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VRMMOの支援職人 ~トッププレイヤーの仕掛人~  作者: 二階堂風都
ランクシステムとランクアップのすすめ
524/1095

秀平の切り抜き掲示板

 そのメールが届いたのは、夕食の準備を始めようかというころ。

 幸いまだ手を付ける前だったので、スマホを取り出して内容を確認すると……。


「秀平からか……ファイル付き? ……何だこれ?」

「……?」


 手を止めた俺の姿に、理世が顔を近付けてくる。

 見てもいいかという目だったので、スマホごと理世へと渡す。


「……TBの掲示板の抜粋を寄せ集めたもののようですね。私たちに関連するものと、残りは……」

「例の噂に関するものか。ありがたいけど、タイトルをもっと分かりやすくしろよな……」


 メールのタイトルには一言「刮目かつもくせよ!」とだけ書かれている。

 折角送ってくれたものであるし、まだ時間に余裕はある。

 そんな訳で、俺と理世は一旦リビングへ。

 椅子を引くと、学校の課題を夕飯前に終わらせるべく奮闘している未祐が顔を上げた。


「む、どうしたのだ?」

「ああ、ちょっとメールが……未祐、進み具合は?」

「順調だ! ちょうど一息入れようと思っていたところだが……」


 何かあるのなら教えろ、という表情だ。

 課題は古文……未祐の苦手教科ではないので、ここで休んでも夕食には間に合うだろう。


「ならちょうどいいか。待ってろ、お前らにも転送するから」

「兄さん、お茶を淹れましょうか?」

「ありがとう、頼むよ」


 転送が済み、湯気を立てる湯飲みが三人分用意される。

 未祐は楽しそうに、理世は無表情でそれぞれスマホを眺め始めた。

 俺はというと――


「集団戦しかしていないから大丈夫……だよな? 多分」

「何を言って――ああ、この前言っていたあれか! 自分の話題は、物によってはこそばゆいとかいう。心配するな、秀平の抜粋……秀平………………秀平のだったか、そういえば……」

「秀平さんですからね……」

「秀平フィルターだからな……」


 何だろう、話していて余計不安になってきた。

 しかし見なければ始まらないので、ここは一気に。




978:名無しの神官 ID:g7Em8yA

>>974 立ておつー

やっと上がってきたみたいね、渡り鳥のパーティ

これでサーラの有名ギルドは大体出たかな?


979:名無しの武闘家 ID:adw7VsN

Dランクで当たったからびっくりしたわ

あんなのどうやっても勝てないっちゅうの


980:名無しの弓術士 ID:85drhn7

そういう駆け上がっていく人らに当たるのは、

低ラン安定のプレイヤーからしたら事故みたいなもんだから……


981:名無しの魔導士 ID:hUQ6buD

レベルカンストは当然として、

装備も連携も差がひでえや


982:名無しの魔導士 ID:4hdPQRd

気が付くと遥か彼方のランクになっているよね……

負けた相手が高ランクの観戦リストに載ってると、凄く気になる


983:名無しの弓術士 ID:V4pxwD3

俺たちは踏み台じゃねえ!

だから助けてアルベルト!


984:名無しの重戦士 ID:2uP989g

彼に頼んで上げたところで、

そんな嘘のランクに価値はあるのか……?


985:名無しの軽戦士 ID:p42sttN

じゃあフィリアちゃん単品……は無理か

親子セットじゃないと依頼できないらしいし


986:名無しの神官 ID:zhM3UQa

そもそもアルベルト親子なんて捉まる気がしない

忙し過ぎるでしょ、あんなに依頼料高いのに


987:名無しの武闘家 ID:bphNB2P

今のところ、

PvE能力とPvP能力が大きくかけ離れているランカーは少ないね

大体順当に決闘ランクも上のほうにいるっぽい



254:名無しの弓術士 ID:k8fkkgb

明確に指揮官が決まってるとこは、

そいつを倒せばワンチャン

特にギルマス連中がいるPTは撃破時の効果が顕著


255:名無しの騎士 ID:QjSXF8i

レーヴ、弦月、にっころがし辺り?

アノ、ソラールだと周りも全員強いから、倒せたところで……

あ、あとギルマスじゃないけど本体ね

本体は分かりやすくPTの急所だと思う


256:名無しの弓術士 ID:Cei5JtU

>>255 に同意だわ

渡り鳥に関しては、

本体さえ倒せば簡単に瓦解するような気がしてるんだけど


257:名無しの軽戦士 ID:M2VVi25

素で強い上に倒しても即復帰する勇者ちゃんと、

縮地を使いこなす忍者を突破できるならね……


258:名無しの武闘家 ID:pix6d3m

弓術士で撃ち抜けない?


259:名無しの弓術士 ID:GUHpTbN

無理無理、本体って何故かやたらと回避が上手いもん

それに本体ばっか見てるとセレーネもリィズも的確に撃ってくるし……

本体は前衛が突っかけると慌てるっぽいから、そっちのほうがまだ良さげ

そして>>257 に戻る


260:名無しの重戦士 ID:aiKz9KS

突っかけるところまで行ってないじゃん、駄目じゃん


261:名無しの騎士 ID:J373iZC

結局どうしたらいいの、渡り鳥対策

今Aランだからそろそろ当たりそうで嫌なんだけど


262:名無しの重戦士 ID:n5pA7ba

俺は運悪くBランで三回も当たったけど、

偶に本体が前のほうにいたりもするからよく分からん……

釣られて前に出ると四人から袋叩きに会うし


263:名無しの魔導士 ID:NrQuDQ4

あいつ滅茶苦茶嫌なタイミングで前に出てくるよ

こっちの大魔法の詠唱の終わり際とか、

勇者ちゃんの体勢が崩れてチャンスの時とか

その辺にいる支援型神官の動きじゃないわ


264:名無しの神官 ID:rnBDmEx

もう五人全員で本体に突っかけるのが一番いいんじゃね?

こっちが魔導士だろうと神官だろうと全員で


265:名無しの軽戦士 ID:M2VVi25

本体が不得意っぽい乱戦狙いか、ありだな……


266:名無しの重戦士 ID:S4Zfe84

そういや、渡り鳥の妹分?

同盟? だかのヒナ鳥もやたら強いんだけど

誰か当たった?


267:名無しの武闘家 ID:pix6d3m

知らないなぁ


268:名無しの弓術士 ID:b8S7u5X

三対三?


269:名無しの重戦士 ID:S4Zfe84

そう、三対三

あと、騎士の元気な子はよく一対一にいる


270:名無しの弓術士 ID:arGkPnY

あー、当たったわ

中学生くらいだと思ってなめてかかったら惨敗だった……


271:名無しの騎士 ID:WdRgyu2

職バランスもいいし、弱点らしい弱点もないんで

総合力で勝るしかない

蘇生がないんで、こっち三人残して一人倒せればいける


272:名無しの神官 ID:ujAZ3YE

ヒナ鳥の何が怖いって、三人全員が可愛いことかな……


273:名無しの軽戦士 ID:R6ZfB8X

そんなん渡り鳥の女子も一緒やん

他だとアルテミスの弦月とかは見惚れるわ、

つい動きを目で追っちゃう


274:名無しの重戦士 ID:n5pA7ba

容姿がいいのも立派な視界デバフ



555:名無しの騎士 ID:MFLAsf8

縮地で目の前に現れるのめっちゃ心臓に悪いな

さっき例の忍者にやられたわ


556:名無しの神官 ID:cDaT2HD

ウチの重戦士の肩の上に乗ってたのは戦闘中だけど笑った

あんなこともできるのね


557:名無しの神官 ID:4KcUutF

詠唱中に後ろから攻撃されるのがすげえ腹立つわ

あいつがいる時は前衛の近くで戦った方がいいかもしれん


558:名無しの魔導士 ID:9ChYyzG

よくギリギリに転移できるよなぁ

使っている人は他にもいるけど、少し距離を開けた位置に出てくるのに


559:名無しの軽戦士 ID:4Mc6ex3

でもあいつ、一回ミスって盛大にスタンしてたぞ

勇者ちゃんと本体がスタン中のあいつを守るた




 二つに分けられたファイルの一つを読み終わったところで、俺たちは一息ついた。

 といっても全員が全員、微妙な表情をしている訳だが。


「秀平、自分の功績をアピールしようとしてオチまで付いてるじゃねえか……何だこれ。ワザとか?」

「いえ。文章が途切れていますし、コピーなりペーストなりのミスでしょう、きっと。この一つ前までのレスを張り付けるつもりだったのでは?」

「やはり役に立たんな、秀平フィルター!」


 確かに、ろ過すべきものが駄々漏れになっている。

 それでも抜粋箇所を三か所ほどに絞って纏めてくれているので非常に見易い。

 他に触れるところというと……自分のことに関する記述が多かったが、スルーという訳にもいかないか。

 持ち上げられるばかりでなく、こういう公平な視点の意見ならまだ冷静に見られる。


「昨日、俺が集中的に開幕からの特攻を受けまくったのはこの掲示板のせいだったか。あんなの誰でも動揺するっての」

「うむ、対策されていたか。初戦は目論見通りに負けてしまったしな……思い出したらまた悔しくなってきた」

「いいシミュレートになったと思っておきましょう。一発勝負の大きなイベントなどで、あの戦法を採られなくて良かったです――兄さんを殴ったあの人たちは、次に会ったら絶対に許しませんが」

「お、おお……ま、まあ、再戦の機会があったら次は勝とうな」

「はい」

「当然だ!」


 後は何と言ってもヒナ鳥たちに関する記述か。

 俺はお茶を一口啜ってから、緩む口元を抑えつつレスを読み返した。


「しかし……こうしてヒナ鳥たちが認められていると嬉しくなるな」

「その通りだな! ……本当にその通りだな!」

「うるさいですよ、未祐さん。声が大き過ぎます」

「お前は嬉しくないのか!?」

「私は……」


 今度は理世がお茶を啜って一息。

 それを未祐がじっと見ている。

 答えるまでは目を離さない、といった様子だ。

 やがて理世が根負けしたのか、小さく呟く。


「まあ……私も、嬉しいですよ」


 理世の顔を背けての一言に対し、未祐が白い歯を見せて二ッと笑った。

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