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VRMMOの支援職人 ~トッププレイヤーの仕掛人~  作者: 二階堂風都
至高のお布団

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イベント会議と小さな諍い

 その夜、TB内で集まった俺たちは談話室で各自の予定を確認。

 今回のイベントは常にフルメンバーである必要がなさそうなので、交代で回るということになるだろう。

 しかし……。


「毎日とは言わないけど、シーはちゃんと参加しなさいよ?」

「えー」

「えーじゃないでしょ。お願いしている立場なんだから」

「分かるけど、サイの態度が何かなぁ……何で上から目線なの?」


 最近になってやや増えつつある、二人の小競り合いが始まってしまう。

 繰り返すが、ユーミルとリィズのそれに比べれば可愛いものである。


「……そんなつもりはないけど?」

「むえっ!?」

「昔っからそうだよね。強制されるとやる気がなくなる人だっているんだよ?」

「――むにょっ!?」


 サイネリアちゃんがシエスタちゃんに半眼を向ける。

 シエスタちゃんはそれを、いつも通りの表情で受けて立つ。

 間に挟まれたリコリスちゃんの頬をぶにっと押しながら、二人が睨み合い……。


「……だーっ!」


 そして格闘技のレフェリーよろしく、顔を潰されていたリコリスちゃんが二人を押して下がらせる。

 こういうやり取りが見られるようになった辺り、遠慮がなくなったのだと嬉しく思う面もあるが。


「二人とも、喧嘩しないの!」

「そうそう、リコリスちゃんの言う通り。そしてサイネリアちゃんの言葉にも、シエスタちゃんの言葉にも一理ある」

「ハインド殿、得意の折衷案? 折衷案なの? それとも風見鶏なの?」

「やかましい! 誰が風見鶏だ!」


 盛んにはやし立ててくるトビを一喝して黙らせる。

 何なんだ今日は。悪い意味で絶好調だな。


「……俺から言えることは一つ。人に頼んだからにはなるべく参加。これだけだよ」

「あー、いいですねぇ。なるべくっていうところが私としてはグッドです」

「……どう違うのだ?」


 ユーミルの首を傾げつつの言葉に、サイネリアちゃんが同意するように小さく頷く。

 どう答えるべきかな……。


「……まあ、ゲームをやることに義務なんてないじゃない? サイネリアちゃん」

「それはそうですが……」

「そうだそうだー!」

「うん、シエスタちゃんもちょっと黙ろうか?」


 生真面目な人というのは、どうも力の抜き方が下手な人が多いように思える。

 しかし、生真面目な人と楽しく遊べないかというと決してそんなことはない。

 共感できる部分、より良い着地点を探して話を続ける。


「どうも、半端に好成績を出し続けているから勘違いしそうになるけど。俺たち、ただのエンジョイ勢だからね?」

エンジョイ勢( )(ランカー)」

「黙れ、トビ。何度も何度も、お前はよぉ……」


 またそうやって調子に乗る。

 トビは舌を出して小さく謝ると……うざったい仕草だな。

 謝ると、人差し指を立てつつサイネリアちゃんにアドバイスを送る。


「拙者の体験談を話すと、でござるな……」

「はい」

「ガチガチの攻略ギルド……TBで言うとラプソディ辺りでござろうか? ああいうところって、それはそれで充実感があるのでござるが」

「そうでしょうね。やるからには、全力のほうが遊びも楽しいと思いますし」

「その通りだな! 全くもってその通りだな!」


 またうるさいのが……今のは言うまでもなくユーミルの声だ。

 こちらはリィズに小突かれ、拳をかざして立ち上がった状態からすごすごと座り直す。


「そこは拙者も賛成でござるが、例えば数日……テスト前にインできない日が続いたとする。すると……」

「すると?」

「ギルドによってはあっという間に除籍されている、ということも」

「それは……」

「もちろん、事情を話せば待ってくれるギルマスも多いでござるよ? しかし……あー……ハインド殿!」

「おい、綺麗にまとめろよ。途中まで良い感じだったじゃないか」


 トビがやってくれたのは、俺たちのプレイスタイルの再確認だ。

 今まであえて言葉にしなかったものだが、そうだな……。


「……感覚的な言葉で悪いんだけど、ここを“来なければいけない場所”にしたくないというか。“自然と集まりたくなる場所”であって欲しいって、要はそういうことなんだけど……わ、分かる……かな?」


 うーん、思った以上にまとまりのない言葉になってしまった。

 やや説教染みているような気もするし……。

 だが、サイネリアちゃんは俺の言葉に大きな頷きを返してくれる。


「……そうですね。ハインド先輩らしくて、素敵な表現だと思います。自然と集まりたくなる場所、ですか……」

「え、いや、そう返されると凄くクサイ台詞を言った気分になるんだけど……」

「そんなことないよ。私もとても素敵な言葉だと思ったよ?」

「ハインドさんらしいです。普段、あまり口に出して言ってはくれませんが」

「セレーネさんもリィズも……もうやめてくれ……」


 ユーミルも笑いながら俺の肩を叩いてくる。

 何だこれ、恥ずかしいにも程がある。大失敗じゃないか……。


「あぶねー! 拙者、最後まで言い切らなくてよかった!」

「おい!」


 まさかの爆弾付きバトンだった。

 本当に何なんだ、今日のこいつ……俺に喧嘩を売っているのか?


「では、シーにはこう言い直します」

「うん、どんと来なさい! カモンカモン!」


 シエスタちゃんが流れはこちらにあり! とばかりに次の言葉を待つ。


「毎日とは言わないけど、シーはちゃんと参加しなさいよ?」

「うんうん……うん? あっれえ?」


 変わってないよね? と、シエスタちゃんが隣のリコリスちゃんに確認を取る。

 それにサイネリアちゃんは小さな笑みを浮かべると……。


「私も付き合ってあげるから」


 そう一言、笑顔のまま続けた。

 シエスタちゃんは頬を掻いて、居心地が悪そうに視線を彷徨さまよわせる。


「だ……だったら仕方ないかな、うん……」


 その場の空気が弛緩した。

 喧嘩状態の終わりを察して、リコリスちゃんが笑顔で手を合わせる。


「おー、サイちゃんがシーちゃんに勝った。珍しい!」

「勝ち負けとかの問題じゃないと思うけど……?」

「くっ……先輩の切り返し能力をサイが身に付けつつある……!? そういうところは真似しなくていいから、甘やかし成分を真似しようよー」

「私がシーに甘かったら、歯止めが利かなくなるでしょ」

「そうだけどさー」


 何だかんだで、やはりこの三人は仲が良い。

 すっかり和ませてもらったところで、イベントについての話は一旦終了かな……。

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