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VRMMOの支援職人 ~トッププレイヤーの仕掛人~  作者: 二階堂風都
ランクシステムとランクアップのすすめ

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リコリスの挑戦 その2

「おっ、戻ってきたでござるな」

「トビ。どうしたんだ? もう一対一はいいのか?」


 しばらく戦ってからポータルを出ると、トビが待っていた。

 頭上には俺たちと同じCのマークが入っている。


「そろそろ拙者の出番かと思ったので。どうでござった? ハインド殿の中・前衛は」


 そういうことか。

 ちょうど苦しくなってきたところだったので、俺は頷きかけたのだが……。


「驚くほどやりやすかったぞ! トビ不要論、発足!」

「えええええ!?」


 ユーミルがそんなことを言い出した。

 だが、後衛メンバーはユーミルの言葉に同意しかねる様子だ。


「待ってください。ユーミルさんはそうだったかもしれませんが……」

「全体の動きを考えるとどうでしょうねー? くぁ……眠くなってきた……」

「トビ君との回避力の差もだけど、ハインド君の指示出しが苦しそうだったからね……」

「それに、何度も何度も言っていますけど私はハインドさんが矢面に立つのは反対なんです。トビさん、早くパーティインしてください――ハインドさんの盾になるために」

「こっちはこっちで必要とされているのに、何か嬉しくないでござるな……」


 俺は決闘のリプレイを見せながら、トビにどんな戦いぶりだったかを説明することにした。

 メニュー画面を開き、他のプレイヤーから見えない形式で神殿の壁に映像を投影する。

 俺たちは後衛多めのパーティだ。

 だから前衛が敵を引き付け、後衛が主にダメージを取るというやり方を基本方針に戦っていた。

 ただしユーミルは持ち味を殺さないために前方攪乱。

 敵の誘導などは俺が引き受けていたのだが……。


『本体を先に倒せ! 本体!』

『勇者ちゃんは後でいいって!』

「あちゃー……」


 誘導するまでもなく、俺は猛烈な勢いで狙われていた。

 後ろを見る余裕はほとんどなく、そちらの調整は三人の自己判断任せ。

 できるのはユーミルとの位置取り調整、そしてただひたすら戦闘不能にならないこと。


「これは、ユーミル殿はやりやすいでござろうな。ユーミル殿だけは」

「うむ! お前と違って、ぶつかりそうにもならないしな! 普段の後ろを守ってくれる感じもいいが、ハインドと互いの背中を預け合うのは楽しかった!」


 トビはユーミルにお互い様だと言いたげだったが、やがて溜め息を吐いて肩を竦めた。

 言い争うだけ無駄と判断したらしい。


「……しっかし、ハインド殿に対する警戒度の高さよ。半端じゃないでござるな」

「相手からしたら、回復役兼指揮役が前に出てくれているんだから、狙わない理由はないわな。実際のこのPTのメイン回復役は、シエスタちゃんな訳だが」

「どうにも先輩のようには行きませんで。先輩の全体指揮は偉大、みたいな」

「うん。後ろの三人で色々と相談しながらだったけど、十全に機能したとは言い難かったかな……」

「ハインドさんの回避盾は中々でしたが、結果全体の動きの質は落ちましたね」


 何度か戦闘不能になりはしたが、どの戦いも俺は終盤まで持ちこたえることができた。

 人数が減ってもメインアタッカーのユーミル、回復持ちのシエスタちゃんを残して二対二、悪くても二対三に持ち込めばCランクの相手には勝てる……そんな戦いがほとんど。


「ま、今までも何度かあった臨時前衛をやった形だからな。最低限の穴埋めをできるようになっただけマシじゃないか? 俺が囮の時用に、指揮官役の臨時も誰か練習するか?」

「正に堂々巡りだな!」

「パーティがバランス良く揃わない時もあるから、仕方ないだろ。あと、サイネリアちゃんが中衛っぽい動きができるようになったから、少し前に出てもらうパターンもありだと思うんだ」


 バウアーさんの訓練のおかげで、できることの幅は増えている。

 ――と、そこでトビが周囲を見回す。


「そのサイネリア殿はいずこに? リコリス殿もでござるが」

「サイネリアちゃんの戦いを数戦見たらログアウトして休むってさ。時間的には、そろそろ――」

「はいっ! 水分補給、ストレッチ、シーちゃん式リラックスと万全です!」


 思いの外、近い場所から返事が聞こえた。

 他のプレイヤーの間を抜けて、リコリスちゃんが俺たちの元へと辿り着く。


「最後の三つ目はよく分からないけど、おかえりリコリスちゃん」

「ただいまです! みなさんの仰る通り、思ったよりも体が固まってて……リフレッシュできました!」

「よかったねー。私ならそのまま寝ちゃいそうだけど」


 シエスタちゃんがリコリスちゃんを出迎え、横に並ぶ。


「先輩。私と戻ってくるサイとで、リコの戦いを見てますんで。先輩たち渡り鳥PTはサクッとランクを上げちゃってください」

「そうかい? じゃあ、そうさせてもらおうかな」

「拙者の進化した縮地が唸る!」

「進化は認めるけど、味方にぶつからないようにな。訓練後にパーティ戦闘で使ったことはないんだから」

「分かっているでござるよ!」


 フリのつもりはなかったのだが、次戦で結局トビは痛い目に遭うことになった。

 ユーミルの傍に『縮地』で跳んだトビは、敵と誤認され蹴りを受けてしまう。


「ぐへっ!?」

「む、トビか!? 紛らわしい場所に出るな!」

「ってか、フレンドリーファイアにしても跳躍直後に蹴られたのでござるが!? どういう反射神経してんの!?」

「トビ、視界の外から中に入る時はユーミルの間合いの外にしてやってくれ! ――後ろ、来ているぞ!」


 相変わらずあの二人は微妙な連携だ。

 微妙だが、ゴタついていても敵パーティはその間に半壊している。

 やはり本職の前衛二人は強い。

 そのまま二戦、三戦と連勝を重ね……。


「さっきと比べて試合時間が凄く短くなったね。トビ君の縮地、使いこなすと攻守両面に強いね」

「戦い方もスタイリッシュになって、拙者満足でござるよ!」

「ハインドさんが時折、前衛をフォローしに前に出るのが心臓に悪いのですが……」

「ちゃんと被弾せずに戻ってきているだろう? すまんが、慣れてくれ。後ろから一瞬出るだけなら、状況も見えているからやりやすい」

「というか、完勝だぞ完勝! さっきから一人も戦闘不能になっていない!」


 ユーミルの言うように、俺たちは完全試合に近い戦いを続けることができている。

 それが内部レートに作用しているのか分からないが、あっという間にBランクに到達。

 更には……。


「おっ!」


 笑顔で戻ってきたリコリスちゃんの頭上には、俺たちと同じくBの文字が浮かんでいた。

 スピーナさんの話からして、ここからが長いのだとは思うが……。

 決闘再開初日からBランクは、堂々の戦果だと十分に言えるだろう。

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