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VRMMOの支援職人 ~トッププレイヤーの仕掛人~ 作者:二階堂風都

アニマルイベント、到来

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決勝レース・障害物走

 馬名と騎手が次々とコールされていく。
 順番は登録順で、ウェントスとサイネリアちゃんは中盤辺り。
 そして名前が呼ばれるや――

「うぉぉぉぉぉ! サイネリアァァァ!」
「サイちゃぁぁぁんっ!」
「サイネリアさーん!」
「うるさっ!? うるさいよ、頼むから口元に手を添えろ!」

 歓声の中でも全く埋もれない、ユーミル・リコリスちゃん・ヘルシャの声が響き渡る。
 それに顔を顰めながらも、右隣のリィズが俺の袖を引いてくる。

「どうした!?」
「ハインドさん、こんなこともあろうかと応援グッズを買っておきました」

 リィズが取り出したのは、ボール紙のようなものでできたメガホンだ。
 既にゲーム内でこんなものを作れるプレイヤーもいるのか……。
 そういえば、さっき通りかかった売り子から何か買っていたな。リィズは抜け目がない。

「ナイス。ほらお前ら、これを使えば指向性が出て多少マシに――じゃない、こいつを使ってもっとサイネリアちゃんに声を届けてやれ」
「おお、メガホン!」
「小太鼓もあります」
「あ、リィズ殿リィズ殿。拙者、それやりたい!」
「何ていうんだっけ、これ……バルーンスティック?」
「チアバルーンじゃなかったっけ? ハインド君」

 リィズによると、どちらの呼び方も存在するとのこと。
 応援グッズが全員に行き渡り、即席の応援団が結成される。
 三人のメガホンによる声、トビの太鼓、そしてチアバルーンが太鼓に合わせて打ち鳴らされる。

「あ、サイが物凄く恥ずかしそうにしてますよ先輩」
「ま、まあ走り出せば気にならなくなるよ……きっと」

 結果、周囲から浮きまくって滅茶苦茶目立った。
 それもやがて歓声の中に埋没して、レース開始が迫る。
 合図は魔法の打ち上げによってなされるのだが、スタートラインに立っていたのは……。

『余が直々に開始の合図をするとしよう! 来訪者諸君、準備はよいな!』
「うおっ、皇帝グラド……」
「闘技大会以来か。とはいえ、フットワークの軽い皇帝だな!」
「皇帝陛下……相変わらずですわね……」

 赤毛に赤い装具の皇帝が、スタート地点で片手を上げる。
 そしてその手の先から火球が撃ち上がり……中空でピストルに似た音を立てて爆ぜた。

『行けぃ! 人馬一体となって駆けよっ!』
「始まった!」

 一斉に動き出す三十組の馬と騎手。
 スタートこそ大きな落馬や転倒はなかったものの……。
 最初のハードルで派手な衝突が起きる。

「後続の馬が……!」
「ジャンプが苦手な馬につかえていますね……着地で体勢を崩す馬が……」

 使用人コンビが難しい顔で呟く。
 決勝に残るだけあって、立て直して駆け出していくが減速は免れない。
 この時点でスタートダッシュを決めた馬と後方集団との差がじわりと開く。
 ウェントスとサイネリアちゃんは……いた!
 スタートでもたついたせいか、後方集団の中でも最後尾に近い位置。
 しかし、ウェントスは明らかに後方集団のおいては異質なスピードで最初のハードルに突っ込み……

「跳んだぁ!?」

 近くにいたプレイヤーの悲鳴にも似た叫びがこちらにまで聞こえる。
 大ジャンプを見せ付けたウェントスは、ハードルで次々と速度を落としていく馬の頭上を飛び越え――着地。
 速度を保ったまま先頭集団を追い始めた。
 大跳躍に観客が沸き、俺たちも手に持った応援グッズを興奮気味に打ち鳴らした。

「凄い、凄いよサイちゃん! ウェントス!」
「でも、先輩。今のでかなり足を使いましたから……」
「ああ、ここからしばらくは我慢の時間だ」

 こちらの声が聞こえているかのように、サイネリアちゃんは安定してペースを作れそうな馬――自分と同ランクである月影の後ろへ。
 そう、それでOKだ。
 サイネリアちゃんらしい冷静な対応で安心した。
 どうやらいい状態でレースに入ることができたらしい。
 そのまま二つ目、三つ目のハードルは無駄のない動きで抜けていき……。

「おおう、何度見ても水飛沫が派手でござるなぁ! 水たまりゾーンは!」

 トビが太鼓を叩きながら嬉しそうに声を張る。
 各馬は浅い水場をそれぞれのペースで抜けていく。
 馬によっては水が苦手なのか、そこで大きく減速したりと個性が出る。
 ウェントスの場合も両親の馬が水場の豊富な地域出身ではないので、若干の原則を見せた。
 しかし、足がやや埋まるような細かい砂粒の敷かれた砂地に入るとそれが一変。

「おぉぉぉぉぉ! 行け行け、ウェントス! サイネリアぁぁぁ!」
「素晴らしい加速ですわ! このまま先頭に追いつきますわよ!」
「ライジンに肉薄するぞ! 砂地ゾーンの残りは……足りないか!」

 脚質の違いによって、2位に躍り出たウェントス・サイネリア組ではあったが……。
 そこで砂地ゾーンが終わると、オールラウンダーであるライジンに差を付けられ始める。
 途中まで風除けとして利用していた月影にも追い抜かれ、これで順位は3位に後退。
 現在の順位は1位ライジン、2位月影、3位ウェントス、4位にゴーゴーオフトゥン。
 今のところ、ハクア以外は能力順に並べた際の馬たちが上位を独占している。
 ――しかし、そう思っていたのも束の間。

「速っ!? 速いな、ハクア! 名馬ランクは伊達じゃないな……」
「森林ゾーンに入ってから一気に来たね……あ、ライジンを抜いてトップに上がったよ!」
「ルストの馬ということを考えれば、これが自然なのでしょうかね?」
「かもな。逆に砂漠馬の血が濃いウェントスは苦手なんだよな、こういう地形……」

 林のように無差別に植えられた樹をスラロームしながら、草や苔の生えた起伏のある地形を馬たちが駆けて行く。
 この地形では、ウェントスの長所を活かせない。
 更に順位を落としてしまう中で、森の国ルスト出身であるハクアは、バネのようにしなやかな体の動きで起伏のある森林ゾーンを最速で抜けていく。

「まずいぞ、ハインド! もう一競技あるとはいえ、このままでは挽回不可能な差になってしまう!」
「まだだ! まだ岩石ゾーンがあるだろう!? こんな時こそ応援だ、応援! 声出せ!」
「うむっ! 走れぇぇぇ! ウェントス、サイネリアぁぁぁ!」
「頑張れぇぇぇ! ウェントス、サイちゃぁぁぁん!」
「ファイトですわ! しっかりー!」

 そして母馬である薄墨毛がいた場所に近い岩石ゾーン。
 ゴロゴロとした岩を避けながら進む他の馬に対し、ウェントスは小さな岩であれば物ともせずに踏みつけて加速していく。
 再び一つ、二つと順位が上がり……。

「抜いたっ!?」
「おおおおおっ!? そのまま逃げ切るでござるよぉ、ウェントスッ!」

 遂にハクアを抜いて先頭となっていたライジンを躱し、トップへと躍り出る。
 しかしそこで岩石ゾーンが終わりを迎え、平地に入るとハクアが急加速。
 オフトゥン、ライジン、そしてウェントスをごぼう抜きして堂々のフィニッシュ。

「「「だぁぁぁぁ!!」」」

 俺たちが頭を抱える中、最後の三連ハードルと短い直線の平地でライジンにも追い抜かれたウェントスは、障害物走第3位に終わった。
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