッドです」

「違うからな?」


 もっと言うなら俺のベッドでもない。

 そこを使用しているのは確かだが、ホテルのベッドを借りているだけだから。

 小春ちゃんが手を貸し、愛衣ちゃんをベッドから立たせる。


「愛衣ちゃん、そんなにいいの? その、亘先輩のおしゃれ腹巻さん」

「うん。エポックメイキング」

「え? えぽ……?」

「私、今まで睡眠グッズの中で腹巻は必須と思っていなかったんだけど……帰ったらすぐ追加しよー、って思うくらいには革命が起きたねー。このくるっと包まれている安心感。気分はまるでー……大事に大事に育てられている松の木かな、うん。あれは害虫駆除用らしいけど。それと、冬の掛け布団は少し重めが安眠にいいのは常識だけど、衣服にも同じことがいえる場合があるなーって。あ、腹巻は夏場の冷え防止にもいいのか。薄着になりやすいから、いつの間にかお腹が出ちゃっていることってあるもんねー。結論、お腹があったかいのって素晴らしい。素晴らしいんだよ、小春」

「そ、そっかぁ? 松の木……」


 愛衣ちゃんが今までに見たことがないくらい、早口かつ雄弁に腹巻の良さを語る。

 おそらく、その熱意の十分の一も小春ちゃんには伝わっていないが。

 一方の俺は、うんうんと頷きたくなるのを堪えている状態だ。

 ダメでしょう、人のものを勝手に使っちゃ。


「……なにしてんだろう、わっちたち」


 話の流れをまるっきり断たれたせいで、秀平が困っているようだ。

 旅行開始から数日、みんないい意味でも悪い意味でもリラックスしすぎである。

 やり取りがグダグダになるのもやむなしか。

 体を休めるという意味ではこの上なく正解だし、緩い空気が形成されているのも正解なのだろう。多分。


「というか、見ていないでお前はさっさと動画とやらを再生しろ! 早く!」

「そうですわ! 待っているんですのよ!」

「いや、もう動画の驚きとか、早く見せたいとか、そういうの引っ込んじゃったんだけど……」


 正直、またも秀平には申し訳ないことをした。

 俺が我慢できれば、愛衣ちゃんが俺の腹巻を着けて眠るだけで済んだはずだ。

 ……それはそれでいいのか? という気もするけれど。

 テーブルの傍に戻ると、タブレットPCを置いた秀平が顔を上げる。


「――どうしたらいい? わっち」

「……とりあえず、いつも通り中学生ズの部屋に行こう。あそこが一番広いし、確か大型のテレビもあっただろう? 外部入力可能なやつ」

「あー、あったね。ってことは?」

「ああ。そこでタブレットから映像を送ろう……とにかく、この部屋は駄目だ。移動だ、移動」


 ジュース購入からの流れで来てしまったが、男の部屋に女性陣を入れている状態はまずい。

 やはり、保護者軍団が出入りするヒナ鳥部屋が集まるのに最適だろう。


「えー。いいじゃないですかー、もう少し」

「駄目! 一旦解散!」


 愛衣ちゃんは明らかになにか面白いものがないかと、主に俺の荷物を中心に探るような目である。

 下手に自室などに招くと大変なことになるタイプだ、この子……。


「仕方ないなー……そんじゃ、移動しますかー。小春、行こー」

「そうだね。椿ちゃんも」

「あ、うん。部屋の片付けもありますし、一足先に戻りますね。亘先輩」

「ごめんね。頼むよ……って!? 待って待って! 愛衣ちゃん、俺の腹巻!」


 危うく愛衣ちゃんに腹巻を持ち去られ――もとい、着け去られるところだった。

 どれだけ気に入ったの、その腹巻……。




 途中マリーから、ホテル内にある会議室の使用なども勧められたが……。

 さすがにそこまで大袈裟(おおげさ)にしたくないと、秀平が断ったのだった。気持ちはわかる。

 プロジェクターでゲーム動画を見る……。

 その行為は贅沢(ぜいたく)であると同時に、どこか気が引ける類のものだ。


「よし、こっちはいいぞ」


 というわけで、結局ヒナ鳥&保護者ルームの大部屋で動画を再生する運びとなった。

 無線のローカルネットワークでタブレットPCと同期させ、モニターに動画を映しだす。

 モニター側は俺が設定したので、後は秀平がタブレットPCを操作すれば準備完了だ。


「大丈夫ですかー? 秀平先輩。間違って変な動画とか流したら、もう旅行中女性陣と口利けませんよ? このタブレットPCはクリーンですか? 閲覧履歴は? 変なサイトに繋いだりしていませんかー?」


 愛衣ちゃんのからかっているのか警告しているのか微妙な問いに……。

 その場の半数はよくわからないという顔をし、半数は気まずそうな顔や苦笑を漏らした。

 そして当の秀平は――


「……待って。一応確認を……」

「するのかよ」


 ――同期を完了させる前に、慌ててタブレットの操作を始めた。

 あ……っと。

 まだなにも言ってはいないが、待つのが嫌いな未祐とマリーが更にイライラする気配。

 機先を制して声を上げる。


「秀平、結局どういう動画なんだ? もう勿体ぶらずに、先に内容を言ってくれ。ざっくりでいいからさ」


 間に合った。

 秀平も二人から発せられるピリピリした空気を感じ取ったのか、タブレットの操作を続けつつ答える。


「ああ、うん。メディウスの……っていうか、TBの現環境全般に関係あるものになるんだけど。メディウスの動画には違いなくって……うーん……」

「微妙な言い回しだな」

「規模がでかい話でさ。会ったことのある俺らだけじゃなく、他のプレイヤーにまで影響ありそうな内容だったから……それでみんなに見せたくって」

「へえ?」


 操作が終わったのか、秀平がタブレットをテーブルに置く。

 同時に、大手動画サイトに投稿された映像が流れ始め……。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] > タブレッドPCを見ながら タブレッ "ト" の誤りです。(2 行目のみ。他はタブレットになっている)
[一言] 900話おめでとうございます 大台の1000話も見えてきましたね
[良い点] 900話到達、おめでとうございます! [気になる点] メディウスの動画の内容。 [一言] 新キャラの快進撃が続く展開。渡り鳥の巻き返しに期待してます。
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