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VRMMOの支援職人 ~トッププレイヤーの仕掛人~  作者: 二階堂風都
ランクシステムとランクアップのすすめ
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職業(クラス)選択の理由

「私の目標ですか?」

「うん。どう戦えるようになりたい? ユーミルに憧れているのはもちろん知っているけど」


 俺の言葉にリコリスちゃんはパッと表情を輝かせる。

 素直で非常に分かりやすい。

 リコリスちゃんは談話室の椅子から立ち上がり、演説のように大袈裟な手振りを交えて話し始めた。


「ユーミル先輩、とっても格好いいですよね! 特にあの剣を手に踊り込む時の顔が、とっても引き締まっていて!」

「肉食獣的な格好良さだよね。分かる」

「拙者も思わず道を開けるほど迫力があるでござるよ。良い時と悪い時の差が激しいでござるが」

「調子に乗ってすぐに油断するのは、昔からだからな……」


 リコリスちゃんと同じく、ユーミルもそういった部分が如実に顔に出る。

 集中力を発揮している時はこちらがハッとするような表情をするが、それ以外の時はからっきしだ。

 リコリスちゃんのミニ演説はまだ続いている。


「そういうところもチャーミングなんですよ? ギャップというやつです! 素敵です!」

「ウチの高校の連中と同じこと言ってる……まあ、分からなくもないかな。けど、リコリスちゃん」

「何ですか?」


 本気で分かっていない顔で小首を傾げる。

 仕草がこじんまりとしているのに元気で忙しくて、相変わらず小動物みたいだ。


「話がズレて来ているよ。ユーミルの魅力を語って欲しいんじゃなくて、目標にしている戦闘スタイルの話を聞かせて欲しいんだけど。順を追ってでも構わないから、そこに繋がるように話をしてくれるかな?」

「ああっ、そうでした! ええと、ええと……そうですね……私が最初にユーミル先輩を見たのは、TBを始めてすぐで。最初のイベントのリプレイ動画があったじゃないですか?」

「タートルイベントの動画でござるな? 不正の嫌疑を晴らすために上げた」

「そうです! 金色の光を帯びて、剣を振り下ろすユーミル先輩……お話の中の主人公みたいでした!」


 おー、すんごいキラキラした目で語ってる。

 そういえば、リコリスちゃんがファンだって言って声をかけてきたのが三人との出会いだっけ。


「剣の重さでめっちゃよろよろしていたでござるがなー」

「そういうところも――」

「はいはい、ギャップね。それで?」

「ユーミル先輩に憧れて、まだレベル10になっていなかった私は騎士の攻撃型を……選びませんでした」

「うん、それそれ。その理由を是非俺たちに教えてほしい」


 俺たちに出会った時には既に職業が確定していたが、レベルは低かった。

 憧れている割に同じ職業を選んでいないというのは不思議な話だ。

 この年頃の女子というと、そういったものを積極的に取り入れたり真似したりすると思うのだが。

 普通は有名人のファッションだったり髪型だったり、あの辺りだろうか?

 リコリスちゃんは少し間を取ってから、おずおずと話を再開した。


「パーティバランスというのもあったんですけど……その、ユーミル先輩に比べて私は背も低いですし」

「言われてみれば、ユーミル殿は女子の中では高めでござるな。それに手足も長い」

「背だけじゃなくって、私はスタイルもあんまり……あんなにスラッとしてて、それなのにボーン! としてないので」

「そこは関係ないんじゃないかな……」


 俺の指摘にリコリスちゃんが頬を赤く染める。

 ちょいちょい脱線するが、リコリスちゃんは一呼吸置いて軌道修正。


「色んな意味でユーミル先輩みたいになりたいなーとは思うんですが、私はあんなに鋭く相手の懐に踏み込めませんし……だから盾を使って間合いを詰められないかなって。それに、サイちゃんとシーちゃんを見ていたらですね」

「……」

「憧れは憧れとして、己を知ることも大事かなぁって……」

「……おお」


 言わんとしていることは分かる。

 サイネリアちゃんもシエスタちゃんも、大人びて――年齢の割に確固とした自分を持っている。

 あまり周囲の影響を受けたりということはないだろう。

 そんな二人を見て、騎士の攻撃型を選ばなかったということだと思われる。


「おい、トビ。女子中学生の口からすげえ渋い言葉が出てきたぞ」

「そ、そうでござるな……リコリス殿、かっけー……」

「あ、あれ!? な、なんかすみません! おかしかったですか!? 不釣り合いでしたか!? 何だか恥ずかしい! 型は違いますけど、結局騎士だけは諦めきれずに防御型ガードタイプですし! 中途半端なので格好良くなんてないです!」

「――恥ずかしがることはない! そういう葛藤が人を成長させる……ような気がしないこともないぞ! リコリス!」

「!」


 いまいち決まらない台詞を口にしながら入ってきたのはユーミルだ。

 その後ろからセレーネさんも顔を出す。


「リコリスちゃん……私にできることがあったら言ってね? 応援するよ。自分らしさを見つけるのって、難しいよね……」

「え、あ、ありがとうございます! セレーネ先輩は十分に個性的だと思います! こんばんは! ユーミル先輩も、こんばんはです!」

「うむ、こんばんは!」


 二人が挨拶をしながら椅子に座る。

 途中から聞いていたようだが、俺とトビは一応何の話をしていたかを二人に最初から説明した。


「ふむ、戦闘スタイルについてか。ところでリコリス、お前が目指す戦闘スタイルとやらを訊く前に……まずは決闘ランクに拘る理由を聞かせてもらいたいのだが?」

「あ、特にランクに拘りはないんです。ただ、闘技大会のユーミル先輩とハインド先輩が格好良かったので……ランクを上げれば少しでもお二人に近付けるかなあって思いまして」

「なるほどね……ん? お二人?」

「そうか! で、ハインド。これからどうやってリコリスを強化していくのだ?」


 ユーミルが来ると、良くも悪くも話がグイグイ進んで行く。

 小さな疑問は押し流され、四人が俺の言葉を待つように視線を集めてくる。


「あ、ああ。大まかにはまず一つ、戦闘スタイルの確立。二、それに合わせて装備の変更。三、実践……って流れだな。セレーネさん、装備作製の際はよろしくお願いします」

「うん、任せてよ」

「今日はこのままリコリスちゃんの戦い方を煮詰めることにしよう。最初に本人の希望を聞いて、実現可能か検討していく感じで」

「みなさん……ありがとうございます! 私、精一杯頑張ります!」


 頭を下げるリコリスちゃんに対し、俺たちは笑顔で応えた。

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