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VRMMOの支援職人 ~トッププレイヤーの仕掛人~ 作者:二階堂風都

アニマルイベント、到来

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暴れ馬の捕獲

「ワルター、ロープ!」
「は、はいっ!」

 ワルターがインベントリから『捕獲用ロープ』を取り出したのを確認し、続いて横合いへと視線を走らせる。
 そちらでは、トビが頭巾を装着して身を低くしていた。

「トビ、ついてこれそうか!?」
「スタミナを温存していたので何とか! しかし、グラドタークほどの余裕はないでござるよ!」
「分かった、短期戦で一気に行くぞ! ヘルシャ、そっちは!?」
「もう追いかける足が残っていませんわ……頼みましたわよ、三人とも!」

 リィズとカームさんは……駄目か、徒歩の上に距離が遠い。
 ユーミルが直前まで乗っていたらしいカームさんの馬を回収しているが、間に合いそうもない。
 セレーネさんとヒナ鳥たちの位置も遠く、グラドタークを走らせたとしても到達までに時間がかかる。
 幸いモンスターも他のプレイヤーの姿も見えないので、捕獲に集中できそうだが。

「痛い痛い、ダメージがかさんできた! 早くしてくれぇぇぇ!」

 暴れながら走る馬に引かれ、ユーミルが硬い地面で跳ね回る。
 いかん、本当にHPが危ない!
 グラドタークを寄せ、ワルターが先端が輪になったロープを投擲する。
 だが……。

「ああっ!? 師匠、すみません!」
「焦るな、チャンスはまだある!」

 俺は腰に装備していた『濃縮ポーション』をユーミルに向かって投げた。
 地面を高速で移動しているので当たるかどうか不安だったが、どうにか命中。
 安全圏までユーミルのHPが回復した。

「おっ、ハインド殿ナイスコントロール! ただ、こっちはもう少し速度を落としてもらわないと厳しいでござるよ!」
「だったらこっちが先にロープをかけて減速させないとな! もう一回だ、ワルター!」
「はい! 今度は外しません!」

 ワルターが暴れ馬の首にロープを再度投げ――今度は狙い違わず、首にかかったロープをゆっくりと締めていく。
 グラドタークの能力を活かし、暴れる馬を極力傷付けないようにゆっくりと減速していく。
 そこでトビもロープを馬にかけ、このまま落ち着かせれば次の段階に移れると気を抜いたところ……。

「――わっ!」
「ワルター!? 掴ま――おわっ!」

 再度レア個体が暴れ出し、体重の軽いワルターがいとも容易たやすく浮き上がる。
 片手を出してワルターを掴んだ俺も支えきれずに一緒に落馬。
 そのまま、また暴れ馬が疾走状態に移るかと思われたところで力強い馬蹄の音が響く。

「ストップ、ストップ! そこまでだよ!」
「セッちゃぁぁぁん!」
「セレーネさぁぁぁん!」

 俺とユーミルの叫び声に、グラドタークに跨るセレーネさんがびくりと肩を震わせた。
 貴女って人は、どうしていつもそう助勢に入るタイミングが素敵なんですか!
 暴れ馬の進路を塞ぎ、大きな暴れ馬の更に二回りは大きなグラドタークが威圧する。
 更に俺たちが立ち上がって三方向からロープを引くと、レア個体はついに抵抗を止めた。
 そこで徒歩組も次々と合流してくる。

「わあ、もう捕まえてる! さすが先輩方です!」
「う、うむ! 私たちにかかればこんなものだ!」

 リコリスちゃんの賛辞にユーミルがしどろもどろに応える。
 俺が『ヒーリングプラス』でユーミルの減ったHPを回復していると、トビが呆れた様子で口を開いた。

「ユーミル殿はかなり無様な状態だったように思うのでござるが……」
「まあな。ユーミルがいなけりゃ逃げられていただろうが、それは全く否定できんな……」
「……と、ところで次はどうすればいいのだ? 普通の野生馬ならこれで完了だが、レア個体は続きがあるのだったな? もう一回詳しく説明を頼む!」

 誤魔化すような言葉に、トビと俺は乗ってやることにした。
 このままこの馬を一発で捕まえられればいいが、そうでなければまた探し直しになる。
 話が早いに越したことはない。

「まあ、談話室では随分と急ぎ足で説明したでござるからなぁ。ハインド殿はあれでもちゃんと把握してくれたのでござろう?」
「ああ。次はその馬に合った好物の餌をやればいいんだが、ここが戦闘系プレイヤーにとっては鬼門なんだそうだ」
「と、いうと? 回数制限がどうとか言っていたか? そういえば」

 そのユーミルの返しには、トビが三本指を立てて説明を引き継いでくれる。

「挑戦回数は三度まで。そして生産系プレイヤーと交流のない戦闘系プレイヤーは、用意できる餌の種類が限定されるでござるから……」
「うん。捕獲と最後の段階はむしろ戦闘系向きだが……ここでつまずくことが多いらしい。馬によって好物も違うそうだし」
「だからこそ、レア個体を粘らずに普通の野生馬で妥協しているプレイヤーは多いですわ。わたくしたちも遺憾ながら、そのようにしておりますし」

 そこでヘルシャが戦闘系プレイヤーとして一言加えてくれた。
 グラドは地形の起伏や変化が激しいので、ヘルシャたち所有の野生の一般馬でもこのフィールドに適応できたのだろう。
 そして馬の餌に関してだが、TBでは金を積めば何でも手に入るという状態にはなっていない。
 取引掲示板での出品は渋く、物によっては現地まで買い付けにいかなければ手に入らない食材や生産品というものも数多く存在している。
 さて、そんな餌やりなのだが……。
 灰色のレア個体、薄墨毛うすずみげの馬に向き直ってみんなで餌の相談を始める。

「ここは人参しかないだろう! 人参!」
「またベタな……。まあ三回挑戦できるし、発見・足止めと一番の功労者はお前だからな。やってみるといい――サイネリアちゃんが許可を出したらだけど」
「あ、私は全然大丈夫ですよ! まずは人参でやってみましょう、ユーミル先輩!」
「そうか! では……」

 ユーミルが人参を差し出すと、野生馬は匂いを嗅いでから口にしたものの……。
 それ以降の変化は見られない。
 俺の服の中に隠れていたノクスが肩に乗り、くりくりと首を回した。

「む、これは駄目だったのか?」
「馬の上にカーソルが付いているだろう? 逆三角形の。その色が赤だと敵意在り、黄色で警戒、白で捕獲状態になるらしいからこれは失敗だな。赤いままだ」
「最後に一手間あると考えると……餌でこのカーソルが黄色になればいいのだな?」
「そういうこと。だったよな? トビ」
「然り然り」

 馬の好物といえば人参というイメージがあるが、実際には匂いが強い野菜ということで好き嫌いが分かれるそうだ。
 馬の好物として他に知られているのは、甘いものの類なのだがどうだろうか?
 次はサイネリアちゃんが選んだ食べ物で挑戦ということに。

「ハインド先輩、二段構えで行きましょう。私がまずは野菜の中では甘味が強いトウモロコシで行きますので、ハインド先輩は……」
「分かった。もしトウモロコシで駄目だったら、もっと甘い食材で挑戦することにするよ」

 サイネリアちゃんが差し出したトモロコシに、薄墨毛の馬は今度は警戒せずに齧りつく。
 むしゃむしゃと豪快に口を動かして完食したので、これはいけるかと思いカーソルを見ると……。
 赤色が点滅して黄色になりかけ――また元の赤色に戻った。

「だぁぁぁ!? 何なのだ、そのフェイントは!」
「……もっと寄越せと、そう言っているみたいな顔に見えますが。気のせい?」

 シエスタちゃんの声に全員で薄墨毛の顔を見ると、歯を剥きだしてこちらを威嚇してきた。
 間違いなく威嚇行動なのだろうが……不思議とその顔は笑っているように見えなくもない。
 うん、確かに何となくそう言っているような気がしてきたな。
 こうして捕まっているというのに、実にふてぶてしい態度だ。

「じゃあ、最後の一回だが……りんご、角砂糖、ハチミツなんかを用意してきた。どれをやるかが悩みどころなんだけど」
「極端な性格の馬に見えますし、ここはどうでしょう? はっきりと甘い角砂糖がいいのではないかと私は思いますが」
「……そうだな。では、サイネリアちゃんの言う通りに角砂糖で行ってみよう」

『マール共和国』産、和風ギルド匠提供の角砂糖を取り出す。
 それを手の平に乗せ、鼻息の荒い馬の口元に近付けると――バクリ。

「うわっ、怖っ! 噛みつかれるかと思った……」
「だ、大丈夫ですかハインドさん!? 手を見せてください!」

 リィズが心配して俺の手を取る。
 物凄い勢いで角砂糖を掻っ攫われたが、果たしてどうか?

「――おっ!」
「黄色になりましたよ! 成功です!」
「角砂糖が好きでござるか……何とも贅沢者というか」

 TB内での砂糖の流通は今一つで、割といい値段が付いている。
 それを受けてのトビの発言だが、どうにかこれで最後の段階へ。

「最後はこいつの背中に乗って規定時間落ちずに耐えきれば捕獲になるそうだ。戦闘系向き、と言ったのはこのためだな。餌の用意以外は運動神経がものを言う」
「落ちずに……おお、そうだそうだ! 思い出したぞ! 最後は確かロデオのようなものだと説明していたな!」
「正確に言うとロデオの中のベアバック・ライディングって競技と一緒――だっけか?」
「そのようでござるよ。何やら掲示板で違いを力説している人が……」
「そ、そうか。ともかく、これには挑戦回数の制限がないからドンドン行け!」
「よしきた! では早速!」

 一番乗りで背に飛びかかったユーミルが豪快に吹っ飛ばされたのは、言うまでもない。
 その後も乗りこなすための挑戦は続き……。
 良い線まで行ったのはバランス感覚に優れたワルターだが、捕獲の時と同様、体重が軽すぎたために失敗。次点でトビといったところ。
 一方の後衛メンバーはというと今一つである。
 本物の馬に慣れているヘルシャとゲーム内で積極的に世話をしているサイネリアちゃんは惜しかったが、やはり乗馬とは性質が違うらしい。
 最終的には最初に吹っ飛ばされたユーミルが持ち前の運動神経をもって力づくで暴れる馬を抑え込み、レア個体である薄墨毛の捕獲に成功した。
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