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VRMMOの支援職人 ~トッププレイヤーの仕掛人~  作者: 二階堂風都
至高のお布団

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争奪戦・アリンガ岬 その7 疾走と競り合い

 馬を連れて来ていないプレイヤーたちが機を窺う中、ガーデンと俺たち以外の馬持ちも一斉に動き出す。

 百近い馬の足音が同時に鳴り響き、魔法の詠唱がそこかしこで開始される。


「おっ、おっ? ハインド殿、これは……」

「ああ。どうやら、見られていたみたいだな……」


 先だってユーミルたちの近くにいた集団も、一部の単に見たいだけのプレイヤーを除いて、攻略のヒントにするために観察していたらしい。

 グラドタークの健脚を用いて他プレイヤーからの魔法を簡単に躱しながら、ユーミルが小さく唸る。


「むう……腐ってもランカー常連だからな、私たちは!」

「自分からそういうことを言うなよ。悲しくなるだろうが……」


 ランクインを狙っていないこともあるが、それ以上に今回の攻略は今一つだからな……。

 動きが悪いとあって、一度は視線が散ったように思えていたのだが。

 ユーミルが一つ前の金林檎を速攻でゲットしたこともあり、再び注目されてしまっていたらしい。


「な、何よあんたたち。もしかしたら、私たちが見られていたのかもしれないじゃない? 一応、複数回イベントでランクインしているわよ? 私たちも!」

「ローゼ」


 気が付くと、ローゼが近くまで馬を寄せてきていた。

 まだ全力じゃないとはいえ駿馬・名馬揃いのこらちの速度についてくるとは、やるじゃないか。

 攻撃の意志はないらしい――少なくとも、現段階では。

 しかし、ガーデンが見られていた可能性か……俺がそれについて考えていると、ユーミルが即座に答える。


「それはないだろう」

「な、何でよ!? もしかしてあんた、人気者だからって調子に乗ってる?」

「む……いや、自意識過剰そういうことではなくてだな? ……は、ハインドー?」


 言葉に詰まり、助けを求めてくるユーミル。

 もうそんなに話をしている暇はないのだが……仕方ない。


「ローゼたち、ギルドのゴタゴタでイベント参加が半端だった期間があるだろう? 単純にその差だって言いたいんだよ、こいつは。リヒトとローゼが特に目立っていた序盤の……闘技大会の頃からゲームをやっているような古参なら、勿論知っているだろうけど――先に行くぞ、ユーミル!」


 何にしても、シエスタちゃんのために道を作っておかなければならない。

 止まり木を中心とした妨害・突破部隊にバフをかけながら、グラドタークを追随させる。

 すると、それほど距離を空ける前に二人の声が耳に届く。


「そういうことなら、ここであんたたちに勝って高らかに宣言させてもらうわ! ギルド・ガーデンここにありってね!」

「どうしてそうなる!?」

「それこそ、闘技大会のリベンジよ! 受けなさい!」

「……ふん、だったらかかってくるがいい! また返り討ちにしてやる!」

「あのぉ……勝手に張り合うのは結構ですけどー。できれば私を巻き込まないでくださ――あぶなっ、あぶなぁっ!」


 二人が馬上で剣を合わせた拍子に、ユーミルの腰にしがみついているシエスタちゃんが体勢を崩しそうになる。

 うーん……いよいよとなったらあちらにも増援を送り込むつもりだが、今はこのままでいいか。

 ユーミルがローゼにそう簡単に負けるはずがないし、邪魔をしたら怒るだろうからな。


「あはははは! いいザマね、シエスタ!」

「アラウダ……快適そうだから、そっちに乗っていい?」

「!? い、嫌よ! 対戦中の相手の馬に同乗だなんて、あんたどういう神経してんの!?」

「だってぇ……」


 進行方向が同じグループへの妨害は、後回しにされる傾向がある。

 どうしてかというと、進路上のプレイヤーの排除のほうがより優先されるからだ。

 馬を持っていない、持っていても一線級の馬には程遠いプレイヤーというのは意外と多く……。

 そういったプレイヤーたちは、自分の土俵で勝負すべく必死に落馬を狙ってくる。


「って、そういうアラウダだって攻撃してこないけど……なんで?」

「そ、それは……」

「……馬の移動で手一杯、とか?」

「は、はあ!? な、何のことかしら!?」


 このフィールドは崖こそあるものの、広さは十分。

 馬を使って精霊を追うのには適している……繰り返しになるが、崖の近く以外は。

 ガーデンのメンバーが容赦なく、崖近くのプレイヤーを遠距離攻撃で吹っ飛ばしては崖下に落としていく。

 え、えぐい……。

 別に駄目な行動ではないが、少しの躊躇ちゅうちょもないのはどうなのだろう?


「なるほどなー。初心者だもんね?」

「だ、だから知らな――」

「名馬……じゃなくて、駿馬かなぁ? アラウダ、リアルでは運動神経が良かったよーな記憶がうっすら、うっっっすらあるけど」

「何でそこ強調すんのよ!? ぶっ飛ばすわよ!」

「できるんならどーぞ。要は、アラウダ……その馬のスピードを持て余しちゃっているんだ?」

「……前々から思っていたけど。あんたのその察しの良さ、大っ嫌いよ!」


 ……騒がしいな、戦闘中だというのに会話が全部丸聞こえだ。

 そんな二人の会話の最中にも、進路上のプレイヤーの掃討は進む。

 遠距離攻撃のエース・セレーネさんが、『ブラストアロー』で大量のプレイヤーを吹き飛ばす。

 それを見たパストラルさんが指を差して声を張る。


「セレーネさん、お見事です! 子どもたち、突撃よ! 暴れてきなさい!」

「「「わー!」」」

「ハインドさん、道ができます! 行ってください!」

「ありがとう、パストラルさん!」


 金林檎を付けた樹木精霊が見えた!

 ユーミルに合図を送り、シエスタちゃんを連れていくよう指示を出す。


「待ちなさい、ユーミル!」

「くっ……邪魔だ、ローゼ!」


 しかし、ローゼがそれを許さない。

 俺がシエスタちゃんだけを回収するべきかどうか、迷っていると……。


「ローゼ、今行く!」

「リヒト様!? し、親衛隊、突撃-っ!」

「……!!」


 リヒトを中心とした少数部隊が、こちら目がけて馬を走らせてくるのが見えた。

 こちらも既にぶつかり合っている止まり木を除いたメンバーが集まり、陣形を組む。

 あれ、トビがいない……? 集団に飲まれたか?

 とはいえ、捜している時間は与えてくれそうにない。


「ハインドさんっ!」

「ハインド先輩っ!」

「……よし、各自二人の援護を。ユーミル!」

「むっ!?」


 鋭く呼びかけると、シエスタちゃんがユーミルの腰をトントンと叩く。

 それらによってイベントの趣旨を思い出したユーミルは、片側に強く手綱を引いた後にそれを放し、両手で剣を構える。


「えっ、ちょ、ユーミル先輩!? 怖い怖い!」


 シエスタちゃんが珍しく大きな声を出す中、ユーミルは答えずに剣を……鋭く突いた!

 グラドタークとローゼの乗る馬が激しくぶつかり合い――結果、一方的にローゼとその乗馬が転倒する。

 馬よりもかなり遠くにローゼが飛んだことを見るに、しっかりとユーミルが放った突きはヒットしたようだ。


「――終わりだ、ローゼ! そこで寝ているがいいっ!」

「ユーミルぅぅぅっ!!」


 ずっと一線で戦ってきたプレイヤーと、そうでないプレイヤーとでくっきり明暗が分かれた形だった。

 悔しそうなローゼの声を聞いて少し気の毒には思うものの……アラウダちゃんの金林檎の取得数は既に2個。対するシエスタちゃんは0個。

 ここは何としても、シエスタちゃんに金林檎を取らせなければならない。


「ローゼ!? よくもっ!」


 リヒトが接近してくる気配。

 ユーミルなら、同じように一蹴できるだろうと思っていたのだが……。


「こっち!? うおおっ!?」


 何故かリヒトは俺に斬りかかってきた。

 こいつ、何気にさっきのお説教を根に持っていないか!?

 普段からユーミルの斬撃を見ているからか、それよりも劣る速度の剣を咄嗟に受け止めることには成功した。

 しかし、土属性の魔法剣の連撃のせいで身動きが……!

 重い、斬撃と一緒に出てくる土くれが邪魔っ!

 他のメンバーも、親衛隊と名乗った少女たちのせいでフォローを頼めそうもない。


「ハインド! 大丈夫かっ!?」

「問題ねえよ! 行け、ユーミル! シエスタちゃんに金林檎を!」

「……分かった! 任せろ!」


 こちらは後衛職が多いが、馬の機動力を活かして距離を置くことで対応できている。

 ただ、目の前のリヒトだけは……他の女の子たちと違ってグラドタークに食らいつけるだけの馬に乗っているし、何よりゲーム開始序盤は有名プレイヤーだっただけのことはある。


「しつこいっ! これでもくらえっ!」

「うあっ!? ――このっ!」

「だっ!?」


 ……『シャイニング』を目にぶち当てても的確に攻撃してくるって、どういうことだよ!?

 おかげで事前に使っておいた『ホーリーウォール』が割れてしまった。

 しかし、シエスタちゃんさえ金林檎を採れれば俺たちの勝ちとなる。

 リヒトの目がくらんでいる今の内に体当たりして、馬から落としてしまうか……?

 自分も戦線復帰が致命的に遅くなってしまうが、リヒトを野放しにするよりは――


「……け、ないっ……」

「げっ……もう目を開けやがった」

「負けないっ! 負けられないんだ! ギルドのみんなのためにもっ!」


 血走った目で、馬をぶつけながら先程よりも鋭い斬撃を放ってくるリヒト。

 片手で手綱を引きつつ放ったものとは思えない……純粋にハイスペックなんだ、こいつ。

 先程の負けられない宣言も含めて、なんか腹立つな!

 通常の斬撃だろうと、当たったらイベント仕様のせいで一発落馬だ。

 グラドタークの動くに任せ、両手で持った杖でリヒトの攻撃を受け止める。


「しつこいって言っているだろう! いい加減にしろっ!」

「――イケメン、滅ぶべしぃぃぃぃぃぃ! 天誅ぅぅぅぅぅぅぅぅぅっっっ!!」

「――!? な、何だ!?」

「がはっ!?」


 突如、何もなかったリヒトの真上の空間からトビが降ってきて、顔面に綺麗な両膝蹴りを入れる。

 そのまま二人は仲良く馬から落ちていき、激しく地面の上を転げ回った。

 ……トビ、お前まさか……ずっとこれを狙っていたのか……?


「た、助かったぞ、トビ! でもイケメン滅べって、顔だけで判定するならお前も滅びの対象に入るんじゃ……」

「――ハインド殿、そんなことより早くユーミル殿とシエスタ殿のフォローへっ! 拙者、あの二人だけだと絶対失敗すると思うでござるよ! 嫌な予感がビシバシと――あひんっ!?」

「リヒト様に何してくれてんのよっ! クソ忍者!」

「このっ、このっ! そのまま地面に埋まれっ!」


 ガーデンの少女たちからの攻撃を一身に、ビシバシと受け始めたトビの声に視線を前方に向けると、ユーミルたちの乗るグラドタークに……少し遅れてアラウダちゃんが追走。

 囲いを突破した、俺たち同盟でもガーデンでもない数人のプレイヤーが更にその後ろに。

 そして……ん!?


「……エルデさん?」


 エルデさんが何かの魔法を詠唱しながら、アラウダちゃんの後方から接近している。

 ……トビの予感は、もしかしたら当たっているのかもしれない。

 今から追いつけるかは分からないが、俺はグラドタークを全力で崖に向けて加速させた。

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