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VRMMOの支援職人 ~トッププレイヤーの仕掛人~  作者: 二階堂風都
ランクシステムとランクアップのすすめ
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パーティ編成の小話とその対策

「今更だけどさ。俺らって、どっしり腰を据えて戦う類のパーティ構成ではないよな?」


 マッチング待ちの時間を使い、俺はそんな話をみんなに振ってみた。

 一対一だとこんな時間はないのだが、五対五だと連戦でも良い感じに作戦会議や反省会に利用することができる。


「まあ、そうでござるな。拙者が攪乱して――」

「私が前で暴れながら、後ろに行きそうなやつをとっちめつつ!」

「私は闇魔法で一人ないし複数を拘束ですね。もしくは、相手が耐久パーティの時はデバフを」

「そして私が詠唱妨害兼火力担当……かな?」

「攻防一体と言えば聞こえはいいけど……攻撃偏重だよな、どうにも」


 後手に回ると、途端に不利になる構成だ。

 ただ、ユーミルの勢いにパーティ全員が乗れた時はこの上なく強い。


「ふむ……反対に、理想的な耐久パーティというとどんな感じだ?」

「色々あると思うが……そうだな」


 ユーミルの質問を聞きつつシステムメッセージの表示を見ると、未だマッチングは完了していない。

 そろそろ遅い時間になってきたことも関係しているだろうし、それだけ人口の少ない上のランクに近付いている証拠でもあるだろう。

 あまり下のレートのパーティと対戦させられても困るので、多少の待ち時間は問題なし。

 

「まずは無難に騎士三人、神官を二人配置の編成とか。弱点なし、試合時間は伸びるがどんな相手が来ても安定感のある編成だ」

「あー、なるほど。パンチはないにせよ、堅牢でござろうな。一人をユーミル殿と同じ攻撃型アタックタイプにするという手もあるでござるし」

「片方の神官を均等型バランスタイプにしてもいいしな。回復能力が下がるし蘇生ができなくなるが、攻撃力は上がる」


 前衛を騎士としたのは理由がある。

 重戦士は盾役としては魔法に弱く、HPで受けると神官の負担が増えるのでどうしても安定感に欠ける。

 よって、よりテンプレート的な編成を語るならこの職構成になるだろう。


「この編成への基本対策は、とにかく神官を先に倒すこと。俺らの場合はセレーネさんの狙撃頼りになるけど、自信があるなら――」

「火力で騎士ごと押し潰す!」

「……ってのも、一つの手だ。敵を複数纏めて攻撃できる――例えばバーストエッジなんかを的確に当てていけば、神官二人の回復力を上回ることもできるだろう。デバフがあると尚良しってところか」

「力押しということですか。スマートではありませんね……シンプルではありますが」

「まあ、そうは言うけど。とある編成が相手だと、実質その方法しか取れないしな。リィズなら予想がつくんじゃないか?」


 ややムッとした様子のユーミルを手で制しつつ、リィズに問いかける。

 TBのデータは一通り頭に入れたということなので、この賢い妹ならばすぐに答えに辿り着くだろう。


「――武闘家・気功型チーゴンタイプ単編成……ですか?」

「正解!」

「ふむ、つまり不死身のスピーナ単編成か。そう考えると強いかもしれん」

「ユーミル殿、それ本人が聞いたら微妙な顔をするでござるよ……?」

「それもそうだが、俺は五人もいねえよ! って、律儀に突っ込んでくれるんじゃないか?」


 スピーナさん、割とノリのいい性格をしているし。

 それと、身近なところで言うと執事のワルターも気功型チーゴンタイプだ。

 あちらは同型でも攻撃重視のスタイルだが、どちらも武闘家として甲乙つけがたい強さを持っている。

 自分たちの武器をカチャカチャ鳴らしながら喋る俺たちに、セレーネさんが苦笑しつつ話を繋ぐ。


「あれ、でもデバフとか状態異常なんかの搦め手は……ああ、そっか。自己回復だけじゃなく、自力で状態異常を解除できるんだよね? 気功型は」

「そうなんですよね。セレーネさんには釈迦に説法でしょうけど、武闘家は重装備に対する適性がないんで――」

「低めの防御力が狙いってことだね。蘇生手段はないから、各個撃破がいいのかな? こっちのパーティ構成の場合は」

「ええ、そうなると思います」


 一見ネタ編成のようだが、単一編成の中では実用的な部類だ。

 個々の力が強ければ、通常のバランス型パーティを圧倒できる可能性を秘めている構成と言えよう。

 弱点は先程話した防御力の低さの他に、攻撃全般のリーチの短さが挙げられる。

 ゲームのサービスが始まったころはHPが高く総合的な防御力もまあまあだったのだが、最近は装備性能のインフレに置いていかれ気味だ。

 致命傷をしっかり避け、的確に回復を使っていくプレイヤースキルがなければ活躍できない上級者向けの職業となっている。

 そうして上手くスキルを回せた場合は、それこそ不死身の……ギルド戦の時のスピーナさんのような力を発揮することができるだろう。


「では、ハインド。こういうのはどうだ?」

「こういうのって?」

前衛型フォワードタイプの神官が五人……どうだ!? 堅いだろう!」

「堅いっちゃ堅いが、完全にネタ編成だなそれ。攻撃力が低過ぎて、そもそも勝つ気がないっていうか……」

「タイムアップ狙いなら、ありなのではござらんか?」

「あー、そっか。タイムアップした時に残った人数が同じ場合、HPの残量で勝敗が決まるんだったな。でも、やっぱどちらかというと嫌がらせに近い消極的な――」


 俺が最後まで言い切る直前、マッチング終了の表示が。

 口を噤んで待っていると、現れたのは重武装で杖かメイスを装備した面々の姿だった。


「……」

「……」

「……えっ?」

「噂をすれば、というやつだな!」

「ハインド殿……対策は?」

前衛型フォワードタイプの神官には、武闘家と同じで蘇生手段がない。後は、その……分かるだろう?」


 相手の攻撃力が低めなので、一人でも戦闘不能にできた時点でほぼこちらの勝ちが確定する。

 結果、どうなったかといえば……最後に立っていた相手のメンバーは二人だった。

 五人残ったこちらの判定勝ちが宣告され、敗者が強制的に移動させられる。


「勝った、けど……」

「半端じゃない疲労感でござるな……他の相手とだったら、今の時間を使って二・三戦は行けたような」

「面倒な奴らだったな! 相手に与えるストレスという点では、今までの中で一番だったぞ!」

「……ユーミルさんがおかしなことを言って招き寄せるからですよ」

「わ、私のせいなのか!?」

「ま、まあまあ……でも、あれでAランクなんだから負けちゃう人たちも多いってことだよね?」

「一人目を倒し切る攻撃力がなければ、俺たちだってそうなっていた可能性は十分にあるでしょう。セレーネさんも見ましたよね? 彼らの回復リレーの手際」

「うん……戦法としては嫌われる類のものだけど、練度はとても高かったよね」


 一人のHPが危険域に達した直後、二人か三人が前に出て攻撃をガード。

 後ろに上がった残りのメンバーが回復、そして前に出ていたメンバーと交代。

 こうやって『ヒーリング』、『ヒーリングプラス』を回しながら前で攻撃を受けてMPを溜める。

 この繰り返しで、上手く突破できなければ無限ループへ一直線だ。


「影縫い、ダークネスボール、エントラスト、バーストエッジにブラストアローと綺麗に繋がったよな。しかし堅いの何のって」

「ダークネスボール中にヒーリングプラスが一つ、バーストエッジの一段目と二段目の間にもう一つ入っていましたから、そのせいですね。セッちゃんが見逃さずに追撃をかけてくれて良かったです」

「あっちはあっちで完璧な回復タイミングだったから、凄く緊張したよ……」

「バーストエッジを受けて倒れなかった時は拙者、己の目を疑ったでござるよ」

「何だかんだ神官には違いないから、魔法攻撃には強いんだよな……さて、今の戦いで結構遅い時間になっちまったけど。どうする? ギルマス」


 理由はないのだが、対戦相手の練度が上がってきたことでSランクの気配のようなものを感じる。

 あと一押しで上がれるような予感は、きっとメンバー全員が持っていることだろう。

 それを汲み取ったのか、俺たちの表情を見まわしていたユーミルが大きく頷く。


「うむ、もちろん前進だ! ただ、ここから五戦ほどやって上がらなかった時は……」

「ああ、残りは明日にしよう。連勝補正は惜しいが、さすがに時間的に限界だからな」


 全員の同意を得たところで、ユーミルが連戦するか否かの問いに対して『はい』のボタンを押した。

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