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沈静化とその後 前編

 ラーメン屋を出て適当に歩く。

 すると温まった体の熱を、寒風が奪っていき……。


「うおー……めっきり寒くなってきたなぁ……」

「ほんとほんと。ところでわっち、今更だけど理世ちゃんと未祐っちの昼飯は? 明乃さんもだけど」

「理世は塾だから弁当を持たせた。未祐は週一恒例の家族サービスを受けてる。母さんは夜勤明けで寝てる」


 二人の帰宅時間・起床時間は大体決まっているが、未祐は章文おじさんの都合次第で短かったり長かったり。

 大体食事一回を挟んで帰ってくるので、夕飯は一緒にという連絡がそろそろ来るはず。


「未祐っちのお父さん、マメだよねぇ……」

「ほとんど家にいないから、嫌われたくないんだとさ。休みの前の日になると、最近の食事のメニューを俺に訊いてくるんだぞ? なるべく被らないようにって」

「凄くマメだね!?」

「仕事と娘関連以外は、未祐と同じで大雑把なのにな。大した親バカっぷりだよ……」


 俺に言わせてもらうなら、未祐に直接訊いた方が早いと思うのだが。

 おじさん曰く、娘の気持ちを分かっている父親を全力で気取りたいのだそうだ。ご立派。


「でもそれ、例えば在宅系の仕事のお父さんだったりしたら――」

「間違いなく鬱陶しいと思われていただろうな。普段忙しいからこそ、あの態度でも大丈夫なんだろ」


 未祐側の態度が割とフラットなので、親子仲はそこそこといったところ。

 それでもあの年頃の娘を持つ父親としては良い方だろうな、きっと。


「ところで、目的地もなく決めずに歩き出しちまったけど。どうする?」

「あ、じゃあそこに入ろうよ」


 秀平が指差した場所は――。




「ゲーセンかよ……」


 賑やかな音の洪水が押し寄せてくる。

 色々と喋るのには向かない場所だと思うのだが……。


「え、何? わっち」


 案の定、俺の声は聞こえていなかったらしい。

 喫茶スペースは筐体から遠い場所にあるので、話すならそこか。

 だが、その前に。


「少し遊んでから座るんだろう? ぐるっと軽く回るか」

「さすが、話が分かるぅ! 偶にはゲーセンのゲームで体を動かさないとね!」

「お前の運動ってのは、ゲーセンでゲームすることを指すのか……?」

「もちろん! 俺の手は常に、ゲームのコントローラーを握るためにあるのさ……」


 秀平が目を閉じ、手を開閉しながら呟く。

 そんな、君の手を――みたいなノリで言われてもな。

 俺としてはこう答えざるを得ない。


「ははは、だっせえ」

「何ですと!?」


 ということで、お年寄りや家族連れが多めのメダルゲームコーナーを進み……。

 クレーンゲームコーナーの景品を眺めながら歩く。


「最近の景品は良く出来てんなぁ……」

「わっちはこういうのやらないんだっけ? これをやるお金で帰りに食材を、とか考えちゃう?」

「こういう場でそういう無粋なことを言う気はないんだが……ムキになると危なくないか? ついつい散財しそうで」


 秀平ほどではないが、元々俺はゲームが好きな人間である。

 だからクレーンゲームが持つ魅力というか魔力も、何となくは理解しているつもりだ。


「あー、分かる。意地でも取ってやろうって気にはなるね。特に落ちそうで落ちないやつが……やってみても、最初から箸にも棒にもかからない――てやつはすぐに諦めがつくんだけど」

「アームの設定とか景品の起き方次第だろうなぁ」


 話を続けながら、秀平お目当てのゲームの前へ。

 音楽ゲームをプレイするのを、俺は横に立って眺める。

 手を使って降ってくるアイコンに合わせるタイプのゲームだな。


「――うっし、フルコン!」

「おー」


 しれっと上級者向けのテンポの速い曲をパーフェクトでクリア。

 TBのアイテム投擲もこれくらいリズミカルに正確にやってくれんかな?

 これを応用できれば――って、難しいか。

 後ろで待っていた人と交代し、腕の筋肉を解すように秀平が腕を軽く振る。


「いやー、久しぶりでもやれるもんだね。そういや、音ゲーやってる姿って横から見ててどうなん?」

「どうって……格好いいか悪いかは分からんが、取り敢えず高速で連打してるのを見るとびびるな」

「あー、なるほど」

「あと、脳に良さそうって気はする。……けど、消費カロリー的にはどうなんだ? これ。ほとんど腕しか動いていないよな?」

「さあ?」


 さあって、お前が運動代わりだって言い出したんじゃないか。

 その後、二人でシューティングゲームの協力プレイを一回。

 ワンクレジットでラスボスまで行ったが、ライフが尽きて終了。

 続いて最新の格闘ゲームで俺が秀平に瞬殺されたため、レトロな格闘ゲームで対戦してボコボコにしてやった。


「わっち、いつもながら速度の遅い昔のゲームだとやたら強いね……」

「って、どんどん体を動かさないゲームに行っていないか? 別にいいけど」


 そしてようやく喫茶スペースへ。

 ジュースを買ってテーブルに置き、秀平がスマートフォンをポケットから取り出す。


「そんじゃ、メールで送るぜぃ」

「ああ、助かる」


 送られてきたファイルを開き、ざっと眺める。




170:名無しの神官 ID:HirMRwG

PK綺麗に掃けたねー

それこそ波が引くように……


171:名無しの武闘家 ID:nUbpt4J

レッドネームがやられたせいかも

上位ランカー>レッドネーム

みたいな図式ができちゃったから


172:名無しの軽戦士 ID:nGa4VzG

PKに負けたギルドもいくつかあるけど、

やっぱりエルガー撃破が決定打だったかな

エルガーよりも上位のレッドネームは出張らなかったんでしょ?


173:名無しの騎士 ID:iUifGRs

賞金首トップのペルドとかは出てないな


174:名無しの魔導士 ID:YizgwXS

一番上で撃破されたのは10位のエルガーだね

後は23位のシトルイユ、35位のお命頂戴、40位のβとか

しかしえぐいね、賞金首ランクの落ち方


175:名無しの魔導士 ID:BjMGfgi

撃破で半額まで落ちるんだっけ?

エルガーはエーヌと一緒に一気に90位代になったな


176:名無しの重戦士 ID:UAiy3pB

一度もやられない前提のランクだからね


177:名無しの神官 ID:HirMRwG

半額でもレッドネームのままなのが驚きだよ、むしろ

そして減る前の全額を受け取ったプレイヤーがいるという事実……

勇者ちゃんマジ勇者ちゃん


178:名無しの軽戦士 ID:nTgQ2Tm

イベントの賞金より全然多くないか?

取引掲示板のアイテム何でも買えそう


179:名無しの武闘家 ID:TM3V8cP

え? でもこれ、一人で撃破したんじゃないでしょ?


180:名無しの神官 ID:3ZsTXH5

シリウスと一緒だから分配したかもね

特段、渡り鳥とシリウスが揉めたとかって聞かないし


181:名無しの弓術士 ID:pGxepfy

エーヌもセレーネが獲ったんだっけ?

渡り鳥のプレイヤースキルはおかしい、絶対おかしい

そして合計金額を両ギルドで分けたとしても……ごくり


182:名無しの騎士 ID:WJbAFA9

シリウスってどこだっけ?


183:名無しの魔導士 ID:DAdEhW3

ヘルシャフトお嬢様と使用人軍団のところ

グラド代表三ギルドの内の一つだぞ


184:名無しの重戦士 ID:UAiy3pB

ああ、いつも微妙にソールに負けてるとこか……


185:名無しの重戦士 ID:jJPRx3e

成績はそうだけど、直接対決したことあったっけ?


186:名無しの弓術士 ID:pGxepfy

ないけど、

あそこは生産系のバックアップが弱かった気がする

直に殴り合ったら負けるんじゃない?


187:名無しの武闘家 ID:FjTSEZf

あそこはふんぞり返るお嬢様を見つつ、

好みのメイドさんを探すゲームをするギルドぞ


188:名無しの神官 ID:BC8pdBG

団結力が高くて普通に強いギルドなんだけど、

カテゴリー的にはネタギルド

そしてネタギルドだけど強い


189:名無しの弓術士 ID:Hj95nrz

今回もレッドネームをお嬢様が倒せていないところがポイント高い

また勇者ちゃんに負けとるやないか!


190:名無しの重戦士 ID:trTM8is

は? 俺は炎特化のあのスタイルが好きなんだけど?


191:名無しの魔導士 ID:eUPTYxJ

どっかで似たようなことを言ってる人を前に見たような……

まあいいや、お嬢様は実は俺もひっそり応援してるぜ

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