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VRMMOの支援職人 ~トッププレイヤーの仕掛人~  作者: 二階堂風都
大砂漠と太陽の化身

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イベント概要と消える巻物

 特殊演出が終わった後は、いつも通りイベント詳細の確認だ。

 ギルドホームの談話室へと戻り、メニュー内のイベントお知らせページを眺める。


「50人制のレイド?」

「最大参加単位は……ギルドは不可でPTか。リィズ、どう思う?」

「報酬を見る限り、今回のイベントは個人成績を重視する調整ではないかと」

「ああ……そういえば、掲示板でギルド順位ばかり重視されるとキツイって意見が多かったな」


 メンバーが揃わなかったり、そもそも自身がそういったコミュニケーションが煩わしいというソロプレイヤーだったり、といったことが主な理由だそうだ。

 ギルド戦も登場したことだし、そちらのイベントとの差別化ということも考えられる。

 そして今回は――否、今回もこの手の戦闘系イベント定番のアレが上位報酬に存在していた。


「もちろん取りに行くぞ、勇者のオーラ!」

「個人総ダメ1位……もう見慣れた感じの条件だな。いいぜ、狙おう」

「私のデバフとハインドさんのバフ、そしてセッちゃんの武器があれば万全でしょう。問題は――」

「む? 私には何かないのか? 光る戦闘センスとか、ここ一番の集中力とか! おい? おーい?」


 ユーミルのアピールを無視して、リィズが視線を向けたのは……。

 だらしない顔で何かを見つめ、先程から会話に参加していないトビの姿だった。

 俺もそちらをちらりと見てから、リィズの話を聞きつつ注いでおいたお茶をすする。


「PTということでしたら、トビさんの囮能力と影縫いによる敵の足止めは重要なのですが……」

「あいつは何を見ているのだ? って、わざわざ聞くまでもないのだろうが」

「お察しの通りだよ。さっきから魔王ちゃんのスクショに夢中だ。こいつは放っておいて、俺たちだけでイベント内容の把握を済ませておこうぜ……」

「うへへへへ……」


 PT編成は組み換え自由なので、誰かが出られない日は止まり木のメンバーに入ってもらったり、ヒナ鳥たちと組むといったことも可能だ。

 報酬についてはリィズが先程触れた通りで、個人に重点が置かれギルドランキングに対する報酬は前回と比べ縮小。

 それでも運営資金にてるには十分高額であり、取れるなら取った方が良いといった形か。

 それともう一つ、忘れてはならないイベントの要素が……。


「冷たい飲み物か食べ物ね……複数出せるなら悩まないんだが、提出可能なのは一品だけか」

「そちらは基本、ハインドに任せるが……折角だから、止まり木の知恵を借りるのもいいかもしれないな!」

「ああ、それはいい考えだ。場合によっては共同名義で出すかな?」

「私たちの手が必要な時はいつでも仰ってください」

「ありがとう、助かる。パッと思い付く安直なものだと、ベリ連邦に行って氷を採取。かき氷でも作製って感じが簡単か?」

「うむ、私でも思い付く程度には安直だな! 私もハインドと全く同じことを考えていた!」


 マリーの別荘でかき氷を食べたばかりということも関係していると思うが……。

 ノクスが机に下りて空腹を訴えたので、俺はインベントリから餌を取り出して少しずつ与えていく。

 もっとノクスが育っていれば、PTの穴埋めに貢献出来るんだがな。

 まだまだそういった段階には至っていない。

 ――と、そこでメールの着信音が複数回鳴る。

 二人に断り、その内容を確認すると……。


「誰からだ、ハインド?」

「弦月さんと……ポル君だな。そちらの気候はどうですか? ってメールで訊いてみたんだが……」


 結局ポル君・フォルさんの兄弟はベリ連邦にある「北方の一番星」というギルドにそのままいるそうだ。

 またの再会を楽しみにしている、というメールを交わしたのがギルド戦の対戦後のことになる。

 そして彼からのメールも、弦月さんからのメールも、文章に使われている言葉こそ対照的だったが内容はほぼ同じだった。

 二人に情報に対するお礼のメールを送ってから、メニュー画面を閉じる。


「その渋い顔を見るに、ベリ連邦の氷は難しいですか?」

「難しいかもな。あのベリ連邦がかつてないほど過ごしやすく、暖かくなっているそうだ。ルストもいつもより暖かいってさ。だから氷を確保するなら多分、魔法の方が早いと思う」

「水魔法の中に、確か氷を出すものがあったな? ハインド、パストラルのレベルはまだまだ低いのだし、ここは巻物を――」

「だな。取引掲示板に行ってみるか。トビ、おいトビ!」


 いくら何でも置いていく訳にはいかないので声をかけると、トビはようやくこちらに反応を示した。

 先に準備を終わらせて談話室の扉の前で待つ俺たちの前で、慌ててメニュー画面を閉じて椅子から立ち上がる。

 肩のノクスがトビを急かすように、羽を広げて小さく鳴いた。


「待って待って! うっすら会話が聞こえていたのでござるが、巻物を買うので?」

「同じ発想に至れば、買う人が増えるだろうから今の内だ。行ってみようぜ」


 そんな訳で、俺たちは商業区にある取引掲示板へと向かったのだが……。

 およそ十分後、再び談話室へと戻ってきていた。


「やっぱり売り切れていたか……早かったな、みんな気が付くのが」

「相場無視の滅茶苦茶高額なやつは残っていたでござるよ?」

「あんなものは売っている商品の内に入らん。馬より高い氷なんて誰が買うか! ふざけんな!」

「ま、まあ、その通りでござるが。では、どうするのでござるか?」

「パストラルさんにお願いして、一緒にレベルを上げるか……現地人の中で、氷を出せる水魔法を使える人を探すかのどっちかじゃないか? こうなった以上、巻物以外の手段で何とかするさ」

「ドライアイスの精製……はちょっと不可能ですかね。ところでハインドさん、そろそろいい時間ですが……」

「あ、そうだな。それじゃあ――」


 リィズが時刻を教えてくれたところで、簡単に今後の予定を確認してから解散することにした。

 イベント期間は二週間、夏季休暇中ではこれが最後のイベントとなるだろうか?


「イベント序盤は盆と被っているからな……みんなイン率が不安定になると思う。俺とリィズも明日辺りはちょっと微妙だ」

「む……そうだったな。私も一緒に行って構わないか?」

「ああ、ありがとうな」

「しからば、拙者もそれに合わせるでござるかな。ハインド殿、今日いないメンバーへの連絡はお任せしても?」

「OK、やっておく。じゃあ、次は明後日……もしくは三日後にインして、そっから本格的にイベントに取りかかることにしよう」


 全員が頷いてくれたところで、この日の活動はお開きとなった。

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