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VRMMOの支援職人 ~トッププレイヤーの仕掛人~  作者: 二階堂風都
ランクシステムとランクアップのすすめ
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決闘団体戦&個人戦・Eランク

 対戦相手が想定外に強かったということもあるが、手も足も出なかったというのはいただけない。

 しかしながらリコリスちゃん自身の落ち込みようが中々のものだったので、ひとまず……。


「勢いをつけるために、次は多人数でやってみようか。ヒナ鳥三人と、渡り鳥の五人に分かれて」


 俺はパーティ戦の提案をした。

 言葉通りの意味もあるし、やれば一対一との違いも分かってくれると思う。

 細かい話は全て後回しだ。


「は、はい! やります! 失地回復、捲土重来? です!」

「リコ……自信がないなら、無理して難しい言葉を使うことないのに……」

「背伸びをしたいお年頃なんだよ、きっと」

「シエスタちゃんも同い年でしょ……」


 サイネリアちゃんは大人びているし、シエスタちゃんは枯れているしで俺としては二人のほうが見ていて心配になる。

 中学生だよね? 君たち。

 決闘ランクは人数に関わらず全て共通なので、一対一だけでも多人数だけでも上げることができる。


「ふむ、団体戦か……リコリス、後で私とも組もう!」

「え、いいんですか!?」

「当然だ! いいだろう? ハインド!」

「ああ。慣れてきたら適当に組み合わせを変えるか。とりあえずどんどん対戦していこう。みんな、この後の時間は大丈夫か?」


 予定が空いているか訊いてみると、全員大丈夫とのこと。

 一対一をやりたい人がいるかも合わせて確認してみると、手を挙げたのはトビだけで……。


「あ、拙者もガッツリやりたい訳ではないでござるよ? 低ランクの内に、お試し的に数戦やってみたいだけで。今夜はパーティ優先でOKでござる」

「じゃあ、隙を見て適当にやってくれ。回避型アヴォイドタイプで一対一は結構大変そうだな……特に防御が高い系統相手だと」

「重戦士の防御型とか、相性最悪でござるな。他はそこそこ行けるはずでござるよ」


 ユーミルはリコリスちゃんと話し込んでいて聞いていない。

 シエスタちゃんが俺の袖を気怠そうに引いてくる。


「そもそもですよ? 私たち後衛に一対一は厳しいじゃないですか。私のやる気云々は置いといて」

「私は装填の隙の問題もあるけど、それ以前に度胸が足りないかな……一対一は怖いよ」

「私の居場所はハインドさんの隣ですから。個人戦に興味はありません」

「うーん、この欲のない言葉の数々……自分の力を試したくはならないのでござるか?」

「まあ、無理してやるもんじゃないからな……いいんじゃないか? 好き好きで」


 少し話が長くなっているので、俺たちは邪魔にならないよう小神殿内の隅に移動した。

 実装初日だけあって、プレイヤーたちの動きは活発である。


「先輩なんて職業的に最初っから無理でしょう? 私たち以上に」

「そりゃそうだ。この職で一人、前に出るなんて負けに行くようなものじゃないか」

「前衛がいないと機能しない職ってありますよね」


 俺たち後衛組の中で一対一ができそうなのは、弓術士・連射型ラピッドタイプのサイネリアちゃんになるか。

 セレーネさんが言ったように矢を素早くつがえること、接近されても慌てないことが重要になると思われる。

 どの道、前衛職より難しいことに変わりはないが。


「ハインド殿、そろそろ」

「そうだな。イベントポイントやら報酬もあることだし……行こう」


 今は決闘ランク&ポータル実装記念として、期間限定で報酬が出る。

 ランクアップ報酬というものもあるが、まずはやればやっただけ溜まるイベントポイントを上げていくとしよう。




 俺たちが初戦を楽に勝利して待っていると、やがてヒナ鳥の三人がポータルから戻ってきた。

 先程とは打って変わって、リコリスちゃんの足取りは軽い。


「勝ちました! 勝ちましたよ!」

「おめでとう」

「おおっ!」


 三人の連携力を考えれば大抵の相手には勝って当然である。

 ユーミルと喜びを分かち合うリコリスちゃんをよそに、サイネリアちゃんとシエスタちゃんがこちらを向く。


「先輩方はお早いお帰りだったみたいですね。さすがです」

「実はレベル未カンストだったんだよね、相手……」

「楽勝だったぞ! 正直物足りん!」

「まだ最低ランク故、こういうこともあるでござるな」

「いいなー。こっちはそこそこ強い相手でした。毎回こうだと疲れ――あっ」


 シエスタちゃんが邪悪な笑みを浮かべる。

 何をするの気なのかと見ていると……。


「リコ、次はもう一回一人で行ってみようよ」

「え?」


 困惑するリコリスちゃんの様子に、サイネリアちゃんがシエスタちゃんを引き寄せる。

 そしてコソコソとリコリスちゃんには聞こえない小声で会話を始めた。


「ちょっと、シー……あなた、自分が楽したいだけなんじゃ」

「違う違う。ほら、個人戦と団体戦を交互にやることで、もっとリコに自分の職に対する理解を深めてもらおうっていう試みだよ。リコにはまず、口で言うより体感してもらったほうがいいでしょ?」

「……本当にそう思ってる?」

「もちろん。その結果、もしかしたら私が一戦ごとに休憩できるようになるかもしれないけど? あくまでそれは副次効果ですし? 当然これはリコのためですよ? ね?」

「……」


 位置関係のせいで、その会話はユーミルとリコリスちゃん以外……つまり俺たちには丸聞こえだ。

 しかし、シエスタちゃんの言葉にも一理ある。

 どういう理由かは分からないが、リコリスちゃんは決闘ランクにやる気を見せていることだし。

 サイネリアちゃんが俺にどうしたらいいか尋ねるような目をしていたので、苦笑しつつ頷きを返す。


「じゃあ、リコ。しばらく一対一と三対三を交互にやろうか」

「いいけど……そうすると強くなれるの? サイちゃん、シーちゃん」

「多分ねー。ということで先輩、メンバー混ぜ混ぜはその後でいいですか?」

「ああ。そっちが一段落するまで、しばらくこっちは五人で戦っているよ」


 どう考えてもシエスタちゃんの思惑通りの流れだったが、きっと効果は出るだろう。

 ……また次戦を終えてヒナ鳥たちを出迎えると、そこにはやや落ち込んだ顔で戻るリコリスちゃんの姿が。


「あうう……」


 続く四戦目、再度ヒナ鳥三人での戦いの後。


「勝ちました!」


 続いて五戦目、一人での戦いは――


「負けました……あれ? もしかして私って……」


 第六戦目、団体戦――


「勝ちました、けど……あの、あの、ハインド先輩!」

「何だい?」

「私って……もしかして一人だと激弱ですか? 最近段々と強くなってきたかな? っていうのは錯覚……でしたか?」


 リコリスちゃんが悲しそうな顔で俺を見上げてくる。

 俺がシエスタちゃんに視線を送ると「やり過ぎちゃった」といった表情で舌を出した。

 次いでフォローをよろしく、といった様子で手を合わせてくる。

 恨むぞ、シエスタちゃん……。


「そんなことはないよ。パーティ戦でのリコリスちゃんは問題なく強いし、頼りになる。ちゃんと成長していると思うよ」

「本当ですか?」

「本当だよ。なぁ? ユーミル」

「うむ! 最近のリコリスの盾捌き、目を見張るものがあるぞ! 安心して壁役を任せられる……だから自信を持て! 胸を張れ!」

「あ……! ありがとうございますっ!」


 リコリスちゃんがようやく笑顔を取り戻した。

 やっぱりこの子にはユーミルの言葉が特に効くみたいだな。


「一対一で勝てないのは、カウンターを読まれているからで……と、その辺の話は明日以降に。今日はこのまま団体戦を中心に、とにかく対人戦に慣れていくことにしよう。いいかな? リコリスちゃん」

「はい!」


 その後、俺たちはとりあえず全員がDランクに昇格。

 そこまでやったところで折良く時間となり、今夜は解散することにした。

 リコリスちゃんをどう鍛えるべきか、きちんと考えておかないとな……。

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