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VRMMOの支援職人 ~トッププレイヤーの仕掛人~  作者: 二階堂風都
資源島と海への誘い

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プリンケプス・サーラの復帰戦

「うわ、空間が歪んでる」


 イベント海域は、掲示板で誰かが予想した通り共通の異次元海域で行われる。

 各港から程近い海に設置されている、転移ポイントに船を移動させることで参加が可能だ。

 その転移ポイントなのだが、わかりやすく景色に歪みが見られる。


「ここにプリンちゃんを入れるのか……圧壊したりしないだろうな? ハインド」

「怖いこと言うなよ……折角みんなで直した船なのに」

「グラビトンウェーブのエフェクトに似ているのが、そこはかとなく不安を誘いますね……」


 遠くから見ても分かりやすいが、若干の禍々しさを感じずにはいられない。

 とはいえ、TBに限らずワープゲートというのはとかく暗色系のエフェクトを割り当てられやすいものだが。


「……しかし、ここでまごついていても仕方ない! 突入だ!」

「おう。シエスタちゃん、サイネリアちゃん、微速前進でお願い」

「「はーい」」

「みんなも戦闘配置についてくれ。入ってすぐに狙われることはないと思うけど、念のため」


 八人しか乗っていない大型船が、静かに歪みの中へ進入していく。

 そこを越えた先にあったのは……明らかに元いた地域よりも気温が低く、凪いだ海。

 そして左右には、同じタイミングで入ってきたであろう他のプレイヤーの船。

 中型船が三つに……小型船が多数。


「……ハインド。狙われないというのはどういうことだ? 素材収集と対戦を混ぜたイベントだったはずだが?」

「そうなんだけど、俺たち新参だから。撃破してもポイントにうまみがないんだよ」


 ユーミルの言う通り、今回は『資源島』という露骨にレア素材を集めてくださいと言わんばかりの名の島で素材を収集。

 船で自分たちの港まで帰る、というのを繰り返すイベントである。

 その往復の海域では、プレイヤー同士の船で海戦が行われるという海イベントだ。


「あ、あの船の上に表示されているのが撃破ポイントですか?」


 リコリスちゃんが双眼鏡から目を離し、船を指差しながら俺に問いかける。

 このイベント参加時に配られた双眼鏡……これを通して見ると、船に付与されたイベントポイントを参照することができる。

 ちなみにこの双眼鏡、普通に双眼鏡としての機能もあるため参加賞のようなものだ。

 ベルトがついているため、みんな揃って首からぶら下げている。


「そう。で、俺たちはまだ0ポイント。素材を集めたり、他のプレイヤーの船と戦って勝つとポイントが増えるんだってさ。ポイントが多いと、レア素材を入手できる確率が上がるって仕組みだったかな? ランキング報酬もあるけど」

「へー。やられるとポイントが下がったり、素材を取られたりするのか?」

「素材は取られないけど、ポイントは下がるな。だから戦ったり逃げたりしながらポイントを維持・もしくは加算しつつ、資源島に通うってのがイベントの流れだな」


 海戦で移動するのはあくまでポイントだけである。

 得たレア素材を奪われることはないので、割り切って海戦を完全に無視するようなプレイングもできなくはない。

 無論、最も効率が良いのは両立になるが。


「PK判定は?」

「まさか。ないない、ルール内での純然たる対戦だし」


 PvPの一種なので、普通に倒してしまって問題ない。

 出発した港に戻されるだけだ。


「お、あの中型船500ポイントでござるか……」

「速度も結構出てるな。戦ったら強いんじゃないか?」


 大型船の存在は珍しいのか、何隻かの船がこちらを観察するような動きをしていたが……。

 やがて島に向かって去って行った。


「……とりあえず、資源島への上陸は明日以降にして海域を見て回ろう。海戦の雰囲気を掴んでおきたいし、できれば一戦」

「りょうかーい。じゃあ、船が多そうな方に」

「ハインド先輩、速度は?」

「機関に負荷がかかり過ぎない……えっと、巡航速度だっけ? それで。最大戦速を見せちゃうのはよろしくない気がするから、上手く誤魔化しながら進もう」


 立派な見た目の割に速度がしょっぱい、くらいに思われていた方が今後やりやすいだろう。

 サイネリアちゃんが意図を正確に察し、頷きを返してくれる。


「ですね。分かりました」


 俺が立っているのはかなりブリッジ寄りの位置である。

 最初の内は今のように色々と相談しながらの運用だが、慣れてくれば各自が最適な判断をしてくれるようになるだろう。

 船は資源島と海域の間を横切るように移動していく。

 ――と、このように最初の内は悠々と海域を進むことができる。

 しかし、ポイントが高い船がどうなるかというと……。


「あっ! ハインド、小型船が囲まれているぞ!」

「相手は中型船が二隻だよ!」


 ユーミルとセレーネさんが左舷から砲火に気付き、手招きしてくる。

 俺とリィズはそちらに駆け寄り、双眼鏡を覗き込んだ。


「332ポイント……小型船であのポイントは、さぞ美味しそうに見えるだろうな。リィズ、救援信号は?」

「出ています。……どうしますか? これをプリンケプス・サーラの復帰戦としますか?」


 海戦においては、一定のポイントを消費することで周囲に無差別に救援を要請することができる。

 撃沈されるよりは遥かに引かれるポイントが低いので、危ないと思ったら救援要請を行うほうが賢いと言えるだろう。


「……船長」

「無論、決まっている!」


 ユーミルの決定を受け、受諾の信号を出しながら接近する。

 小型船からは一瞬の間……無理もない。

 大型船といえども、0ポイントだもの。

 しかし、援護できるほど近くに他の船影はなし。

 藁にも縋る、という雰囲気が伝わる間を経て小型船の識別が味方に変わる。


「よし、加速……えーと……ハインド!」

「第一戦速までで良いよ、サイネリアちゃん。シエスタちゃん、このまま左舷側で砲撃するから。上手いこと操艦頼んだよ」

「おーう、先輩にしてはざっくりとした指示……まあいいや、任されよー」

「了解しました!」


 中型船はここから見た限り、鉄製に見える。

 小型船は速度に特化した逃げ切り仕様なのか、武装らしきものはなさそうだった。

 ただし、被弾しているらしく小型船はあまり船速が出ていない。

『プリンケプス・サーラ』がそのサイズを活かし、中型船二隻と小型船の間に割り込むように侵入。


「そこ!? そこに入るのシエスタちゃん!?」

「んー、まあ、ここがベストかなって」


 中型船の小型船を狙った攻撃は……あ、驚いたのか大きく的を外した。

 そして目の前には、甲板上で大砲の発射体制を万全にした俺たちが。


「うおおおお、燃えてきたぁ! 絶対勝つ!」

「ユーミル、うるさい! セレーネさんの指示が聞こえなくなるだろうが!」

「こ、これだけ近ければ程々の狙いで当たるよ! みんな、二門ずつ撃って! 撃って!」

「発射、発射でござるぅー!」

「そいやーっ! てやーっ!」

「大砲が騒がしいからと言って、あなたたちまで騒ぐ必要はないんですよ……?」


 ドンッ、ドンッ、という乱暴な発射音が立て続けに鳴り響く。

 セレーネさんの言葉通り、砲弾は中型船に直撃。

 ……思ったより装甲が薄いな、鋼鉄船じゃなくて鉄甲船か?

 どちらの中型船からも、穴が開いた船体からあっという間に煙が上がり始めた。

 中型船が苦し紛れに撃ち返してくるも、『プリンケプス・サーラ』に当たった砲弾は――


「むお、当たったか!? 揺れ――あれ?」

「微揺れだな……」

「ほとんど効いていないでござる!? すげえええ!」


 大したダメージにはならなかったようだ。砲の口径も大したことがない。

 そのまま性能差の暴力により、中型船は白兵戦を経ずに二隻とも撃沈。

 小型船はしばらく呆気に取られたように後方に漂っていたが、やがてお礼の信号を放ってから海域を去って行った。

 中型船の撃破ポイント、ならびに小型船の救援ポイントが『プリンケプス・サーラ』に加算される。

 うーん……もしかしなくても、これテストケースとしては失敗なんじゃ……。

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