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VRMMOの支援職人 ~トッププレイヤーの仕掛人~  作者: 二階堂風都
ランクシステムとランクアップのすすめ
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リコリスの休憩時間 内部レート&ランク表示

 翌日、翌々日と戦いは続いていく。

 掲示板で取り沙汰されていたC~Bランク間の壁は容易に突破できたが、Bランクはそうもいかない。

 噂では連勝ボーナス、などというものもあるそうだがBランクはC以下に比べてレートの変動そのものが渋いのだろう。

 リコリスちゃんはBランクに入ってから大型連勝が二度ほどあったが、未だランクが変わる様子はない。


「むーん……」


 決闘再開三日目、リコリスちゃんが談話室で足をぶらつかせていた。

 ログイン早々、そんな場面に出くわした俺とユーミルは顔を見合わせてから中へ。


「こんばんは、リコリスちゃん」

「どうしたのだ? リコリス。妙な呻き声を上げて」

「あ、ユーミル先輩、ハインド先輩。何て言ったらいいのか分からないんですけど、その……」


 リコリスちゃんが動きを止めて言い淀む。

 その目はユーミルの頭の上のランク表示に向いている。

 ユーミルはその意図が分からなかったのか、小さく首を傾げた。

 リコリスちゃんが悩みながらも話を続ける。


「もやもやすると言いますか。調子は悪くないんですけど、こう……あ、決闘の話ですよ?」


 ユーミルは再度、反対側に頭をこてっと倒した。

 確かに、リコリスちゃんの話は要領を得ないが……。

 ――ああ、もしかしたらこういうことか?


「リコリスちゃん。ひょっとして先が見えない――終わりのない戦いって感じがして、もやもやする?」


 俺が試しに放った一言は、どうやらリコリスちゃんの思いに合致したらしい。

 大きな目を更に開いて二度、三度と頷く。


「あ、それですそれ! 罰ゲームって言われて延々と校庭を走らされるような……さすがハインド先輩!」

「どういうことだ?」


 ユーミルはまだ話の流れを理解できていないようだ。

 ――と、みんなが揃う前に満腹度回復の準備でもしておくか。

 ユーミルの問いに答える前に、石窯ピザの残りをインベントリから取り出す。

 焼き立ての状態で保存してあるので、放出される熱と共に香りが立ち上る。


「これ、この前の……! 食べていいんですか!?」

「どうぞ、今からお茶も淹れるよ。ユーミル、話を戻すぞ? つまり、明確な数字が見えないのはしんどいって話だよ。内部レートっていう形式のせいで、どうしても自分の現在地が読み難くなるからさ」

「むぐむぐ……なるほどな。終わりが近ければもう一押しのやる気が――」

「そうそう。ま、遠ければちょっとやる気が下がるけど。その分、無理のないペース配分が――」

「遠ければ、一気に昇り詰めるためにやる気が出ると! 数字が見えるというのは大事だな!」

「お、おう」


 ユーミルの暴論に近いモチベーション理論にはついていけないが、数字に関してはその通りだ。

 いくら元気なリコリスちゃんでも、先の見えない戦いに疲れが出てきたらし――


「でも、見えなければ見えないで戦闘終了ごとにドキドキしますよね! 次で上がるかも、それともまだかな? って感じで!」

「分かる、分かるぞリコリス! 逆に負けた時は別の意味でドキドキ……いや、ハラハラするがな! 特にランク昇格直後、レートが低い内は! わははははは!」

「それ、笑えないですよユーミル先輩! あはははは!」

「笑ってるじゃん……元気だね、君たち二人は」


 前言撤回、全く疲れてはいないようだ。

 笑っている二人を残して、俺はお茶を淹れるために少し席を外した。

 やがてみんなが到着し、しっかりピザを食べ尽くしてから小神殿へ。




「そういえば、ランクの非表示ってできないもんかな? 他のゲームだとできたりするんだよな?」


 俺がそんな疑問の発したのは、小神殿へ向かう道すがら。

 通り過ぎる他のプレイヤーの姿を視界の端に捉えながらのことだった。


「できるやつとできないやつがあるでござるな。まあ、常に表示だと何かとデメリットがあるでござるし、このイベントが終わったら実装されるのでは?」

「デメリットっていうと、具体的には?」


 何となく想像はつくが、ここは経験者の話を聞いておきたいところだ。

 ユーミルにその辺のことを訊いても無駄だし、ヒナ鳥たちもネットゲームを本格的にやったのはTBが初らしいので。

 トビが何処から説明すべきか、という表情で腕を組む。


「――例えば、拙者が知っている中だと初心者狩りが横行したあのゲーム……ノーランクなフリー決闘の猛者たちが、初心者を装って初心者狩り狩りをした思い出が……」

「思い出に浸っていないで、もうちょっと……お前、本気で解説する気ある?」

「一致団結してのPKK、楽しかったでござるなぁ……」

「駄目か、これは」

「ハインド君」


 要領を得ないトビを見かねたのか、セレーネさんが俺の脇腹をちょいちょいとつつく。

 どうやらセレーネさんがランク表示のデメリットについて解説してくれるらしい。


「簡潔にまとめると、今トビ君が言ったように決闘低ランク……つまり初心者が狙われやすくなるね。だからこそ、レベルの表示を切ったりできる訳だけど。決闘ランクも同じだね」


 TBでは初心者期間のプレイヤーのPK行為は不可となっているが、初心者期間終了直後のプレイヤーが狙われるパターンは当然存在している。

 懸賞金制度のおかげでPKKが活発なため、今のところ大きな問題にはなっていないが。

 自衛のため、その付近のレベルのプレイヤーが非表示にするのはお約束である。


「やっぱりそうですか。ちなみにですけど、切り替え可能だったとして表示しておくメリットって何かありますか?」

「こっちも察しがついていると思うけど、高ランクであればPK除けの効果があるね。ただ……」


 セレーネさんが言葉を切る。

 これは俺に言葉の続きを答えることを期待しての間だ。


「高ランクを率先して狩るような、強いPKばかりを呼び込む恐れがありますか? 代わりに、半端なPKは寄って来なくなるとは思いますけど」

「そういうこと。あと、ギルドやパーティへの勧誘が極端に多くなるのもデメリットかな……」


 それは人によってはメリットなような……と思ったが、セレーネさんからしたらデメリット以外の何物でもないな。

 俺たちがこんな話をした翌日、イベント終了後にランクの非表示機能の実装が公式サイトで予告。

 ただしイベント期間中は常に表示されること、それから一部スキルやアイテムを使用することで非表示になっている相手のランクやレベルを見ることが可能になることも合わせて記載されていた。

 これらの事柄に関しては、掲示板を見た限り意見が真っ二つ。

 多様なスキルの存在を歓迎する層と、PK行為の加速を憂慮する層とで賛否両論に分かれているらしかった。

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