寄り道と決闘総合スレ
「喜んでたな、ゆかりん」
「うん?」
未祐の呟きに、俺はサンドイッチを持つ手を止めた。
俺たちが二人で座っているのは夕陽が差し込むファミレスの一画。
ここは軽食のメニューが多く安いので、学生が帰りに寄る定番の店だ。
「まあ、眼鏡がズレるほどのガッツポーズだったからな……」
「それだけ期待されているということだな」
未祐に話を聞いた翌日、俺は生徒会選挙に出ることに。
それを緒方さんに告げると、全身で喜びを表現してみせた。
その様を見ていた俺はというと、彼女の落胆する姿を見ずに済んだ安堵感と今後への不安が同時にこみ上げてきた――といった状態。
「これで落選したらどうするんだ……恥ずかしくて学校に行けなくなるぞ、俺は」
「そんな心配をしているのは亘だけだと思うぞ! 今に分かる!」
「……とりあえず、お前は原稿を終わらせようぜ。一人で食べていてもつまんないしさ」
「む、そうだな! 早く終わらせて私も何か食べる!」
対面の未祐は飲み物だけを注文してペンを走らせている。
結局、生徒会長の対抗馬は現れず終いで立候補締め切りの今日を迎えることとなった。
緒方さんは仕事が増えずに済んだとホクホク顔だったが。
「――選挙がなければ所信表明の原稿も早く上がると……いいことづくめだな」
「何の話だ?」
未祐が顔を上げずに問いかけてくる。
話す余裕があるということは、もう仕上げに入っていると見ていいだろう。
「ああ、お前の対抗馬の話だよ。誰も出なかったなって」
「私の力に恐れをなしたな!」
「何も間違っちゃいないが、自分で言っちゃうとそこはかとなく小物臭が漂うな……誰かと競ってみたかったりしねえの? そのほうがお前らしい気がするんだが」
「生徒会に関しては特に思わんが? 全力を賭けた勝負というのなら、最近はゲームの中で剣を使ってできるしな! ――終わり!」
最後に勢いのある句点を書き込み、未祐が俺に向かって原稿を差し出す。
添削してやるなんて言った覚えはないが……まあいいか。
文化祭、体育祭と来て緒方さんがOKを出す文章は大体どんなものか分かっている。
未祐らしい言葉をなるべく残しつつ体裁を整え、文法などの間違いを正し……。
「ほい、返す。清書までやっちゃうか?」
「うむ。少し待――亘、バニラアイス! キャラメルソースで!」
「頼んでおくよ。今からなら……丁度終わるころにくるだろ」
「ありがとう! ……お前が食べているサンドイッチも美味しそうに見えてきた」
「……俺のをやるから早く書き上げろよ」
そんなに頼んだら夕食が食べられなくなってしまう。
俺は半分減らしたサンドイッチセットの皿を未祐のほうに寄せると、席に置いてある呼び出しボタンを押した。
俺がコーヒーを飲むタイミングとしては、大体この時間くらいが一日の内で最後の機会だ。
今より遅いとカフェインが効いているのか、欲しい時間に眠気が来なくなる。
一番はもちろんバイト先――喫茶ひなたのマスターが淹れてくれるコーヒーだが、時にはこうしてファミレスやコンビニのコーヒーなども口にする。
「マスターのには絶対に敵わないけど、こういうところのコーヒーも美味しくなったよなぁ……」
「絶対とまで言うか」
「絶対だよ。マスターのコーヒーなめんな」
「う、うむ……」
条件によってはファミレスも競合先になり得るので、味を確かめておくことも大切だ。
近場に座っていた同学年の生徒が帰り際に声をかけてくる。
それに返事をしてから未祐がアイスを口に運んだ。
「疲れた頭に沁み渡る!」
「静かに食えんのか、お前は」
「ところで亘」
「安定のスルーだな。何だ?」
「TBの決闘ランクなのだが……今どんな感じなのだ? 盛り上がっているのか?」
「うん? ……俺に訊かずに掲示板でも見たら分かるんじゃ」
今回のように内々でゲームプレイを続けていると、周囲の動きには疎くなる。
それを補うためには掲示板が一番なのだが……。
未祐は首を横に振った。
「亘。私が一人で黙って掲示板を読み続けると思うか?」
「思わん。途中で飽きる」
「だから一緒に見ようと言っている! お前と二人なら楽しい!」
「あー、やっぱりそういう結論になんのね……いいぞ」
「いいのか?」
残っていたコーヒーを流し込んでソーサーに置く。
それからポケットの中を探り、スマートフォンを取り出した。
「俺も気になっているしな。一緒に見よう」
「よーし!」
未祐も残っていたバニラアイスを完食し、水を一口飲んでから同じようにした。
秀平がいないので、的確なレス拾いはできないが……。
雰囲気がどうなっているのか見るだけならば問題ないはずだ。
【Cランクの】TB決闘総合スレ68【壁】
TBの決闘に関する総合雑談スレです
質問の際はランク、決闘形式(人数)を添え、
名前欄の職業入力を正確にしましょう
次スレは>>930が立てること
396:名無しの重戦士 ID:QzQkVRp
そんな訳ないだろうとやってみたら、
見事にスレタイ通りで笑えない……
397:名無しの弓術士 ID:yPFm4yr
Cランク一名様ごあんなーい
398:名無しの魔導士 ID:XWsJpnk
凡プレイヤーの吹き溜まりにようこそ
399:名無しの重戦士 ID:QzQkVRp
嫌だぁぁぁぁ
俺は、俺はこんなところで終わる男じゃ……
400:名無しの騎士 ID:sJgBTXB
悪役の退場間際の台詞みたい
何にせよ、諦めないのはいいことよ
401:名無しの武闘家 ID:c5fTFcg
タイマン専門じゃないなら人の力を借りてもいいのよ
自分では分かっていないだけで、多人数戦のほうが得意な場合もあるから
402:名無しの重戦士 ID:QzQkVRp
俺に隠された才能が目覚める……!?
403:名無しの神官 ID:YQ2F2u7
そしてまたここに>>396と同じような書き込みをすると
404:名無しの重戦士 ID:QzQkVRp
本当にそうなりそうだからやめれぇ
よくつるむフレがしばらく忙しいんだけど、
即席で組むのってどうすればいいの? ポータルのランダム機能?
405:名無しの神官 ID:YQ2F2u7
ポータルの周りにいる暇そうな人でもいいよ
自分と同じように周りを見ている人を探して声をかけると、
案外乗ってくれるよ
ランダムと違って作戦の相談もできるし
406:名無しの軽戦士 ID:DRise3R
声をかけるにしてもある程度のランクがないとなぁ
407:名無しの弓術士 ID:rxSJzcL
それこそCなら一杯いるでしょ
B以上の人に頼みにくいってんなら分かる
408:名無しの弓術士 ID:yPFm4yr
あるある
前にポータル付近にいたら、
Bランクの人にタッグ戦を誘われたんだけどさ
自分で思っていた以上に実力に差があったわ
足引っ張りながらも勝たせてもらったんだけど、申し訳なくて申し訳なくて
409:名無しの重戦士 ID:YasszkV
そういう人と組んでランクが一時的に上がったりもするけど、
大抵すぐ下がるよね
410:名無しの武闘家 ID:26NuEJg
そりゃメッキだからね
累計報酬がある以上、そこで止めちゃうのは勿体ない話だし
411:名無しの軽戦士 ID:Snj8jCQ
何でもいいけど、
達成報酬がもらえるからイベ中に一回はBになっておきたい
後は適性ランクのCでのんびりやるから
412:名無しの魔導士 ID:EDZtQky
A、Sに比べると報酬しょぼくねえ?
その辺のランクに行けたやつの話、聞きてえなぁ
413:名無しの騎士 ID:sJgBTXB
ここじゃ証明する手段がないから、
コミュ力に自信があるなら
ゲーム内で探して突撃したほうが良さげ