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VRMMOの支援職人 ~トッププレイヤーの仕掛人~  作者: 二階堂風都
至高のお布団

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成果報告と止まり木の栽培責任者

「さて、次のイベントの方針も大体決まったことだし……」

「どうするんですか?」


 リコリスちゃんの声に、俺はみんなの顔を見回した。

 それにセレーネさん、そしてリィズはすぐにでも動き出したいといった様子で頷きを返してくる。

 資源島で得た素材、そしてこの空白期間を考えれば答えは一つ。


「イベントで得た素材の処理と生産活動だね。ということで――」




 最初は止まり木への成果報告と素材の売買。

 そして生産の依頼など、話すことが山ほどある。

 あるのだが……。


「お船に乗りたいー!」

「プリンちゃんバリアー!! たーっ!」

「兄ちゃん、おやつはー?」

「……ピルム。ハインドさんを兄と呼んでいいのは、私だけですよ? いいですね?」

「う、うん……」

「リィズ、小さい子と張り合うなよ……」


 止まり木のホーム前に到着するなり、子どもたちから船に乗りたい、もしくはおやつはないの? の大合唱だった。

 そういや、まだ結構早い時間だもんな……うっかりしていた。


「子どもたちがすみません……いつもいつも……こらーっ!」


 庭で子どもたちに囲まれていると、派手な髪色の少女がホームから出てくる。

 パストラルさんの声に、子どもたちは声を上げながらバラバラとホームに戻って行く。

 ……少しずつだが、パストラルさんの統率力が上がっていないか?


「実は、みんなで例のイベント最後の海戦を観たばかりでして」

「パストラルさんも海戦、見てくれたのですか?」

「ええ、ゲーム内でも再生できたので」

「どうでござったか? 拙者たち――いやさ、プリンちゃんの勇姿は!」


 トビの問いに、パストラルさんは一拍間を置いた。

 そして言葉を選んで……選んで……。


「海を往く沈まぬ船……その姿はまさに、大海に揺蕩う黒き宝石の煌めき……!」

「「「……」」」


 失敗した。

 しまった! という顔をした後にパストラルさんが慌てふためく。


「い、今のは、なしです! も、もう一回いいですか? チャンスを、私にもう一度チャンスを!」

「ど、どうぞ」

「ええと……魔砲を防いだバリアはインパクト抜群でした。それまで魔砲、魔砲とはしゃいでいた子どもたちが一瞬で虜になりましたから」

「あー……」


 ビーム砲、そしてバリアは分かりやすく子どもたちの憧れだ。

 パストラルさんも見ての通りの人だし、そういうものに惹き付けられるのだろう。

 俺としては、火薬臭い砲撃戦もあれはあれで好きなのだが。


「見学会とか試乗会――遊覧会でも開くか! ハインド!」

「それは素敵ですね!」


 ユーミルの提案に、パストラルさんが思った以上の食いつきを見せる。

 リィズが頬に手を当て――。


「……パストラルさんが一番乗ってみたいのでは?」


 上げた疑問の声に、パストラルさんは露骨に視線を逸らした。

 乗りたいのか……。


「ま、まあ、それは追々日程を決めるとして。資源島で得た物品なんですが――」


 パストラルさんを中心に、農作業系で責任者になっているおじいさんおばあさんたちも呼んで話をする。

 特に薬草系の素材に関しては、既にある程度掲示板などで情報が出ており……。


「――資源島限定のものもいくつかあったらしいんですけど、栽培可能なものに関しては……」

「おー、あれかのぅ。ゲームの……えー……なんじゃったかの? パストラルちゃんや」

「運営ですか?」

「それそれ。運営が、流通することを想定しとるっちゅうこっちゃな?」


 中でもこのアーレアばあは、現実で家庭菜園のみの経験しかないにも関わらず、これまで出している成果が凄まじい。

 パストラルさんのおばあさん、エルンテさんとどっこいのおっとり具合だが、植物栽培の話となると別だ。


「アーレアばあの言う通りかと。ただ、栽培についてはとても難しいらしいんで」


 俺の言葉に、目付きが変わる。


「そりゃあ……栽培に成功すれば儲かるってこっちゃな?」

「儲かりますね」

「品種改良に成功すれば――」

「更に倍っすね」

「むふふふふふ……」

「「ふふふ……」」

「わ-、先輩たちたのしそー」


 シエスタちゃんの棒読み気味の声と共に、話し合いを周りで見ていたメンバーがやや引いている気配が。

 い、いいじゃないか……増えて行く資金を見るのも、生産の醍醐味だろう?


「ハインドちゃんや、早速現物を見せて欲しいのじゃが。変わり種はあるかい?」

「ああ、ありますよ。常に燃えていたり、凍っていたりとかで取り扱いに注意がいるものもありますが」

「あ、それ私が採ったやつだろう!? ハインド!」

「ああ、そして俺が一個も採れなかったやつだ……」

「は、ハインドさん……」


 やめて、パストラルさん。

 そんなに同情するような目でこっちを見ないで。


「それはそれは。品種改良して、もっと面白い植物にしてみるとするかい」


 そしてこういった変な植物、リスクを気にしない品種改良など、ゲームでしかできない栽培の魅力をアーレアばあはよく分かっている。

 常に背負っているトレードマークの籠から、無造作に中身を掴み取ると……。

 リィズに向けてそれを差し出す。


「リィズちゃん、留守の間に頼まれていたものができたでな」

「ありがとうございます。助かります」


 ……何だろう、その紫色の葉に人面のような模様がある植物は。

 有名な悲鳴を上げる植物、マンドラゴラとはまた違った不気味さだ。

 怖いので、詳しくは聞かないでおいた方がいいような気がする。


「ハインド君、ハインド君」

「何ですか?」


 しばらくして話が落ち着いた頃、セレーネさんが声をかけてくる。

 ここからは各自、自分の受け持ちの生産活動などを行うために一旦解散する予定だ。


「後で、少し鍛冶場に寄ってくれないかな? ちょっと、やって欲しいことがあるんだけど」

「分かりました。元々俺が担当する分の鍛冶もありますし、農業区を一通り回ったら鍛冶場に向かいますね」

「うん、お願いね」


 そんな約束を一つ交わしたところで、トビを除いたメンバーが散って行く。

 ……あ、そうか。


「そういや、お前も雑用係だったな」

「忘れないでよ!?」

「だって、生産の時はいないことが多いしなぁ……ホームの改造ばっかりしていてよ」

「そっちはもう落ち着いたでござるよ。これで外敵が来ても安心! ばっちり!」

「お前は入場許可制のホームで何と戦う気なんだ。あんまり忍者屋敷みたいにされても、使い勝手が落ちるんだが」

「ハインド殿も隠し扉で、ホームの中を高速移動しようぜ!」

「やらん」


 そのまま男二人、みんなから少し遅れて歩き出した。

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