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VRMMOの支援職人 ~トッププレイヤーの仕掛人~ 作者:二階堂風都

アニマルイベント、到来

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餌の検証と生産活動

 ぴーぴーと餌鳴きするイクスの横で、肉を食べやすい大きさに処理していく。
 場所は炊事場ではなく、農業区にある一画。
 ……こんなものだろうか? 体が少し大きくなってきたので、餌も合わせてみたが。
 小さくても、生まれ立てと違い姿はすっかりフクロウそのものだ。

「先輩、何して――うっわ、包丁が血まみれ!」
「シエスタちゃんか。見るんならオプションで残酷描写の設定をオフにしておくといいよ」
「あ、ああ、ノクスの餌ですか。これネズミ?」
「ネズミ。シエスタちゃんはノクスの餌やりを見るの、初めてだっけ?」
「マーネの世話で一杯一杯でしたからねー……そんなの食べてたのか、ノクス」

 俺はノクスの餌を簡単に加工している。
 フクロウの餌はネズミなどの小型の動物が主である。
 その他には昆虫も食べたり。
 シエスタちゃんはネズミに嫌そうな顔をしながらも、理解を示すように頷いた。

「どれだけ抵抗があっても、こういうのってペットには必要ですもんね……神獣選びも、餌が嫌だからって変える人がいるのかな?」
「フクロウはそうかもね。この肉の種類もそうだし、虫も、その……うん」
「私は虫に関しては手袋とかピンセットがあれば何とか。小さい子たちは大丈夫なのかな? 気になるんで、試しに先輩の忠告通り残酷描写の設定をオフに……おお、大分マイルド」

 シエスタちゃんによると血が消え、肉もブロック状の大雑把な形状に見えるそうだ。
 頼まれたので虫も出して見せると、どうやらデフォルメされた見た目に変化したらしい。
 この状態でも嫌がる人はいるだろうけれど、私はこれだったら行けそう――とのこと。
 その後、何故かシエスタちゃんはオプションの設定を元に戻したが。

「このネズミってどこから出したんです?」
「初期から畑に害獣として出るじゃない? 前々から、捕獲したやつを何に使うのかなぁと思っていたら……」
「こう使う訳ですかい。前は売っぱらうだけでしたよね? 現地人のショップに」
「だね」
「衛生上、問題があるからここでやってるんです?」
「まあ、ネズミだしね。ゲームだから大丈夫だろうけど、念のため」
「終わった後は水魔法の巻物で洗浄ですか?」
「そうそう」

 捕まえた畑ネズミは現地人のショップで買い取ってもらえるので、今まではそちらに引き渡していたのだが……。
 ノクスの餌として、初めて用途が生まれた形である。

「行く行くは、ノクスが自分で捕獲――捕食? してくれるようになるとありがたい」
「勝手に餌を食べるようになると、野生化しません?」
「それもそうか。だったら捕獲で留めることができるよう、訓練しないとな」
「手がかかりますねぇ……」
「かかるね。でも、ペットってそういうもんじゃない? 必要以上に現実の再現をやり過ぎると、面倒になって誰もやらないだろうけど」

 これくらいならまだ、やりがいがあると言える範囲内だろう。
 餌を急かすノクスをシエスタちゃんに抑えてもらい、自分は手元の作業に集中。

「しっかし……先輩は何だか平気そうですね? 肉をさばくの」

 残酷描写を再度オフにした様子はなく、怖々とした様子でシエスタちゃんが俺の手元を覗き込む。
 嫌なら見なければいいのに……怖いもの見たさか?
 不思議そうにマーネがそんなシエスタちゃんを見ている。

「いや、全然。最初は現実の調理で魚を捌くのなんかも怖かったし、今もあんまりいい気分ではないかな」
「と、いうことは……」
「慣れだね、こういうのは。大体、処理済みのネズミもショップで売っているから本当はやる必要がないんだよね」
「はい? じゃあ、何でこんなことをしているんです?」
「そりゃあ経験値なんかの違いを調べるためだよ――っと、終了。ちなみに現地人のショップで売っているものがこっち」

 二つをトレイの上に並べてみせると、シエスタちゃんが眉根を寄せて見比べる。
 やがて眠そうなゆるっとした顔に戻って一言。

「うーん……正直、違いが分かりませぬ」
「ショップ産も栄養を考えて血抜きされていないしね。鮮度もいい」
「あ、フクロウの餌って血抜きしないんですか。それで包丁が血まみれに……」
「そういうこと。これで経験値なんかに違いがなければ、今後は買ったもので済ませるよ」
「なんだ、検証のために捌いていたんですか。私だったら絶対にやらねー」

 基本的に神獣の餌は、戦闘系プレイヤーでも育てられるように全て現地人のショップで売られている。
 掲示板でも話が出ていたが、ショップ産以外の特殊な餌を与えることで成長に影響があるとかどうとか。
 まずは手始めに、自分で加工した餌の場合はどうなるかを調べたかった訳だが……。
 小さくした餌をノクスのくちばしに近付けると、勢い良くそれを口にした。
 すぐさまステータスを確認。
 健康度、満腹度、経験値などをチェックして今度は現地人のショップの餌を食べさせる。

「どうでした?」
「うーん……僅かに自分で捌いた餌の方が性能が高いけど、はっきり言って……」
「はっきり言って?」
「誤差!」
「ありゃまー。でも、自分で捌く必要がないことが分かっただけでも収穫じゃありません?」
「お、良いこと言うね。後はモンスターから取れる食材だけど、あっちは大抵加工済みで取得できるから細かく刻むだけでいいはず」
「楽ちんですねー」
「幼生だと食べないみたいだけどね。今後に期待ってことで」

 結局捕まえたネズミはまた売り払うことになるだろうが、何度もこれをやらずに済むのは素直にありがたい。
 俺はそのままシエスタちゃんを伴って移動を開始した。

「ノクス、おいで――こら、頭に乗ろうとするな!」
「この癖、中々直りませんねぇ。先輩を下に見てるって感じではないんですけど。注意すればこの通り、場所を変えますし」

 ノクスが頭付近に跳躍しようとするも、最終的には俺の手の平に収まる。
 視線の高さか、それとも髪が巣の代わりになっているのか……。

「単純に居心地が良いみたいだ。現に、ほら」

 証拠のスクリーンショットがあるので、折角だからシエスタちゃんにも見せておくことに。
 これもワルターが撮ってデータをくれたものだ。
 写真を見た直後、シエスタちゃんが小さく噴き出す。

「っ、ははは! ノクス、凄いほっこりした顔してますね。可愛いなぁ」
「ついつい大きくなるまではこのままでいいか、なんて甘いことを考えそうになるよ」

 フクロウは割かし表情豊かだ。
 画像を見直すと俺の頭の上で、ノクスは目を細めて体を髪の中に沈みこませていた。

「ところで先輩、みんなはどこにいるんです? ほとんどの人が農業区に固まってるっぽかったんで、とりあえず来てみたんですけど」
「確かに農業区内にはいるけど、やってる作業はバラバラなんでね」

 ヘルシャたちは言うまでもなく神獣の孵化作業で、渡り鳥とヒナ鳥の他のメンバーは生産活動だ。
 トビだけは不死身の――じゃなかった。
 スピーナさんに声をかけられて、カクタケアと情報交換に出かけていった。
 シエスタちゃんは一番最後にログインしてきたので、とりあえず農業区の入り口に近い場所にいた俺に声をかけてきたのだろう。
 他のメンバーもその辺りにいるはずだが……。

「おっ、ハインド! 餌の検証はどうだった?」

 生産用の作業着を装備した四人が、揃ってこちらに向かってくる。
 大きな声と共に手を挙げたのはユーミルだ。

「駄目だった。店売りの餌で十分そうだ。そっちは?」
「滞っていた収穫作業は大体終わらせてきましたよ!」
「もう終わったの? 早いな、ありがとう」

 俺の問いにはリコリスちゃんが答えてくれた。
 止まり木の手助け、卵の孵化作業と神獣の世話が重なり、ここのところ俺たちは農業区の管理にまで手が回らなかった。

「いえいえ――って、シーちゃんだ! 今夜は遅かったね。キノコの収穫もみんなでやっておいたよ!」
「あ、マジで? サンキュー、助かるなー。ところでサイは?」

 シエスタちゃんの言葉が示す通り、サイネリアちゃんの姿は見えない。

「サイネリアちゃんは先に馬小屋に行ってもらったんだけど……いいよね? ハインド君」
「馬の生育で悩みがあるそうなので。この後、みんなで行ってみようとユーミルさんが」

 セレーネさんとリィズが気を利かせてくれたようだ。
 もちろん、彼女は全面的にそちらを優先してくれて構わない。

「そっか、了解。イベントも段々近付いてきたしな……じゃあ、ユーミル?」
「うむ、では厩舎へ!」

 そんな訳で、俺たちは馬小屋へと向かった。
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