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アクセサリー事情と新たな農作物

「そういえば、魔王ちゃんのくれたアクセサリーってどうしたんです?」


 ふと思い立ったように、リコリスちゃんが俺の手元を見ながらそんなことを訊いてくる。

 装備していないのかな? といった顔だ。

 俺たちは戦闘を終え、王都に戻ってきていた。

 今は食材の買い出し中で、三人はついでだからとそれに付き合ってくれている。


「暗色の指輪のこと? あれは誰に装備させるか迷っていてさ。まだアイテムボックスの中だよ」

「最大MP増加効果でしたよね? 三人の中なら……妹さんか先輩が身に着ければいいんじゃ?」


 MPチャージの能力を考慮してか、シエスタちゃんが長い髪を揺らしながら上を向く。

 適性という面で見ればその通りではあるのだが。


「リィズはもう二つアクセサリーを装備しているから、必要ないってさ」

「帽子とべっ甲の首飾り……どちらもお前からの贈り物だったな。フン」

「帽子とセットの防具を作り直すか検討中だ。かなり初期に作った帽子だしな、あれは」


 防具枠に入るように組めば、アクセサリーの枠は空く。

 だが、シエスタちゃんはその提案を受けたリィズの様子を思い浮かべたのか……。


「妹さん、嫌がりそうですね」

「よく分かったね。そうなんだよ……」


 特に帽子は初めての記念品だから、なるべく外したくないのだそうだ。

 そんな訳で、リィズのアクセサリーの装備枠は埋まってしまっている。

 店の果物、オレンジなどを手に取りながら――うおっ、やっぱり水分豊富な果物は高いな。

 遠方から仕入れているのだろうか?


「じゃあ、トビ先輩ならどうですか? 魔王ちゃんのくれた指輪なら、トビ先輩なら欲しがるんじゃないかなぁ?」


 リコリスちゃんが果物の匂いに鼻をひくつかせながら、少し嬉しそうな顔をしている。

 やっぱりそこに引っかかるよな。


「それがさ。軽戦士はMP消費の多いスキルが少ないから、俺たちで装備してくれって言うんだよ」

「急に冷静!?」

「トビ先輩、あんなに魔王ちゃんで大騒ぎしていたのに……?」

「そこでゲーマーらしい思考になるのか……」

「欲しそうな顔はしていたがな。よく我慢したもんだ」


 あいつも調理補助と情報収集で貢献したので、誰が持っても問題ないと言ったのだが。

 しかし、合理的に考えればトビには合わないアクセサリーなんだよな……。

 ユーミルに装備させて『バーストエッジ』の火力を上げるのも面白いが、こいつの性格上断るだろうし。

 パフェ作りに関わっていないから筋が通らない、とか何とかで。


「では、やっぱり先輩が装備しますか?」

「そうなりそう。まあ、トビの気が変わったりしたら譲るけど。次に三人揃った時に、もう一度相談するよ」

「そうするといい。あ、ハインド! メロン食べたい、メロン!」

「ああ……うわっ!」


 店員の手前、どうにか高いという言葉を飲み込んだ俺は値札を二度見した。

 何だこれ、オレンジが箱ごと買える値段じゃないか……。


「……ユーミル、一つ提案があるんだが」

「む?」

「俺たちの農業区で果物を作らないか?」

「おお、そうか! 自前で果物を作れば無料で食べ放題だな!?」

「上手く育てられればな。おばちゃん、果物の種ってどこで買えるの? ――え? ここで売ってる?」


 ここの店員さんとは顔見知りなので、情報だけでもと思って声をかけたのだが……。

 最終的に育て方の基礎からコツまで、色々と教えてもらえることになった。

 そして帰り道、ユーミルの手には箱に入ったメロンが。

 シエスタちゃんが糸目で苦笑を浮かべる。


「結局買うんですねー、メロン……」

「情報料と思えば、安いものじゃないかな。上手く作れなかった果物は、またここで買うことにするか。親切だったし」


 あそこまで親切に教えてくれる店員さんも、そうはいないだろう。

 あれだけ作り方に詳しいということは、品物を出荷している生産者を大事にしているということだ。

 売っている果物の質も申し分ない。高いけど。


「いい人でしたね! ハインド先輩、畑作りは私もお手伝いしますよ!」

「ありがとうリコリスちゃん。お願いするよ。ユーミル、薬草作りが止まり木メインに移行しつつあるし、これはちょうどいい機会じゃないか? 今までみたいに小規模じゃなくて、本格的に色々作ってみようぜ」


 止まり木で量産体制が整ってからは、簡単な品種改良しかしていない。

 ゲームシステム上バフも満腹度もあるのだから、より良い食材を作ることも大事だ。

 薬草の栽培スペースだった部分を作り変えて、食材用の畑にしてはどうだろう?

 俺の提案にユーミルは大きく頷き、腕を組んで宣言した。


「そうだな! では、今日は畑を耕してからログアウトにするか! 農地の改造だ!」

「そうしよう。シエスタちゃんはどうする?」


 シエスタちゃんに三人で目を向けると、何やら葛藤しているような表情をしている。

 面倒なので、一人で帰ると言い出すかと思ったが……。


「………………メロン」

「えっ?」

「手伝った報酬にそのメロンを切ってくれるなら、私も手伝います。ご存知の通り低体力なんで、ほどほどの動きしかできませんけど。それでもいいですか?」


 怠い眠いと言いながら、付き合いはいいんだよな。そういえば。

 それに対する俺の答えは決まっている。


「もちろん、終わったらみんなでメロンを食べよう。ノクスの氷で冷やしたり、かき氷なんかもできなくはないな。メロンシロップにしてさ」

「あ、いいですねぇ。砂漠は一年中なんでしょうけど、現実の気温もまだまだ暑いし」

「ゲームと分かっていても涼しくなりますよね、気分的に!」

「では鎧を作業着に、武器を農具に持ち替えるとするか!」


 街中では、イベントが始まったことで忙しそうなプレイヤーたちが走り回っている。

 一足先にイベント戦闘を切り上げた俺たちは、まずは食材を置くためにギルドホームへと足を向けた。

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