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VRMMOの支援職人 ~トッププレイヤーの仕掛人~  作者: 二階堂風都
ランクシステムとランクアップのすすめ
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リコリスの挑戦 その3

 勝ち進む度に、戦いの緊張感は増していく。

 相手の隙は減り、逆にこちらが見せた隙は相手が見逃さない。


「トビ!」

「承――」


 俺の呼ぶ声に、トビの姿が掻き消える。

 残ったユーミルが重戦士を、トビが戦っていた武闘家を俺が一瞬だけ足止め。


「知っ!」


 途切れた言葉の続きは、相手パーティの後方から。

 敵魔導士の下へ跳躍したトビが、左右の刀を一閃!

 大魔法の詠唱が途切れ、更に怯んだ魔導士を風圧――セレーネさんが放った矢が攫って行く。

 まず一人目、と思う間もなく回復に入ろうとした神官をリィズが闇魔法で拘束。

 そのままセレーネさんの二射目が間に合い、神官もノックアウト。


「くそっ、初動で本体を潰し損ねるから!」

「まだ行ける、ハインドから倒せ倒せ!」

「っ!?」


 残った目の前の武闘家、それから弓術士の矢がこちらに向かった飛来する。

 タイプこそ違うが、互いの後衛三人の職業クラスはミラーだ。

 回復を封じてからの逆転を狙うべく、攻撃が殺到してきた。

 まずいな、トビが戻るまで支え切れるか……!?

 こういう時は、縮地の短いWTが長く感じ――


「待たせたな、ハインド! 後は私に任せろ!」


 力強い言葉が耳に届いた直後、武闘家を長剣が斬り飛ばす。

 ユーミルが直前まで戦っていた場所には、力尽きた騎士が横たわっていた。

 俺が礼を言いながら少し下がると、ユーミルがこちらに向かって得意げな顔で振り返る。


「ちなみに今のは個人的に言ってみたかったセリフ、第――」

「何位でもいいから、矢! 来てる来てる!」

「むんっ!」


 俺が指差した方向を碌に確認もせず、ユーミルは反転しつつ剣の腹を向けた。

 硬い矢尻と剣が金属音が響かせ、矢を放った弓術士が唖然とした表情で口を開ける。

 余裕ありと見て、進路を変えたトビがその弓術士の前に『縮地』で現れ……。

 更にこちらの後ろには次矢装填してクロスボウを構えるセレーネさん、詠唱を開始したリィズの姿もある。

 弓術士は立ち上がった武闘家共々武器を捨てると、呆然としたまま宣言した。


「こ、降参します……」




 まだランクは上がっていないが、トビの『縮地』が連携に馴染んできたこと。

 それから俺の中衛行動のミスが少し減ってきたことで、戦績は安定。


「考えてみれば、サーラ初入国以来のメンバーだものな! 連携が良くて当然だ!」

「当然かどうかは分からんが……そうだな。みんなイン率も高いから、一緒に戦う機会は多かった訳だし」

「重畳重畳。このままBランクは抜けられそうでござるな」

「そうだね。連勝補正も効いている……はずだしね。多分だけど」

「……リコリスさんのほうはどうなりましたかね?」


 リィズの言葉に簡易マップを確認すると、神殿内には反応がなかった。

 フレンドリストを見ると決闘中と表示されている。


「まだ戦っているみたいだ。サイネリアちゃんとシエスタちゃんは……」

「観戦中、となっているな。三対三はもう終わったのか」


 俺たちと分かれる前、ヒナ鳥たちは三対三をしばらくやると言っていた。

 こういう状況になっているということは……。


「これはシエスタちゃんがバテたか、リコリスちゃんの元気が有り余っているかだな。或いはその両方」

「私もハインドさんと同意見です」

「目に浮かぶようでござるな……」

「あ、あはは……とりあえず、私たちも見に行ってみようか?」

「うむ、行ってみよう!」


 決闘の観戦は基本的にオープンである。

 非フレンドやギルドメンバー以外のものは膨大なリストの中から目当てのものを探す必要があるが、そのどちらかならば話は簡単だ。

 操作盤でフレンドの中から決闘中のものを呼び出し、決定。

 決闘する時と同じようにポータルに乗って転移すれば、そこはもう決闘場の中だ。


「――あ、先輩方」

「先輩……リコに付き合って疲れたので、背負ってください……」

「ほら、やっぱり。ハインドさんも疲れているのですから、自分で立ってください」

「うあー。妹さんのいけずー」


 よたよたと寄ってくるシエスタちゃんの頭を抑え付けながら、リィズがセレーネさんを振り返る。

 それに対してセレーネさんは困ったように笑うのみだ。

 結局シエスタちゃんはリィズに追い払われ、サイネリアちゃんに寄りかかるような体勢でその場に立った。


「枕、枕さえ出せれば……」

「決闘エリアはアイテム使用禁止だからね……ってか、こんなところで寝る気なの?」


 鍛冶場で横になれるくらいだから、こんな場所でも問題ないのかもしれないが。

 シエスタちゃんが決闘エリアの境界……見えない壁に手をついて嘆息する。


「先輩、防具型とかアクセサリ型の枕ってありませんかね……? 常に装備しておければ、こういう時にも――」

「作れたとしても、嵩張って仕方ないと思うよ……」


 リコリスちゃんの決闘はまだ始まる前――というよりも、連戦を選んだのだろう。

 戦いを終えた後に連戦を選択すると、ポータルを出ずにそのまま戦うことが可能だ。

 リコリスちゃんのほうにも音は伝わっているはずだが、集中してエリア中央で静かに呼吸を整えている。

 普段と少し雰囲気が違うな……。

 一方こちらでは、シエスタちゃんの言葉に対し今度はユーミルが応じている。


「それなら魔法で枕を圧縮できたりすればいいのではないか? 腰辺りにでも装備しておいて、取り出すとこう……もこもこ膨らむような。風魔法系で」

「それです、ユーミル先輩!」

「どれだよ……圧縮袋かよ。そんな技術はTBにな――TBでは発見されていないよ」

「言い直しましたね、先輩。つまり、今後発見される可能性は捨て切れないということ……! 探してください、先輩!」

「何で俺に言うのさ。せめて自分で探しなさいよ」

「やだ!」


 やだって……。

 余りに仕様もない会話に脱力したが、気を取り直して。

 シエスタちゃんの隣で苦笑しているサイネリアちゃんに声をかける。


「サイネリアちゃん、リコリスちゃんはどんな調子? 前戦までの様子どんなだった?」

「凄いですよ、今のリコは。一目見ていただければ分かると思います」


 その言葉の真意を問いただす前に、リコリスちゃんの正面に対戦相手が到着。

 集中しているリコリスちゃんの背中を見るに、これ以上開始前に話を続けるのは止したほうがいいか。

 戦いの邪魔になってしまう。

 ここはサイネリアちゃんの言う通り、実戦を見て判断するしかなさそうだ。

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