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VRMMOの支援職人 ~トッププレイヤーの仕掛人~  作者: 二階堂風都
資源島と海への誘い

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上位陣との戦い 巨象vs蟻 前編

 翌日、俺はみんなが集まった船の上で判明した新機能について説明していた。

 セレーネさんにも補佐してもらいながら、なるべく一度の説明で済むようにしたつもりだが……。


「――以上が、プリンケプス・サーラの新機能だ。何か質問は?」

「はいっ!」

「おっ、どうぞ。リコリスちゃん」

「セレーネ先輩に質問です! ハインド先輩とのデートは楽しかったですか!?」

「でっ……!?」


 セレーネ先輩が絶句し、続けて分かりやすく動揺を露にする。

 リコリスちゃんの無邪気な言葉だからか、ユーミルもリィズも特に何も言わない。

 そのことに気が付いたセレーネさんは、やや落ち着きを取り戻し……。


「で、デートかどうかは分からないけど……ね、ねえ? ハインド君」

「まあ、二人きりだったのはインしてから数分で、後はずっとオンダばあがいましたし……」

「う、うん。でも、色々と楽しかったよ? 私としては、とても有意義なお話を聞けたし」

「へー!」


 確かにオンダばあの話、それからその後『プリンケプス・サーラ』と改めて向き合った時間は楽しかった。

 色々な人の思惑や願いが込められて、船は一つの形になっている。


「そういえば、ハインドさん。昨夜はログアウト後に、急に編み物をしていませんでしたか?」

「あ、ああー。な、何でだろうな?」


 どうしてリィズが急にそのことに触れたのかは、次のユーミルの言葉で丸分かりだった。


「むっ、まさか私たちにくれたあの新しい手袋はその成果か? 大方、分かりやすく刺激を受けたのだろう? リコリスの時もそうだったし!」

「わ、悪いかよ……?」

「いや、全然。冬が楽しみになった!」

「ロングマフラーも作ってください。私と一緒に巻きましょう」

「それは駄目だ」

「は? あなたに止める権利があるとでも?」

「一晩で手袋を二組……!? す、凄いです……」


 リィズ――というか理世と一つのマフラーを巻くのは結構身長差のせいでキツイ気がするが。

 そしてロングマフラーというと、リコリスちゃんの両親へのプレゼント案で没になったやつだな……。


「ハインド殿、拙者の分は?」

「ない」

「何で!?」

「お前は去年、お姉さんから貰ったのがあるだろうが。ちなみにセレーネさんの分はあります。迷惑でなければ貰ってやってください。あ、もちろん現実のほうでの話ですよ?」

「え、本当? 送ってくれるの? 手作りの手袋かぁ……ありがとう、ハインド君!」

「先輩、私の分は?」

「欲しいなら編むよ」

「マジですか? 欲しい欲しい」


 会話の収拾がつかなくなりつつあるので、少し大きめの声で呼びかける。


「話を戻すぞー。プリンちゃんの新機能の件だけど、ちゃんと了解してくれたか?」

「……」


 ユーミルはリィズとの会話を打ち切ると、今にも走り出しそうな体勢でソワソワし始める。

 言わなくても分かる、これは「早く使ってみたい」という顔だ。

 船影の少ない沖まで出てから、新機能のお披露目そのものはしたのだが……やはり実戦で使ってみたいのだろう。

 その表情のまま、ユーミルがやや早口で話し出す。


「この機能があれば、今までよりもどっしりと構えることができるな!」

「ああ。それに合わせて、戦術もちょっと変わるかもな。より攻撃的な戦術も採れる」

「組み合わせ的に、今までは微妙だった装備も使えそうか?」

「……ああ、言われてみれば。ただ、苦戦しないような相手には今まで通りの戦い方でいくつもりなんで、そのつもりで頼む」

「切り札ということだな!? 分かった!」


 秘密兵器にもなり得る存在の登場に、俺たちのギルドマスターはノリノリである。

 生きていればさぞ気が合っただろうな、砂漠の海王とは。


「発動は誰がやるんですか? 誰というか、どっち?」


 シエスタちゃんが思い出したかのように手を上げて質問した。

 新機能を操作するためのレバーは、昨日の内にブリッジに設置してある。

 急遽集まってくれた『ポルト』の船大工さんたち、そして機関技師さんたちは、船の造りで疑問に思っていたことが解消されたと皆一様にすっきりした顔で帰って行った。

 かつては指揮官が立つ場所にその機能の操作系統があったそうなのだが、過去の機関再始動実験のいざこざで喪失してしまっていたものらしい。

 その時の責任者は、杜撰ずさんな管理の責を追って職を追われたりしているが……まあ、それはそれとして。

 二人の内のどちらが操作するか、か。


「そうだな……最高速で船を移動させている時に、より余裕があるのはどっち?」

「車で言うとアクセルとブレーキをサイが、ハンドルを私が握っている状態ですよね? うーん……」

「どちらかというと私ですかね……? タイミングを見てレバーを倒すだけですし、シーよりはどうにかなると思います。機関の出力を上げた後は、オーバーヒートにさえ気を付ければ手が空きますし」

「そっか。じゃあ、サイネリアちゃんにお願いするよ」


 実はそうなると思って、レバーの取り付け位置もそちら寄りなのだが。

 人員がギリギリの俺たちはこれ以上ブリッジには回れないし、舵から手を離すよりは安全ということで。


「――さて、イベントも終盤戦だ。今日も気合いを入れて行こうか? ギルマス」


 粗方疑問が解消されたのを確認したところで、ユーミルに呼びかける。


「うむ。プリンケプス・サーラ、発進!」

「ぬおっ!? ユーミル殿が初めてプリンちゃんのフルネームを!?」

「本当だ……どうしたんだ、お前? 大丈夫か? 熱でもあるのか?」

「悪いものでも食べたのですか?」

「貴様ら!?」


 今一つ決まらない会話を交えつつ、『プリンケプス・サーラ』がイベント海域へ。




 意気揚々とイベント海域に乗り込んだ俺たちだったが、あっという間に多数の敵船に囲まれた。

 それもそのはず。


「待っていたよ、鳥同盟!」


 小型船からキツネの面を装備した女性が叫ぶ。

 後ろには粋な雰囲気の中年男性、そして槍を持った和装の重戦士。

 計画的な待ち伏せ、そして木造小型船ばかりの編成。

 ポイントにバラつきはあるが、分配機能によって全ての小型船が高めという異質さ。

 そしてあのフレンドならではの気安い口調、彼らは――。


「和風ギルドじゃないか……わざわざ俺たちと勝負しに来たのか?」

「待ち伏せとは小癪な! 蹴散らしてくれる!」

「そしてこちらのリーダーは見事な脳筋台詞。どうするのでござるか? 参謀殿」

「あ? そうだなぁ……」


 待ち伏せとは言っても、不意打ちではなく攻撃信号を上げてからの攻撃だ。

 まだ距離はある……そう思って信号弾を上げつつ、のんびりと答えたのだが。


「――!? 待った、速い速い! 何だあの速度!?」

「むおお!? もう焙烙玉が中に!」

「投げ返せ! ブリッジ、引き撃ちだ! とにかく後退、後退!」


 そんな余裕は一切なかった。

 慌ただしく動き出した俺たちの下に、先程と同じようにキツネさんの声が届く。


「余裕をやると何するか分かんないからね、あんたたち! 速攻!」

「フレンドでも今日は敵同士だ! さあ、楽しいいくさにしようぜ!」

「若者は元気だねぇ。悪いけど、サクッとやらせてもらうよ、トビ君。ハインド君の相手の様子を見てから動く癖、利用させてもらう!」


 続けてユキモリさん、ミツヨシさんの声がしたが、こちらが速力を上げたことでそれらが遠ざかっていく。

 ――が、置き土産の『焙烙玉』が目の前に。


「プレゼント・フォー・ユーだよ、本体君! あっはっは!」

「うわあああっ!? いるか、こんなプレゼントぉ!」


 必死に蹴り返し、空中で爆散。

 そうやって目の前のものは処理できたが、いくつかは爆発して『プリンケプス・サーラ』にも乗員である俺たちにもダメージを与えて行く。

 しかもこれ、木造船に良く効く焼夷(しょうい)式のやつじゃない!


「鉄鋼船にも効果がある、衝撃がでかいタイプかよ!? どんだけ入念に準備して攻めてきているんだ!」

「ハインド、完全に後手に回っているぞ! どうするのだ!?」

「くっ……!」


 不利な状況を覆すべく、俺は頭をフル回転させた。

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