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VRMMOの支援職人 ~トッププレイヤーの仕掛人~  作者: 二階堂風都
アニマルイベント、到来

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滞在三日目と修正アップデート

 その知らせに俺たちが気が付いたのは、船上でのことだった。

 湖でウェイクボード、という未知のスポーツを行っている最中の出来事である。


「ふ……二日分の遅れを返していただきたいですわぁー!」

「へあっ!? な、なん――ぬぉ!」

「未祐ちゃん!? 亘君、未祐ちゃんが落ちた!」

「ぼ、ボート止めてください!」


 ボートで引っ張られていた未祐が、マリーの声に驚いてバランスを崩す。

 そのままハンドルを放してしまい、落水。

 一番近くでそれを見ていた和紗さんが悲鳴に近い声を上げ、俺は慌ててボートの運転手さんに止まるようお願いした。

 直前まで華麗にトリックを決めながら飛んでいたのに、この様である。

 ボートを止めて未祐を回収すると、びしょ濡れになった未祐がマリーに恨みがましい視線を向ける。

 エンジン音も何のその、といった大声だったからな……。


「何なのだドリル、馬鹿でかい声を出して! 何があった!?」

「失礼。たった今、秀平に教えていただいたのですけれど……」

「TBの修正アップデートが来たんだよ。卵の共同保有の機能なんだけど、卵の状態じゃなく、孵化した後からでも共同保有者を追加できるようになったみたい」

「それであの叫びか」

「こうなると分かっていたら、みなさんと一緒に孵化させましたのに……」


 マリーたちのように「共同保有したいプレイヤーが遠隔地にいる」、または「予定が合わないけれど後々共同保有したい相手がいる」などといった意見が運営に大量に寄せられた結果だそうだ。

 特にイベントランカーにとっては死活問題で、育成の遅れがそのまま戦力差に繋がりかねない。

 だからこそ、マリーは叫んだわけだ。

 時間を返せ、と。


「秀平、他に何か情報は?」

「あ、孵化させなかった人向けにちゃんと補填はあるっぽいよ。共同保有を解除した時にもらえるのと同じ……経験の結晶とかってアイテム。ただ、解禁直後からみっちり育て始めている人には敵わないかな。エンジョイ勢には十分な量の経験値だろうけど」


 ノクスとマーネが既に取得している経験値と比べると、それほど高い数値ではないとのこと。

 まあ、後から入ってくるギルドメンバーのことなどを考えればあって然るべき機能なので、今回修正に至ったのは単純に運営の手落ちといえるだろう。

 秀平の持つスマホを覗き込むと、謝罪文も一緒に掲載されていた。


「補填があるだけマシですわね……シズカ、ツカサ! 次にインしたらすぐに卵を孵化させますわよ!」

「シリウスのみんなにサーラに来てもらうことになっていましたけど、そちらはどうしましょう?」

「そのままで構いませんわ! ついでに各自、なるべくサーラのダンジョンを攻略してからグラドに帰るようにと伝えて頂戴!」

「承知いたしました」


 そう宣言すると、マリーは座って少し長い息を吐いた。

 今すぐにでも別荘に戻ってTBにインしそうな雰囲気だったが……。


「みなさん、お騒がせいたしましたわ。では、ウェイクボードの続きをしましょうか。水上スキーでもよろしくてよ?」


 場の空気を入れ替えるように、にこやかに問いかけた。

 持ち込んだお菓子や飲み物も、どうぞどうぞと周囲に勧めていく。


「素晴らしい切り替えの早さですね……」

「仕切り能力も高いしな……そういう教育を受けたからなのか、本人の性格なのか……」


 ひそひそと兄妹でマリーをそんな風に評する。

 ちなみに俺たち兄妹がそういったマリンスポーツに即座に対応できる訳もなく、基本的には見ている時間の方が長い。

 そろそろ俺たちも何かしたいところだな。

 ウェイクボードについては既に二巡ほどしているので……。


「なあ、マリー。同じ引っ張るにしても、バナナボートみたいなのってねえかな? 複数人で乗れそうなやつ」

「もちろん――」


 胸を張るマリーの答えは、予想通りのものだった。




 たっぷりと湖の水を浴びた後の夕刻。

 夏季の明るい夕陽が差し込む部屋の中で、俺はベッドの上で横になっていた。

 昨日も昼寝をしたりとゆっくりしていたので、疲れたという訳ではないのだが……。

 明日も外で遊ぶ予定があるため、こうして体力を温存しているといったところだ。

 女性陣は女性陣で休んでいるだろうし、俺の両隣の二人も同じ考えのようだ。

 ベッドに座るなり寝そべるなりして寛いでいる。


「……わっち、さっきからスマホで何を見てんの?」

「んー? フクロウとカナリア、雛の育て方の再確認。それが終わったらそのままTBの掲示板を見るつもりだ」

「そっかー。俺も掲示板見よっかな……司っちは何してんの? それデジカメ?」

「あ、はい。最近の機種ではそうそうないんですけど、ブレが酷かったりピントが合わなかった写真のデータを消去しています」

「色々撮ってくれていたもんな、司。そういや、それって後でお願いしたらデータをくれんの?」


 一旦スマホを置いて身を起こしながら、秀平と共に司の方を見る。

 デジカメを手に柔らかな笑みで司が頷いた。


「はい、そのつもりです。もしご希望でしたら写真に現像してお渡ししますよ」

「おー、それはありがてえ。しかし、このままだと司っちが写真に残らんね? わっち」

「そうだな……男三人で交代で撮るか? あ、司はそのデジカメ、誰にも触らせたくなかったりするか? 私物だよな、それ」


 一瞬スマホで撮ることも考えたが、画質に雲泥の差があるだろうことは容易に想像できたので却下。

 司にデジタルカメラ使用の許可を求めてみることに。


「確かにこれはお屋敷の備品ではなく私物ですが、触らせたくないとかそんなことはありませんよ」

「とかいって、それ一眼レフかなんかの高いやつっぽいけど……」


 秀平の言う通り、司が手にしているのはコンパクトなものではなくかなりしっかりとした大きめのカメラだ。

 司の小さな手に合ったサイズとは言い難い。


「安くはありませんけど……ボクもみなさんと映った写真は欲しいですし、師匠と秀平さんにならお貸ししても大丈夫かなって」

「そっか。じゃあ、なるべく丁寧に扱うことにするよ。な、秀平」

「だね。念のため、今の内に使い方を教えてもらおっか?」

「あ、ではお二人ともこちらに」


 そういえば、TB内で見せてもらったスクリーンショットも見事なものだったな。

 気になって訊いてみると、やはり司は写真撮影が趣味なのだという。

 ひとまず、見るつもりだった掲示板は後回しにして……。

 司の説明を聞きながら、俺たちは試しに室内や互いを適当に撮ったりして過ごした。

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