初・中級者への道標 その3
『サンドグリフォン』攻略メモ
・飛行中は高防御・高魔法耐性で、怯みも少ない
・サンドブレス、サンドストームなどでこちらの目を潰しに来るので注意
・高速落下を用いた体当たりが大ダメージだが、予備動作として高く飛び上がるので回避は容易
・いずれかの羽に三十回攻撃を当てると(ダメージは問わず、ヒット数のみ)落下するので、PTに弓術士は必須か
・投擲武器でも可なので、近接職は隙を見て石でも何でも投げると良いかもしれない
・落下後は特に物理の近接系ダメージが通りやすいので、PTに高レベル近接職がいれば一度の落下で倒し切ることが可能
・魔法も通りやすくなるが、物理ほどではないので相性的に魔導士はやや不利か
「……こんなもんか。ちょっと雑だけど」
俺はメモを書き終えると、『洋紙』を束ねた『メモ帳』をインベントリにしまい込んだ。
後はこれを見て戦闘を思い出しながら、情報を整理して攻略サイトに書き込めばいい。
……弓術士2、近接2、神官1が理想PTになるだろうか。
「でも、道中は魔法に弱い敵ばっかりなんだよな。やっぱスルーできるルートは必須か」
「そうですね。ですが安全を期すなら、近接を減らして二度グリフォンを落とす方が良いかもしれません」
「うん、そっちのほうが安定はするだろうな。RTAやってる訳じゃないんだし」
「おーい、まだ終わらないのか? 暇だぞ、私が」
ユーミルの率直過ぎる言葉に、俺とリィズは顔を上げた。
その言葉に従う訳でもないが、考察は後からでもできるか……。
「悪い、今行く! ……このペースだと港に着くのは明後日か?」
「まぁまぁ、のんびり行きましょうよ先輩。私的には、このペースがちょうどいいんで」
「あなたはそうでしょうけど、なるべく攻略情報は早く上げたいのですよ?」
「うむ、だったら加速だな!」
「えー……」
シエスタちゃんでちょうどいいペースということは、かなり遅いのだろう。
しかし、今のフィールド攻略・検証はあくまで一つ目ということなので……。
「次は慣れも出るだろうから、加速は可能だと思う。みんなも、ルートの検証とかは今の通りやれるだろう? 俺が何も言わなくても」
「そうでござるなぁ。地形が変わるならともかく、次も砂漠でござろうし……」
どこまで行っても砂漠、砂漠なのは国の特徴なので仕方ない。
トビの言う通り、見通しが悪い森林地帯なのでは先程やったようなルートの探り方では通用しないのだろうけれど。
俺の頷きに、リコリスちゃんが考えるように小さく体を揺らす。
「あっても岩石地帯とかですよね?」
「岩石地帯……」
「ハインド、セッちゃんから採掘したいという波動が伝わってくる! どうする!?」
「えーと……程々でいいなら……」
「い、いいの!? ありがとう!」
あくまでも岩石地帯に行き当たれば、の話であるが。
しかし、次に進んだフィールドは岩石地帯ではなく……。
「ああ、このパターンもありましたね……」
サイネリアちゃんの呟きに、俺たちは各々フィールドを見回した。
そこには、やや砂丘が少ない平坦な荒れ地に群生するサボテンたちの姿が……。
試しにサボテンの一つに近付いてみると、どうやら採取可能なようだった。
スコップで根元から掘ることも――って、大物相手だと絶望的に時間がかかりそうだな。
サボテンは大小様々で、見たところ種類も一つではなさそうだった。
「どっちかっていうと妹さん向けのフィールドでしたね。飛びかかって抱きしめないんですか?」
「私に棘だらけ、傷だらけになれと?」
「じょ、冗談ですよ冗談。冗談ですから押さないで!」
「私が抱きしめたいのはハインドさんだけです」
「わ、私も別に鉱石を抱きしめたい訳では……」
セレーネさんの小さな抗議の声は、二人の耳には届いていない。
それはそれとして、どうするべきかなこのサボテン。
「スルーは勿体ないよな? トビ」
「小さいのをいくつか根元から掘り返して、後は王都に帰ってから栽培すれば良いのでは? 取捨選択が大事でござるよ、多分」
「そうなんだけど、ルート検証とは分けたいような気もするな……どうしようか」
採取に夢中になると、マッピングが覚束なくなる可能性がある。
それを聞いたサイネリアちゃんが小さく手を上げた。
「では、復路でやるというのはどうでしょう? 今夜は次の町まで行けずに、王都に戻ることも考えられますし」
「いいや、次の町までは行くぞ! そこを足がかりに、二日で港まで行く!」
「港まで行く! だよ、サイちゃん!」
「……だったら尚の事、後回しにしましょう。港に着いた後も、資材を運びに王都に戻ったりもするんですよね?」
「うん、その予定。……じゃあ折衷案だ。俺やリィズが立ち止まって何かを書いている時には、他のみんなは近くのサボテンを採取してくれ。それならルート検証に障ることもないだろう」
二人の意見を聞いて、俺はそんな意見を出してみることに。
……やっぱり勿体ない気がするんだよな、これだけ採取ポイントが目の前にぶら下がっていると。
すると反対意見も特になかったので、最後にセレーネさんにも確認を取る。
「セレーネさんも、岩石地帯があった場合はそれでいいですか?」
「うん、もちろんOKだよ」
よし。
これで俺とリィズが立ち止まっている間に行える、他のメンバーの仕事ができた訳だ。
よほど長く止まらない限り、暇だ早く行こうと急かされることもないだろう。
そうして俺たちは群生するサボテン林、とでも言うべき場所をソロソロと固まって進んで行くと……。
「痛っ!? 何かに足を殴られたっ!?」
「やっぱりか……離れろ、ユーミル! モンスターだ!」
モンスターが潜んでいそうだという話をしたばかりのところで、ユーミルが引っかかってしまったようだ。
しかし、本人の申告通り姿は見えず……。
「んん……? 確かにユーミルのHPは減ったんだが……」
「どこでしょう……?」
「……」
目を凝らしてみても、モンスターがどこにいるのか分からない。
このフィールドは戦士団の遠征の範囲外なので、異常に小型なのだろうか?
――と思い更に注視するも、やはり見つからず。
やがてユーミルがかっと目を見開き、ラクダの上から地面に向かって飛びかかる。
「そこだぁぁぁっ!!」
「お、おい!?」
ドシャ、っと土煙と砂煙を上げながらユーミルが掴んだものは……。
暴れる「透明な何か」のようだった。
そしてHPが表示、姿が見えるようになったと同時に俺たちは声を揃える。
「「「ああ、カメレオン!」」」
正体が分かったのはいいが、これは中々の難物ではないだろうか……?




