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VRMMOの支援職人 ~トッププレイヤーの仕掛人~  作者: 二階堂風都
資源島と海への誘い

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上位陣との戦い 飽和攻撃 中編

 砲弾の雨は、遠距離でもこちらのHPを少しずつ奪っていく。

 艦隊行動とはこういうものだと言わんばかりの攻撃に、野良の集団は右往左往するばかりである。


「うみんちゅはどうする気なんだ!? ハインド!」

「分からん……だが、考えがあるはずだ!」


 わざわざ正面から対峙したのだ、何か作戦があるはず。

 主力が動かなければ、そのおまけに過ぎない俺たちに為す術はない。

 幸いというか、ラプソディの砲火の向きは中央――うみんちゅ率いる艦隊のほうなので、こちら側で致命傷を受けた船は運の悪い数隻だけ。

 しかし中央が壊滅すれば、次に狙われるのがどこかは明白である。


「くそっ……どうするにしても、あの砲火じゃ身動きが取れないか。シエスタちゃん!」

「陽動ですか? 合点承知の助ぇー」


 思ったほど砲弾が飛んで来なかったのを見て、察してくれていたのだろう。

 即座に意図が伝わり、『プリンケプス・サーラ』が動き出す。


「だ、大丈夫なのでござるか!?」

「魔砲の発射まで時間を稼ぐ! どの道、あの様子だと野良艦隊を餌に魔砲を発射する気だったんだろう!」


 その証拠に、中央部の艦隊にはゆっくりと後退しようとする素振りが見える。

 ただ、密度の高い砲撃のせいで下がるに下がれないようだが。

 よく長射程砲であれだけの精度を出せるな。

 しかし、裏を返せばそれは……。


「長射程砲が主体ってことは、近付けば多少マシになるはず!」

「た、多少!? 多少なのか!?」

「レーヴの性格を考えれば、弱点って程ではないだろうからな……それよりも、怯ませるためにこっちの砲をしっかり当てるんだよ! ――セレーネさん!」

「うん! みんな、砲の前に!」


 セレーネさんの指示に従い、タイミングを合わせて大砲を放つ。

 あちらの弾幕には全く及ばないが、こちらを見ろとばかりに攻撃を浴びせる。

 しかし、ラプソディの艦隊は……。


「無視かよ!? 凄い統制だな!」


 前衛の中型船に被害が出ても、構わず中央艦隊目がけて砲を撃ち続けている。

 精々が砲のWTに入ったタイミングで、数発のバリスタが飛んできた程度だ。

 特に後ろに控える四隻もの大型船は不動である。


「屈辱的だ……! ハインド、このまま大型船の一隻でも沈めてやろうではないか!」

「いや、待て! ……シエスタちゃん!」

「嫌ーな予感がしますよね……旋回しまーす」


 それは突然のことだった。

『プリンケプス・サーラ』を確実に倒せるであろう数……中型船三隻が、スッと前へと進み出てくる。

 そして旋回中の俺たちを狙い、猛然と攻撃を仕掛け始めたのだ。


「やっぱりか!? 後ろに付かれた!」

「せ、船尾で防御でござるな!?」

「見ていないフリからの攻撃だと!? おのれぇぇぇ!」

「で、でも目的は達成できましたよ! 中型船が三隻で、中央には隙が……!」

「に、逃げ切るまでが陽動だよ! とにかく、みんな後ろに!」


 バタバタと慌てて甲板の上を移動していく。

 後ろを取られるのは戦闘機なら最悪の位置取りだが、幸いTBにおける船というものは前方への攻撃は今一つだ。

 台座が自由に回転するものはバリスタに多く、砲の場合は重い上に種類によっては射角に制限が設けられている。

 つまり……。


「サイネリアちゃん! 敵が一斉砲撃をしに、横っ面を見せた瞬間に加速してくれ!」


 攻撃の際は船を旋回させるだろう。

 今の距離感と砲のWTを考えれば、上手いことこちらの加速と噛み合うはず。

 それに、引き剥がし過ぎると相手は諦めて自陣に戻ってしまうだろう。


「りょ、了解しました!」

「それまでは俺たちで何とかする! シエスタちゃんも、頼んだよ!」

「あいあい。ま、後は味方の方に逃げるだけですが」


 そんな俺たちの動きに対して、うみんちゅ並びに野良艦隊にも動きがあった。

 数に勝る両翼がラプソディを包み込むように移動を始め、砲火を逸らすように、また中央のうみんちゅ艦隊が前に出ざるを得ないような動きを開始する。

 さすが、野良とはいえ高ポイント船ばかり。

 利用されるばかりにならないためにどうすればいいのかを心得ている。

 そしてうみんちゅ艦隊は、敵が散らない内に魔砲を放つべく旗艦をバックアップ。

 前面に護衛の艦を押し出しながら、魔砲の射程に収めるべく砲火に耐えながら前進。


「やっと覚悟を決めたか……遅いよ……」

「当たり前だ! 被害なしに勝てる相手ではあるまい、ラプソディは!」

「自分の仕事をこなしつつ、お前も行けよというムーブ……ネトゲの野良チームあるあるでござるな」

「それでも動かないような人は……いないよね、このポイント帯なら……」

「せ、セレーネ先輩!? 何か嫌な思い出でもあるんですか!?」

「ううん、何でもないのリコリスちゃん。ちゃんと連携できるフレンドがいなかった、私が悪いんだよ……」

「セレーネ先輩!? しっかりしてください! 今は私たちがいますよ! 傍にいますよ!」


 右翼艦隊と合流したことで一息つけた俺たちは、現在周囲の状況を確認中だ。

 約一名、妙な記憶を掘り起こしてしまった人がいるようだが……。

 リコリスちゃんのシンプルながらも健気な応援に、しばらくしたらようやく笑顔を浮かべた。

 ……これなら大丈夫だろう、多分。


「よし、俺たちも反転! 右翼艦隊の援護に回るぞ!」

「戦況がどうなるかは、魔砲の行方次第でござるな……」

「だから、ちょっとでも中央を楽にしてやらないとな。あれが不発に終わると俺たちまで危ない」


 海に一筋の閃光が奔ったのは、それから数分後のことだった。

 満を持してうみんちゅの旗艦が放った光に、ラプソディ艦隊が飲み込まれていく。

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