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VRMMOの支援職人 ~トッププレイヤーの仕掛人~ 作者:二階堂風都

彼が「本体」と呼ばれる理由

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採掘は爆風と共に

「ツルハシは持ったかな?」
「インベントリ一杯に持ったぞ!」
「ハインド君、例の物は?」
「作って持ってきました。準備は万全です」
「じゃあ、出発しようか」

 セレーネさんの号令の元、俺とユーミルはラクダに乗り込んだ。
 リィズは宣言通り、モンスターの経験値を調べに行ってくれるとのこと。
 無理せず、孤立しているモンスターだけを狙うようにお願いしておいた。
 一人で行かせるのは少し心配だが……。
 俺よりもずっと頭の出来が良いので、引き際を誤るようなことはないだろう。

 『王都ワーハ』の街を出て、炎天下の『ルキヤ砂漠』を三人で北へ向かって進んで行く。

「それにしてもセレーネさん、よく採掘場の情報なんて入手できましたね。NPCからですよね? 誰か、街の人間と親しくなれたんですか?」
「……私が街の人達と和やかに話して、自然に情報を聞き出せたと思う?」
「違うのか? 言われてみれば、セッちゃんのそんな姿は想像はできないが」
「あー、もしかしてアレですか? 掲示板で話題になってた、大都市に必ず一人は居るっていう情報屋」
「やっぱりハインド君は知ってたんだ。お金は必要だったけど、得られる情報は正確だって話だから」

 前に、店員の様な通り一遍の対応には緊張しなくて済むと言っていたからな。
 プレイヤーが増えれば情報の共有が進み、情報屋という存在自体がいずれ必要なくなるかもしれないが。
 プレイヤーが少ない今の砂漠の状況だと重宝する存在だな。
 他の地域でも、攻略のトップを走るようなプレイヤーはこの情報屋というものを利用しているそうだ。
 今回のような素材の採取場所なんかの情報は特に有用とのこと。

「ちなみに、採掘場の情報料はおいくらでした?」
「ん? えっと、100,000Gだったかな」
「――高くはないか!? 情報料の相場とやらは分からんが、ラクダ一頭分もするじゃないか!」
「そんなことないよ。鉱物系の素材が沢山手に入れば、これくらいは直ぐに取り返せるよ」
「ユーミル、諦めろ。一流の生産職人の金銭感覚は、一般プレイヤーとは大きく違う」
「そ、そのようだな……」
「ええ? 変かなぁ? そんなことないと思うんだけど……」

 セレーネさんはそう言うが、多少のドロップ品を得るだけで消費するばかりの戦闘型のプレイヤーとは埋めがたい溝があるのだ。
 そういうプレイヤーの主な収入源は、各街に常備されている討伐クエストだろうし。
 俺は中間、というかどちらに関しても半端者なので、両方の感覚が分かるのだが。

 特殊な装備品は酷い時にはあのエルフ耳のように、素材の何倍もの値段で売れてしまう。
 セレーネさんの場合は腕の良さもあって、並の職人が作る装備に比べて単価が著しく高い。
 その上、一本を作り上げるまでの仕事のペースもとんでもなく早い。
 各プレイヤーがイベントで装備を入れ替えている、今の時期などは一瞬で稼げる額なのだろう。

「それならユーミルも、何か生産に手を出してみたらどうだ? リィズも俺と一緒に回復薬を作るって言ってるし、上手くやれば懐がかなり潤うぞ」
「構わんが、私に難しいことはできんぞ? 楽しむためのゲームで複雑なことなど、やりたくもないし」
「あ、だったら農地開発とかどうかな。アイテムに使う薬草とか、料理に使う食材とかを作るの。慣れれば単純な作業の繰り返しになるから、いいかもしれないよ?」

 引き換えに根気は要求されそうだが、恐らくゲームで現実の農業ほど厳しい要求はされないだろう。
 こいつは途中で投げ出すようないい加減な性格はしていないので、合っているという気がしないこともない。
 ユーミルはラクダの手綱を引きながら、セレーネさんの提案にうんうんと頷いた。

「もしハインドが監督してくれるのであれば、私にも出来そうだな。一緒にやってくれるか?」
「ああ、全然いいぞ。砂漠の土壌改良の案は前からあるから、今のPvPイベントが終わったら始めてみようか?」
「うむ、そうしよう。となると、トビにも何か担当させたいところだな」
「そうだなあ……」

 トビに向いているものか、何だろう?
 もし本人が戦闘しかしたくないと言うなら無理強いする気は無いが……。

「俺のアクセ作りとか、投擲武器作りに参加させればいいんじゃないか? 忍者的なアイテムも結構作ってるし、後は……各自、生産の手が足りない時に呼ぶとか。ただ、言い換えると――」
「雑用係だな」
「雑用係だよね……?」

 雑用係だ。
 五人だけのギルドなので、時には一箇所で人数が必要という場面も多々あるだろうし、俺だってほぼ全てに関わっているのだからそれほど立場は変わらない。
 格好良く言い直せば遊軍だから大丈夫だ、多分。

「あ、そろそろ目的地に着くみたいだよ」

 セレーネさんの言葉に目を凝らすと、砂漠の砂山の向こうにごつごつとした岩肌が見え始めた。
 バジリスクが岩だらけにした、あの地形とはまた違った感じがする。
 他の地域のように、ここルキヤ砂漠では山から鉱石を採る訳ではないらしい。



 元は採石場だったそうだ、この岩石地帯は。
 最初に建材用の石を採っていた上層部には、実はそれほど有用鉱物は含まれていなかったとのこと。
 しかし低い位置まで採石が進む内に、徐々に充分な密度を有する鉱石が出現。
 更に地中まで掘り下げていったところ……それなりの量の鉱脈が存在していると確認された。
 岩盤の硬さに加え街からやや遠いことからそれほど採掘は進んでいないそうで、言い換えればまだまだ大量の鉱石が取れるということだ。

 ゲームだからなのか、こういうものはプレイヤーが勝手に取っても基本的に怒られない。
 現実だったら国や領地の大事な資源だと思うんだけど、その辺は気にしてはいけないお約束だとか。
 どうせ採取ポイントは時間経過で地形ごと復活するしな……。

 俺達は表層にある採取ポイントでツルハシを振り終わり、今は更に地下に向かって掘り進める準備をしている。
 表層部分の入手素材はほとんどが『石ころ』ばかりで、良くて微量の『鉄鉱石』のみだった。微妙。

「セレーネさん、セット完了しました」
「じゃあ、火を点けて離れよっか」

 セレーネさんが火打石を構えると、ユーミルがワクワクした顔で何かを言いたそうにそれを見ている。
 ……一瞬だけ眉を困ったように寄せた後、セレーネさんがユーミルに火打石を渡した。

「ユーミルさん。火、点けてくれるかな?」
「いいのか!?」
「うん、お願いね」

 すみませんね、派手好きな奴で。
 こういうのは自分の手でやりたくて仕方ないのだ、こいつは。
 カチカチと石を打ち合わせて手製の『巨大焙烙玉』の導火線に火が点いたのを確認すると、俺達は急いでその場から離れた。

 ラクダの待つ岩陰に隠れ、念の為に耳を両手で塞ぐ。
 ドッ――というくぐもった音と共に粉塵と煙が舞い、充分な距離を取ったにも関わらずパラパラとこの場にまで砕けた岩の欠片が降り注ぐ。
 相変わらず意味の分からない威力だ……大量に使用したとはいえ、本当に黒色火薬のそれとは思えない。
 真っ先に立ち上がって岩陰から飛び出したユーミルが、歓声を上げる。

「おおーっ! 岩が粉々だ! これは気持ちいい!」
「は、ハインド君、思ったよりも威力が……」
「そ、そうですね……」

 しかし岩盤を貫いたのは間違いないので、結果オーライである。
 これはいわゆる、爆弾採掘という奴だ。
 鉱石は主に地下にあるらしいのだが、地盤が硬いという情報を事前に訊いていたのでこういう手段に至ったわけで。
 北のベリ連邦にある鉱山でも、プレイヤーが自力で掘り進めないと到達不可能な、埋まっている採取ポイントが存在するのだそうな。
 粉塵が完全に収まるのを待ち、爆破地点の近くまで慎重に進むと……。

「おお、崩れた場所から採取ポイントの光がポコポコと湧いてます! これは成功ですかね」
「うんうん、良かった良かった。じゃあ、早速作業に取り掛かろうか」
「了解した! よし、採るぞー!」

 光を放っている採取ポイントにそれぞれ散り、ツルハシをひたすら光に向かって振り下ろす。
 振る度に視界の中に『鉄鉱石を入手しました』というメッセージが表示され、取得したアイテムがインベントリに自動で送られていく。
 『鉄鉱石』『鉄鉱石』『鉄鉱石』『コバルト』……ん!?
 その表示に急いでインベントリ内を確認すると、どうやら見間違いではなかった。

「せ、セレーネさんセレーネさん!」
「どうしたのハインド君? 何かあった?」
「今、コバルトが出ました! 確か、コバルトっていうと――」
「!? それってレアメタルじゃない! ハインド君、どんどん集めて! 早く早く!」
「は、はい!」
「ここは!? ここでは出ないの!? ああもう、鉄ばっかり! どうして!?」

 セレーネさんが見た事がないくらいに鼻息を荒くしている。
 そして自分の採取ポイントの上で、物凄い勢いでガツンガツンとツルハシを振り始めた。
 は、速い……。

「おーい、こっちではクロム? とかいう素材が出たぞ。良い物なのか?」
「きゃあああああ! ユーミルさん、全部! あるだけ全部採って! 私も直ぐにそっちに行くから、お願い! お願いします!!」
「お、おう。一体どうしたのだ、セッちゃん……」

 きゃあああって……。
 その後も作業は続き、全ての採取ポイントの光が消えるまでひたすらツルハシを振った。
 結果、大興奮のセレーネさんの様子に少し驚きつつも、俺達は大量の鉄鉱石を含む『コバルト』と『クロム』を少量だが入手することができた。
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