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VRMMOの支援職人 ~トッププレイヤーの仕掛人~ 作者:二階堂風都

アニマルイベント、到来

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イベントの閉幕

 途中まではレース展開に対する純粋な歓声だったのだが、今は反応がそれぞれ違う。
 場内にハズレ馬券が乱れ飛び、喜んでいるのは全体の一割程度だろう。
 最終的にウェントスは四番人気だったので、多分それがそのまま予想を当てた人数だと思われる。
 品評会のものを含めて、たった今結果が視界内の字幕において発表されたところだ。

「どうして今回は馬券としてアイテム化されているのかなぁと思っていたら……」
「こういうことでござるか。紙吹雪かな?」

 そんな紙吹雪にも似たハズレ馬券の雪が舞う中、皇帝が三度現れる。
 気が付いた者たちが周囲に呼びかけ、少しずつざわめきが収まっていく。

『実力で上を行く者が勝利を得らえない……誠、勝負というものは面白い! 見事であった、ウェントス! そして陣風! 両者には後日、帝国より特別報酬を授与するものとする!』

 ちなみにウェントスの品評会での成績は、全体の7位となった。
 品評会では、速さももちろんだが見た目の美しさも重視されたためにレースの結果とはまた違ったものになっている。
 一部順位が同じという珍しいケースもあるにはあるが。

『では、これにて大陸統一・競馬大会の全日程を終了するものとする! ――スキア』
『はっ』

 皇帝の側近であるスキアが隣に立ち、そのまま転移魔法で帰るのかと思いきや……何やら様子が違う。
 転移魔法とは違う種類の魔法陣がスキアの足元で回っている。
 観客たちが彼らを注視していると――ふわり、と風が舞った。
 そこら中に散らばっていたハズレ馬券がその風に乗り、再び空に舞ったかと思うと、今度は皇帝が詠唱を始める。

『当たり馬券はしっかりと手元に持っているのだぞ? はぁっ!』

 皇帝が気合を込めて叫ぶと、今度はハズレ馬券が赤・青・緑・黄……カラフルな炎によって次々と燃えて行く。

「おおっ! 触っても熱くないぞ、この炎!」
「不思議ですわね……わたくしもこんな炎、出してみたいですわ!」
「綺麗だね……」
『ハッハッハ! 余から皆への贈り物だ! どうだ、美しかろう? 他の王には真似できま――何、時間? 分かった分かった。諸君、また会おうではないか!』

 機嫌良さそうにスキアと共に去っていく皇帝陛下だったが、他の王という言葉で思い出した。

「そういえば、ウチの女王様もアイテムコンテストで魔法の光を出していたよな?」
「あっ……よく考えたらめっちゃ被っているでござる!? 光の玉とはまた違った綺麗さでござるが!」
「こ、皇帝陛下のお耳に入らないことを祈るばかりです……」
「それは……確かに面倒なことになりますね……」

 皇帝の性格をよく知るワルターとカームさんが、俺たちの会話にそんな言葉を返す。
 観客たちがその場を去り始める中、俺たちはサイネリアちゃんとウェントスの出迎えのために移動を開始した。



「……」
「……サイネリアちゃん?」
「――あ、は、はいっ!」

 サイネリアちゃんは、競馬場付属の厩舎の中で呆然と座り込んでいた。
 俺が声をかけると、驚いたような顔で慌てて立ち上がる。
 ユーミルが駆け寄るのを止め、その様子に小首を傾げながら問いかけた。

「む、一体どうしたのだ?」
「す、すみません……何だか、ウェントスと一緒に残した結果が信じられなくて……」

 なるほど……そういうことか。
 俺たちは顔を見合わせると、生真面目な彼女らしい反応に小さく笑い合った。
 そして、ヒナ鳥二人がサイネリアちゃんの肩を叩く。

「優勝だよ、サイちゃん!」
「うん。間違いなく優勝だよ、サイ」
「ほ、本当に……?」

 それ以上は答えずに、二人はサイネリアちゃんを抱きしめた。
 更に、その後ろからうずうずとした様子のユーミルとヘルシャが忍び寄り――

「だあああっ! よくやった、サイネリア!」
「見ていましたわよ! 最後の鞭さばき、わたくしが教えた以上の見事なものでしたわ!」
「あっ……! ありがとうございます、ユーミル先輩! ヘルシャ先輩!」

 その後も一人一人の名前を呼んで礼を言うサイネリアちゃんを囲んで、喜びを分かち合った。
 俺はインベントリから角砂糖を取り出すと、ウェントスの傍に近付いていく。

「ウェントスも、お疲れ様。良い走りだ――おわっ!?」

 ばくり、とどこかで見たことのある掻っ攫いっぷりに俺は思わず表情を緩めた。
 嬉しそうに鼻息を荒くしながら、もごもごとウェントスが口を動かす。
 それを見ていたみんなも、労いの言葉と共に少量ずつ角砂糖をウェントスに与えていく。
 そんな中で、俺たちの傍に立つ人影が一人……。

「ふふっ、ウェントスは角砂糖が好物なんだね。それが速さの秘訣だったりするのかな?」

 それは、美しい白馬を引いたこれまた美しいエルフの女性――アルテミスの弦月さんの姿だった。

 弦月さんが性格上、恨み言を残しに来たのではないことは明白だったが……。
 当然、過去に彼女に色々と教えてもらった経験があるサイネリアちゃんは恐縮しきりである。
 無理もないな、しかも今回は勝っている訳だし……。
 それを弦月さんも感じ取ったのか、冗談めかしてこんなことを言う。

「しかし、レイド、品評会に続いてレースでも総合2位とは……私には、もしかしてシルバーコレクターの呪いでもかかっているのかね? どうだろう、ハインド?」
「それを俺に訊きますか……」
「だって君、アイテムコンテストとレイドの回復ランキング――」
「あーあー、そうですよ。でも、俺は料理コンテストでしっかり1位を獲りましたもん。そんな俺から言わせてもらうなら、弦月さんには……」
「私には?」
「何か、背後にドス黒いもやが見えるような……」
「本当かい!?」

 もちろん冗談だが、そんな愚にもつかない会話にサイネリアちゃんが小さく吹き出す。
 大体、弦月さんとハクアのコンビは障害物走でしっかり1位を獲っているので、シルバーコレクターの定義には当て嵌まらない。
 弦月さんは単純に、サイネリアちゃんにお祝いの言葉をかけに来たようだった。

「やっと笑ってくれたね」
「あ、はいっ! その、弦月さん……」
「おめでとう、サイネリア。負けて悔しいというのも本音だけれど……よくここまでの馬を育てたね。最後の直線での加速――まさにその名に恥じず、風のようだったよ」
「……ありがとうございます! 私一人ではなく、みなさんのおかげです!」

 弦月さんはそのままサイネリアちゃんと少し会話をした後で、ユーミルにギルド戦の決着をその内、と一言残すと……。
 俺たちと同じように出迎えに来たアルテミスのメンバーと共に、爽やかに去って行った。

「へえ……中々の好人物ですわね」
「だよな。あの人を嫌う人って、そうそういないんじゃないかと思うぞ? ヘルシャは初対面だっけ?」
「それに美人ですしね……ね、ハインドさん?」
「あ、ああ。確かに美人だが――リィズ、近い」
「事前に打ち合わせをしたみたいな会話だったね、さっきの……目で合図していたよね? お互いに……」
「え、あの、セレーネさん? どうしてそんなに悲しそうな――ゆ、ユーミル! 何か言ってくれ!」
「うむ。そういう関係でないのは分かっていても、何となく気に食わない……つまりは、そういうことだ! 無論私も二人と同じ気持ちだから、そのつもりでいるといい!」
「理不尽な!? ってか、やめろやめろ! 折角ウェントスとサイネリアちゃんの優勝を祝いに来ているんだから!」

 ユーミルが「それもそうだな」とサイネリアちゃんのほうに向き直ると、サイネリアちゃんが苦笑を返してくる。
 それからみんなでウェントスの体を拭いたり、丁寧にブラッシングをしてから俺たちは競馬場を後にした。
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